頭の中でたまーに構成する言葉とコトバ。
その組み合わせは、案外おもしろいとボクは思う。誰に向けるでもなく、自分の中にあるスクラップをつなげてリユース。エッセイや小さな物語を綴りま…
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#創作大賞2023
[ちょっとした物語]バンコク 午後1時50分
手をつなぐと、互いの手からは汗はあふれ出ててくる。
それでも手を合わせて歩くことで、さらにべとつきながら、いたずらに手を絡め、とても厭らしく触れ合う。真夏の太陽が照りつける路上で、僕はある女性と空を見上げた。
灼熱の炎のように空気は揺らめき、蜃気楼のように視点の定まらない、鋭い光の攻撃が目を差す。すると、横にいる女性は、僕の手を引き、カフェのような建物へと導いてくれた。
中に入り、彼女は肩
[ちょっとした物語]向こうから鐘の音が聞こえる
埃っぽい書類の束を1枚1枚眺めていた。すると水色の封筒を見つけた。初夏の心地の良い午後だった。封筒から便箋を取り出すと、記憶はフラッシュバックする。
「こんなきれいな海見たの、はじめてだよ。ね、なんていうか、キラキラしてる」
そう言ったのは本当にきれいな海だったからだ。初めて訪れた瀬戸内の海は、凪いでいて、光が無数に反射していた。そんな海を見たのは、生まれて初めてだった。
「こんな海、普
[ちょっとした物語]溺れる魚は七夕を想う
夜の街、僕はひとりで路地を歩いた。
家路を急ぐ道すがら、並ぶ住宅の塀に添えられた笹の葉を見た。
掛けられた短冊が、今日が七夕であることを教えてくれた。
願い事を最後のしたのはいつだろう。
急いで抜けた終電間際の改札。
今日が七夕なんて頭の片隅にもなかった。
今の僕は、天の川を渡ろうとする彦星か。
なんて、主役気取りか。
そんなバカな考えに辟易した。
待ってる人のいない対岸に