マガジンのカバー画像

エッセイ

5
運営しているクリエイター

記事一覧

意志を持つピアノ「名器ベヒシュタインピアノと語らうコンサート」

意志を持つピアノ「名器ベヒシュタインピアノと語らうコンサート」

「名器ベヒシュタインと語らうコンサートシリーズ 太田太郎サロンコンサート」を聴いてきた。

演奏したピアノは、ドイツ・ワイマールのリストハウスにあるモデルと同じと思われる、1880年製I-270。
ピアノパッサージュで、丁寧にメンテナンスされた平行弦のフルコンサートピアノ。
平行弦は交差弦と比べ音が混じらない。その分低音弦が短いが、このピアノはずしりと重厚な音を響かせた。
一言でいうと、「なんだコ

もっとみる
【珈琲のある風景エッセイコンテスト入選作品】珈琲とアップルパイ

【珈琲のある風景エッセイコンテスト入選作品】珈琲とアップルパイ

 ずっと気になっている珈琲店があった。美術館の帰り道、外は暗くなり始めていたが、少し足を延ばして立ち寄ってみることにした。
 店内は明るく穏やかだが活気がある。入口で迷っていると、スタッフに導かれそのままカウンター近くのテーブル席に座った。
 魅力的なストレート珈琲に目移りしながら、オリジナルブレンドとアップルパイを注文。カウンターの中で、一杯ずつドリップするたび香りが立つ。運ばれてきた珈琲をひと

もっとみる
【エッセイ】『周防錦帯橋』

【エッセイ】『周防錦帯橋』

 東京新橋の駅前広場を通りかかると、古本市をやっていた。急ぐ訳でもなくふらふらと見て歩きながら、年代物の絵葉書がたくさんある店で足を止めた。
 花や女の子が描かれた絵葉書に紛れ、右から左へ『周防錦帯橋|』と印刷された文字が見える。十枚組の写真絵葉書だった。明治か大正時代だろうか? 周りの景色は違うが、写真の中の錦帯橋は五連のアーチを描き、今も岩国城の麓を流れる錦川にかかった錦帯橋と、変わらない姿を

もっとみる
【紀行】温泉地ゆふいんの魅力

【紀行】温泉地ゆふいんの魅力

 私用で大分に行き、せっかくなのでゆふいんまで足を延ばした。

ゆふいんラックホールのコンサート

 訪れた日、昨年(2021年)完成した「ゆふいんラックホール」で湯布院町民でもある小林道夫先生が出演するコンサートがあった。
 ゆふいんには、1975年の大分県中部地震が発生した年、由布院が元気であることを全国に発信したことがきっかけで始まった音楽祭があるが、「ゆふいんラックホール」は、そんな皆さん

もっとみる
【エッセイ】たかがペットされどペット

【エッセイ】たかがペットされどペット

 ペットを飼うと決めた時から、いつか来る別れは覚悟しなくてはならない。
 雄猫、雑種。呼称キキ。病死。15歳だった。

マーボとミー

 子どもの頃、田舎の家では猫だけでなく、犬、うさぎ、にわとりなど、人間も含めて色々な生物と暮らしていた。犬は親の趣味だったが、猫は私たち姉妹が小学校の帰り道、捨て猫を拾っては飼っていた。
 家のすぐ前には国道が走り、飼っていた猫はたいてい交通事故で命を落とした。母

もっとみる