アルバニアからEU・ギリシャへ向かう
およそ1ヶ月間の旅は、当初の淡い計画を大きく逸れることになりました。
トルコのイスタンブールからギリシャを回ってのんびり旅をしよう。そう思い立ち、滞在先のジョージアを離れました。
しかし、実際はギリシャ入国後にバルカン半島を北へ北へと向かい、北マケドニア、コソボ、モンテネグロといった国々を訪れました。
計画のない自由な旅を謳歌していると、自分の欲求に忠実になれる気がします。結果的に、ずっと行きたいと思っていたクロアチアのドブロブニクに行くことができました。
自分の行動力に驚くと共に、改めて旅が好きだと感じています。
ジョージアを出発して丸々3週間、いよいよ元の計画に戻る時が来ました。
僕は昨日、アルバニアのティラナを出発して、ギリシャのアテネへと向かいました。
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チケット購入
アルバニアとギリシャは隣国ではあるものの、ティラナとアテネの両首都は共に国の中での端の方に位置していおり、対極になっていることがわかります。
長い距離でかつこの両国の抱える事情から、それまでの国々の移動とはまた異なるバス旅となりました。
3日前、アルバニアのティラナに着いてすぐ、僕はバスターミナルでチケットを購入しました。
ネットで買わなかったのは、良い時間がなかったから。
半日以上かかる路線は、いつ乗車していつ下車予定かをあらかじめ把握しておくことが重要です。
ましてアテネはあまり治安の良い場所ではないため、深夜に到着すると身の危険も感じてしまうかもしれません。
ネットで見つけた早朝発のバスは回避し、バスターミナルで以下の便のチケットを購入しました。
13時間もかかることに驚きつつ、夜行バスなら着いてからも安心できると思いました。
費用は高くついたものの、長い距離であることとネットで見た値段と同じだったことから、仕方なく受け入れることにしました。
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ティラナ出発
出発当日、重いスーツケースを引っ張り、20分前にバスターミナルに着きました。車輪の壊れかかったスーツケースは脆さがあるものの、なんとか今回も無事にバスターミナルまで運べました。
ティラナのバスターミナルはあまり秩序立ってないため、とてもカオスです。いろんな方向に向かうバスが、狭いバスターミナルに混在しています。
人に聞きつつ、なんとか乗るバスを見つけて乗り込みました。行き先表示のようなものは特に掲げられていませんでした。
なお、このバスの乗客は僕ともう一人だけ。
僕が乗り込んですぐにバスは出発しました。なんと乗客は2人だけ。これだけ大きな観光バスなのに。
Wi-Fiもなく、電源もないバスは、ティラナを出発して、西に向かいます。デュラスという都市に着くと、ちらほら乗客が乗り込んできました。
どうやらいくつかの都市を回ってからギリシャに向かうバスでした。
そのため、最初は2人しかいなかった乗客も結果的には20人ほどに増えていました。
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アルバニア出国
アルバニアの大地の中をバスは進んでいきます。
ちょうど夕日が綺麗な時間帯でした。
バルカン半島は自然が豊かで、特にこの日暮れの時間帯は夕日に照らされた山々が綺麗に彩っています。
バスに乗っている時間は決して退屈ではなく、こういった時間毎に変わる車窓の景色を見れることが楽しいものです。
積ん読となっていた原田マハの小説を読みながら、そんな風景に心を躍らせます。
日が沈んだ頃、休憩があったため、コンタクトを外して歯を磨きます。出発前にこれらをやるのをすっかり忘れていました。
出発から5時間が経過し、あたりはすっかり暗くなった頃、バスは国境に到着します。
アルバニアの出国ゲートに来たところ、先に進んでいたバスが停車していました。このバスはなかなか動きません。
何があったのだろうか。
それから20分ほど経ち、やっとバスは動き、アルバニアの出国に進みます。
ここでは窓口でひとりひとりの検査が行われます。パスポートをチェックされ、そのまま手渡されました。
コソボからモンテネグロに向かう際にアルバニアを通過したため、すでに勝手はわかっていましたが、アルバニアは入国も出国もスタンプは押されません。
そのまま出国できましたが、目の前で広がっていたのは荷物検査。
一度バスに置いていたすべての荷物を取り出して、ひとつひとつ中身を検査されます。
3月と言えど、日没後のまだまだ震えるような寒さの中、屋根もない屋外でアルバニアの警察官が手動で荷物を検査していきます。
思いのほか入念な検査をされ、自分の番になるとスーツケースの中身を細かく見られました。
インスタント味噌汁などアルバニア人に馴染みのないものに関しては説明を求められたものの、特に問題点はなく終了。何人かの警察官が同時に行っていましたが、全員分を終えるのに30分もかかってしまいました。
やっと終えて、再びバスに乗り込みます。
すっかり身体は冷えてしまいました。
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ギリシャ入国
それまでの国境越えでは荷物検査など皆無だったため、とても驚きました。まさか、ここでこんなに手間がかかるとは思ってもいませんでした。
何が目的なんだろうか。もしかしてこの2ヶ国はとても仲が悪いのではないか。
そんな疑問を抱きつつ、再びバスに乗り込んでギリシャの入国へ進みます。
検査のため、再びバスを降りて列に並びます。
この時、バスの添乗員がひとりひとり点呼をして、順番に並ぶよう指示します。
「ナガワ!」おそらく僕だと思われる名前が呼ばれました。
この時気づきましたが、このバスの乗客にアジア人は僕一人。すっかりそんなことにも慣れている自分がいました。
列にならんだ順番に入国検査に進んでいきます。
僕の番では、パスポートのすべてのページを入念にチェックされました。
どこに行くの?どこに住んでるの?目的は?
イミグレでよく聞かれる質問ですが、この旅では初めてでした。
すべて答えてスタンプを押されて終了。あれだけ入念にパスポートをチェックされたのに、スタンプはずいぶんテキトーに押されました。
入国ゲートの先にはカフェがありましたが入らず、バスでゆっくりしていました。
外は寒いし、早く寝たい。この時、時刻は22時でしたが、1時間の時差があるため、23時になりました。スマホの時間を直します。
全員の入国が終わってバスが動き出そうとした時、突然添乗員がとある一人の乗客に何かを言います。それも強い語気で。それに応戦した乗客も強い口調で何かを言っています。
その瞬間、喧嘩が始まりました。
他の乗客が必死に止めに入ります。アルバニア語で何かを言っているみたいですが、何なのかさっぱりわかりません。しかし両者とも目は血走っていて、顔は真っ赤です。
とんだカオスな状況になってきました。
僕はどうすることもできず、ただその状況を眺めているしかありません。
乗客が止めに入ったことで喧嘩は収まり、再びバスは出発しました。
結果的に何が原因なのかはさっぱりわかりませんでした。大丈夫なのだろうか。。
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EUかどうか
入国して30分ほどでまた休憩に入りました。
ギリシャに入ってからバスのWi-Fiがつながることが発覚しました。
つないでSNSを見ていたところ、ジョージアで大規模デモが発生している様子が目に飛び込んできました。
どうやらEU加入を目指すのに弊害となる法案が可決されそうになっているとのこと。
7ヶ月滞在したジョージアは今でも僕にとって大好きな国です。そんな国の人々が、目の前に置かれた状況に強く抵抗していました。
反ロシアを掲げるジョージアにとってEUとは、国民が目指す大きな目標のひとつです。
僕が今経験したアルバニアからギリシャへの国境越えにおける入念な検査も、おそらくEUが関わっているのかもしれません。
EUのギリシャと非EUのアルバニア。すぐ隣に位置していてもこの立場の違いはとても大きなものがあります。
偶然にも「EUかどうか」がもたらす影響の大きさを実感する事態に、世界の諸問題もいつ自分事になるかわからないと強く思いました。
次第に睡魔が襲い、僕は眠りについていました。
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アテネ到着
ふと目が覚めると、バスは街中を走っていました。
時刻は5:00。その数分後、バスは停車しました。
「アティナ!」運転手が叫びます。アテネに着いた。
外に出て、スーツケースを取り出します。
到着したのは何もないただの路上。地下鉄の駅が近くにあったものの、ここはバスターミナルでもなんでもないただの路上。
まじか。
朝5時、真っ暗なアテネの路上に放り出されてしまいました。
しかも寒い。アテネは暑いと思っていたけれど、夜中はまだまだ冷える気温でした。
これからどうしよう。
またもとんだ事態に直面してしまいました。
不幸中の幸い、すぐ目の前に明かりの灯ったお店を見つけたので、スーツケースを引っ張って入ってみます。どうやらここは24時間営業のレストランで、Wi-Fiが使えました。
助かった。
本当は寝たかったけれど、もう起きることにして、コーヒーを注文しました。
ドアが空いていて寒いし、他の客が屋内でもタバコを吸っていて臭かったけれど、ひとまず休める場所があることに感謝です。
温かいコーヒーを飲みながら、この体験記を執筆しています。
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まとめ
この旅では何度も国境を越えており、もう油断すらしていました。
しかし、改めて国境とは厳格に管理された場所であり、またEUかどうかというのはこれらの国々にとって大きな問題であることを認識しました。
結果的に今回のバス旅は、それまでのバス旅とは異なる体験になりました。
それは、偶然にもヨーロッパが置かれた状況を肌で感じることになったし、一アジア人としても理解しておかなければならないことだと感じました。
憧れの地・ギリシャのアテネに到着しました。
ここではゆっくり過ごし、将来のことなどを考えていこうと思います。
まだまだ旅は続きます。
旅の様子はこちらにまとめています。
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それでは、また明日お会いしましょう!
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