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Smashing! 佐久間イヌネコ病院

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佐久間鬼丸獣医師(受)と喜多村千弦動物看護士(攻)とその友人達のお話。 どうぞお楽しみ下さい!
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2021年3月の記事一覧

smashing! おれのなりたいもの

佐久間イヌネコ病院・喜多村千弦動物看護士。彼はここの院長に当たる佐久間鬼丸獣医師と付き合っている。あからさまな恋人同士である。 同じ職場でイチャコラしようものならヒンシュク間違いなしではあるが、そこは二人とも鉄の意志で死守。診療時間内は絶対にイチャコラしない。ここはなんといっても「聖域」なのだ。 「こんにちは。今日はどうされました?」 受付で喜多村の軽い問診が始まる。患畜の状態や食欲の有無など、飼い主さんからの情報をカルテに書き込んでいく。佐久間は扉の向こう側で診察台を拭

smashing! いつもかれとそばに

佐久間イヌネコ病院・水曜。午前のみの診療を終えて日が暮れて。 自宅の猫達の世話を終わらせ、けっこうな量のお酒や食料を買い込み、佐久間と喜多村の友人・結城卓がやってきた。犬のリイコを散歩に連れ出したり、病院周りの掃き掃除を手伝ってくれたり。ここに長居をしがちな結城なりに気遣っているのだろうが、なんか夏休みのお手伝いみたいだな。今日は薄手のプルオーバーパーカーにオーバーオール。ますます●学生ぽい。 「卓、優羽は?あいつも飯呼んだげなよ」 「優羽ね、植木屋さんとこのお手伝い。明

smashing! さくらさくみんなの

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。毎月第四土曜は休診。 つやつやした栗色のふわマッシュ、毛穴レス肌、ピンクベージュのオーバーサイズニットにブラックレーベルチェックのパンツ。そして萌え袖でフリックするタブレット画面には経済新聞やスポーツ新聞各紙。元不動産会社エリート営業マン・結城卓は今日も漢らしい。 「で、みんなでお花見いこうよ」 「…うん、えっと、どこで?」 事務仕事をやっつけたい土曜の午前。せっかくの月一回の連休、やりたいことも沢山ある。

smashing! せんせいのおつかい

佐久間イヌネコ病院・佐久間鬼丸獣医師。 本日は喜多村千弦動物看護士と伊達雅宗理学療法士(獣医師免許有)に病院を任せ、佐久間はお遣いの旅に出された。 「たのむって~!俺ら本当に行きたかったの!」 「そうなの!鬼丸!明日でセール終わっちゃうのそれ!」 「だからって院長自らが休んでそこいくとか。俺一人で大丈夫だからお前らで行っといでよ」 【【鬼丸じゃないとだめなの!】】 明日の勤務に何故か前日入りする伊達。大勢で食べた方が美味しいから、そんなことをいいながらレアな食材とお泊まり

smashing! あめのなかのこども

佐久間イヌネコ病院。今週はずっと雨が続いている。 雨の日は病院を訪れる患畜は少ない。その分晴れた日にはけっこう混んでしまうのだが、飼い主もペットも冷たい雨の中出掛けるより、こんな日はじっとしてたい気分なのかもしれない。 きっちり定時に上がれるので、家の中の片付けも捗る。後回しになりがちな倉庫や書庫、各の部屋など。入っちゃ駄目、とは全然言われてない。だけど勝手に入るわけにもいかない部屋。喜多村はそんな佐久間の部屋に堂々と入れて、ちょっとだけ浮ついていた。当たり前だけど、佐久

smashing! ととのえるおれと

地下にフリーパーキングを持つとあるビル。その一階の片隅。看板はなく、一見何の店なのか見当の付かない店舗があった。スモークガラスの自動ドアに小さく「Yukihira's cleaners」の表記。クローク風のカウンターには執事的出で立ちの若い店主。ここは会員限定のクリーニング屋だ。 行平クリーナーズ店主、行平真琴。ここに店を出して10年になる。繁華街やオフィス街に近く口コミの効果もあって、お陰様で売上げも上々。難しい高級生地を使用した洋服の洗浄を得意とする行平にとって、弁護士や

smashing! おねうちなせんせい

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。 水曜午後と土日祝日は休診である。 本日は犬のリイコを結城の家に預け、佐久間と喜多村の二人は揃って買い出しに来ていた。最近郊外に出来たばかりの大型ショッピングセンター。大容量の物が格安で手に入る。自分達は男二人でけっこう肉の消費も激しい。週末は友人達も加わってお花見だし。そろそろお値打ちに食材調達を、と思っていたのだ。 前もって下調べしてくれてた結城に作って貰った会員証で入店。平日なのでそれほどの混雑はない。

smashing! きみとさくさくら

麗らかな春の午後。 佐久間は日課であるリイコの散歩に出掛けた。大体が休憩中なので公園一巡りツアー。もしくは商店街買い物ツアー。今日は前者だ。 動物病院に隣接した公園はけっこうな広さがあり、一回りするだけで運動にもなって丁度いい。 昨晩は風が強かったようで、桜の木の下に葉や小さな花が散乱している。そういえばテレビでキャスターが竜巻注意報などと説明していたことを思い出す。物騒になったよねリイコ。知ってか知らずか、リイコは佐久間をぐいぐい牽引していく。馴染みのコンビニの手前、蕾を沢

smashing! めしませせんせい

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。お彼岸も中日を過ぎた本日も、休診。 珍しく数日の休暇が取れたりするこの時期。院内の掃除にワックスがけ、溜まってたデータの入力なんかも全部終わらせた。そんな俺らは本日ダラダラを決め込む。いわば何もしない一日。 佐久間は元々が真面目で、あまりゆっくりとは寛げないタイプ。いつも何かしら飄々と動き回っている。 だから物食った途端寝落ちたりするんだ。喜多村は常日頃から佐久間に心底ゆっくりさせたいと思っていた。思ってはいた

smashing! きみのりょういきに

目が覚めたら知らない天井。 なにここ…神殿…? あ、そうか泊まったんだ。ハルちゃんちだ。なんだろう身体が重くて全然動かない。声も出ないなんて初めてだ。 記憶が飛んでて覚えてない。だけど凄く目眩いた記憶だけある。喉は枯れてるし、空腹度とんでもない。もたつきながら身じろぎすると、隣から小さく笑う声。そっと髪を撫でられる。あれ。なんで俺こんなにクタクタなんだ?寝返りもやっととか、どんだけ筋肉衰えた?えっと、俺、確か昨日…? 「飲みやすい、スープとか持ってきましょうか?伊達さん」

smashing! ごほうびはせんせい

佐久間イヌネコ病院、佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士は今日も忙しかった。だが今週は学会があるのでその間は休診。今回は喜多村も同行することになった。犬のリイコを結城と小越に預かってもらって、二人で行くことにしたのだ。 いわば。二人きりで旅行。 いままで一緒に旅行なんて行ったことない。再会できてから何かと慌ただしかったから。大学時代なんて付き合ってもなかったんだ。そういや鬼丸に会ってから付き合うまでに9年ちょっとか。俺よく待てた。その間誰とも付き合わなかった。軽くあれやこ

smashing! こいねがうおれと

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。そこで週1勤務をすることになった、大学付属動物病院の理学療法士・伊達雅宗。二人の先輩である。 もうすぐ週末。明日は佐久間の病院に勤務の日。きっと「彼」もやってくる筈。佐久間の病院の経理担当である税理士・雲母春己。今、雅宗は知り合ったばかりの彼への攻略に余念がない。 この俺がまだチューどまり。この俺が、だぜ? 一体誰に何を言ってるのかは不明だが、自他共に認めるくらい手が早く奔放な雅宗にとって、今回は信じられないス

smashing! おれたちのじゅなん

俺、喜多村千弦は悩んでいた。 本日、世間はホワイトデー。諸々の女子が相手にお返しを貰ったり、もしくは差し上げたりする日だ。3倍返しだのなんだの、まことしやかに囁かれているが、3倍の基準がわからない。アクセなんていっても俺の愛する鬼丸院長は元々付けない。俺がしてるとなんか嬉しそうだけど。かといって鬼丸の大好きな焼酎もネタがつきかけてる。あいつの方が詳しいからなあ。あと好物なのはチョコレート…。 あ、チョコレートか!なにもバレンタインだけじゃないもんな。お返しにチョコもありだよ

smashing! このまんなかにきみ

夕べはけっこう遅くまで期間限定の配信を二人で見た。一体いつ落ちたのか覚えてないけど、目が覚めたら側に鬼丸は居なかった。暖房が付けてくれてある。ベッドから這い出て、とりあえずパンツ履いて、時計見たらもう昼近い。流石に腹が減ったのでキッチンへ向かう。 鬼丸と暮らし始めて、俺は食べることも呑むことも、もちろん他のいろんなことも、足らないとか淋しいとか感じたことは一度もない。冷蔵庫開けると、決まって俺の好物やよく使う食材、酒や何かがきっちりと積まれている。もちろん鬼丸の分も含まれて