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2019年スニーカーランキング

今年も発表いたします。

2019年にリリースされたスニーカーのなかでもっともあたらしい兆しに感じた順に16点選びました。

相変わらずコラボや別注品というよりは、その元となるプロパー商品に光を当てたいという姿勢は変わりませんので、「あれが入ってない!」とか「あれ話題になったじゃん!」とか言われても、そんなことは知ってます、でもわたし的にはこれなんですという感じ。 私見です。



16.Marc Newson R.M.Williams Yard Boot 365

ひさびさにマークニューソンが靴のデザインをしたということで軽くテンションが上がってしまいましたが、アウトプットもさすがの仕上がり。 彼の特徴的なオーガニックな線がシンプルな線形にも反映されていて、それをなりたたせる構造にテクノロジーが用いられる、それを老舗革靴メーカーが叶える。 この組み合わせの妙というか、ああ、これはありそうでなかったバランスだなとかんじました。 こういう意外な食べ合わせ、みたいな組み合わせは今後も増えるでしょうね。


15.Martine Rose Nike Air Monarch

いまだにどうやってるのかちゃんとわかってないのですが、コムデギャルソンがこぶドレスを出したような感覚と同じような衝撃を感じています。 LASTはそのままなのでしょうが、アッパー裏に凸の裏材を入れつつ、パターンもそれに合わせて余らせているのでしょうか。 地味にすごいことやっているとおもうのですが、あんまり目立っていないのと、既存の靴としての、スニーカーとしての美的感覚からは外れていることから、この表現が正当に評価されるのはファッションの文脈で、しかももうちょっと先になるのではないかとかんがえています。


14.Feng Chen Wang Converse Chunk 70 Hi

さまざまなコラボが活発なコンバースとのコラボ相手のなかでいまもっとも注目なのがFeng Chen Wangです。 なんせ、これまでのコンバースになかった表情をジェンダーに寄らず、本質的なところで引き出しつつ、自身のコレクションに取り入れるクリエーションに好感。 そしてこのコラボが日本に来ないことを考えると尚更羨望の眼差しを向けざるおえないのです。 今期(2020AW)もかっこよかったですな。


13.Mot Newlife

2018年にアフリカでランニングシューズが生まれたことも衝撃でしたが、これまでたくさんのシューズを生み出してきたベトナムからベトナムメイドとして売り出すブランドが生まれたことが2019年の衝撃でした。 もちろんノウハウ自体はあるので実現は可能だったわけですが、そのブランディングというか、ベトナム製らしさみたいなことをどこに見いだせるかがポイントになるものでした。 それが、これです。 これを見て「あ、ベトナムっぽい」とおもったのです。 素朴なかわいらしさと現代の技術の融合によるモダンさ。 今後も各国、各地域から「らしさ」が詰まったフットウェアがもっと出てくることを願っています。


12.Nike Air Zoom Pulse

ナイキがスポーツではなく、医療者向けの商品開発を行いはじめたことも2019年のトピックのひとつになるとおもいます。 これまでスポーツの、それもトップアスリートに向けたイノベーションでドリブンしてきた会社が、EASEやISPAなど着用性の拡張を行いこれまでのスニーカーを履けなかったひとも履けるようなものを生み出してきた先に、さらにそのサポートをするひとたちに向けた靴もリリースする。 これはひとつの大きな流れの変化だとおもいますし、そんなやさしい社会にもっとなっていけばいいなという願いも込めてここに記録したいとおもいます。


11.New Balance Fuel Cell Echo Triple

3Dプリントの実用化はアディダスが先行していますが、ニューバランスも実用に向けて動いています。 9月に前足部に3Dソールユニットを用いたシューズをリリースしていましたが、7月にも踵部に用いたものもリリースしていたのでした。

いまのところまで「3Dプリントによる恩恵」が見いだせていない状況のなかで各社様々なトライアルがなされているわけですが、こういったトライアルからあたらしい価値が生まれるわけで、どんどんこんなあたらしいことを生まれていけばいいのにとおもう次第です。


10.Nike Zoom X Vaporfly NEXT %

駅伝でのピンク一色の結果を見てちょっと唖然としてしまい、区間新更新の数をみて更に唖然としてしまったのですが、それも当然というか、もはや身体機能補助ではなく、身体機能拡張まで進んでいることを確信してしまいました。 カーボンファイバープレートによる反発性が取り上げられがちですが、それを活かすための姿勢制御を行うための足入れを実現するためのラスト設計、それに合わせたソールユニットの設計による、前傾かつ前足部接地の姿勢維持がいわゆる「靴に走らされている感覚」を生み出しています。 あらためてその目的に対しての本気度というか、割り切り方が本当にすごいなとおもいました。 なんせそれ以外の部分は結構犠牲にしている部分もあるわけで、エクストリームなことをするにはここまで割り切らないとダメだよねという勇気をもらえた一足でもあります。 今後この「身体機能拡張」の方向へはますます拡張するでしょうね。


9.New Balance Fuel Cell 5280

言うてナイキのはブレイキング2プロジェクトからはじまっていて、それが2017年のことですから、こちらのほうが2019年のトピックとしては強いかなとおもって、こちらの方が上位に。 件のナイキの姿勢を受けて、各社が動き出したわけですが、ニューバランスによる一手。 こちらも前足部による着地と蹴り出しに重きを置いた設計ですが、マラソンというよりはもっとスプリントシューズの設計思想に近い形状。 ナイキのあれよりもうちょっtこれまでの走り方のまま走れそうな印象。 こうやってあたらしい技術を巡ってせめぎあっているのを見るのがたのしすぎるので、スニーカーを追うのがやめられません。。。


8.Kanghyuk Reebok SRS Sole Fury

サステナビリティを問う声がおおきくあがった年でもあった2019年。 各社それまでも意識をもって取り組んでいたブランドに関しては2019年内にいろんなものがリリースされています。 逆にいえば2020年にやりはじめた企業はあくまでトレンドやスタイルとしてやりはじめたに過ぎないわけです。 そのへん、企業の態度というか姿勢がよくわかりますね。 これは特に特徴的な一足。 いろんな素材が試されているなかでまさかのエアバッグ。 たしかにエアバッグって丈夫そうだし、ながい期間持ちそうだし、素材としては結構向いているのかもしれないなとおもいました。

11月にはドーバーストリートマーケットで黒染めされた同シューズがリリースされました。 かっこいい。。。


7.Ecco Xtrinsic

2018年くらいからエコーがすごいみたいなはなしをいろんなところでしていますが、ひきつづきおもしろいことをやっています。 特にすごいのが素材の選択というか開発で、結構むずかしい素材もとりあえずトライしてみようと作り、作ったら少数でもいいからちゃんと売ろうとする姿勢が本当にすごい。 結果的に靴は高くなってしまいますが、そのクオリティーは値段の価値があるのではないかとおもいます。 これはその中の一足で、サンダルにダイニーマを使うという超贅沢仕様。 どれだけ保つんだwというツッコミは置いておき、それを革と融合させている技術がすごい。 し、靴自体がかっこいい。。。


6.Moonstar 810sシリーズ

国内のブランドでどこに注目しているかと言われれば、ムーンスターを挙げます。 それくらい最近良い。 靴として特別なことをやっているわけではないんですが、靴の切り口がいいというか、おもしろくなってきています。 写真は一足ですが、シリーズもので、810sというこれまで特定の職業に向けた作業靴を日常でも履けるようにしたものです。 この切り口が実におもしろい。 なんせ、この切り口で言ったら、これまでムーンスターがリリースしてきた歴代の靴だけでなく、歴史自体がアイディアソースになるわけで、その歴史上で触れてきたユーザー自体がそのまま改めてユーザーになり得るだけでなく、それぞれの専門職に従事している方や興味を持っている方すらの興味も惹きつけられるわけですから。 このシリーズはもっとひろまっていいやつだぞ!とおもいます。


5.Puma Auto Disc

みなさん忘れているかもしれませんし、わたし自身も忘れていたのですが、オートレーシングが一般化に向けて進んだ年でもありました。 それを証拠にプーマもオートレーシングに参入。 しかも謎にタッチセンサー式というどこに対抗しているのかわからないギミックでもって。 オートレーシングについては次のナイキので語ります。


4.Nike AdaptBB / Adapt Huarache

結局リリースはしたもののなかなか数が出ないのはそのコストとシステムによる問題ですが、ナイキは2019年の頭に$350まで行くことができました。 2020年は$200台に行けるといいですね。 そうするとどんどん一般化というかマス化が加速するものと思われます。 マス化するとどんどんコストが下がって最終的に$100台で買えるようになるのではないでしょうか?

さらに8月にはハラチにも搭載。 ここで示唆されたのはオートレーシングはただ靴紐の代わりになるわけではないということです。 つまりこれまでの紐の配置とは全くことなる配置が可能になるのと同時に、フィッティングの概念をレーシングが進化させることができる可能性も示唆しています。 具体的にいうと、靴のなかに配置された紐が靴と足の隙間を適切な圧力で埋めてくれるようになる、というようなフィッティングが可能になってくるわけです。 そこまでいくと、本当にバックトゥザフューザーの靴というよりは、あのシーンに出てきたジャケットのような靴ができるようになってくるでしょうね。 靴に「サイズ」という概念がなくなるのも遠くないでしょうね。


3.Nike Joyride Run Flyknit

ZOOM系でトップアスリート向けの開発をしつつ、ちゃんとファンランナー向けにもリリースしているあたり、さすがのトップ企業だなとおもいます。 しかもリアクトを出したすぐあとくらいにさらっとリリースしていた記憶があり、その後もこつこつリリースを積み重ねていくあたり、これまでの派手な展開と違うなとおもいました。 ジョイライド自体は元はアディダスのブーストから発生した一連のクッショニングセル系へのナイキ的アンサーと言えるとおもいますが、アウトプットはブーストのそれともプーマのそれとも異なる方向に持っていたのがさすがのひとこと。 実際のはき心地もですが、機能を外から見て触ってたのしめるデザインが、もう本当に名前を体現していて上手いよなとおもいます。


2.Converse Chuck Taylor All Star Cut Line

これ本当にびっくりでした。 普通、靴って完成品じゃないといけないとおもうじゃないですか、切れている表現も完成されてないといけないというか。 でもこれは「買ったひとが靴を自分で切ってはじめて完成する靴」なんです。 これすごくないですか? もう発想の転換の勝利というか。 しかもそれを誰もが知っているコンバースのチャックテイラーでやるから意味があるんです。 そうすることによってマスでもマニアックでもなく、「誰もが知っているけど、誰も持っていない一足」になるんです。 2020年にもこれに派生した表現のものがリリースされましたが、もう本当にすごいなとおもいます。 これを考えたひとに拍手。


1.Adidas Future Craft Loop Project

近年のデザインの領域がデザインやプロダクトに括られる、より広い「こと」にも広がってきたようなことが、スニーカーでも起きています。 このアディダスの靴は4月にふつうにリリースされて、そのときはわたし自身も「ふーん、アディダスまたこんなのリリースしたんだ。 あんまり代わり映えしないなぁ。」だなんて思っていたんです。

ところがそれは序章に過ぎず、このプロジェクトの本質はそれをリリースしたあとに起こっていたのです。 4月にリリースした靴を購入したひとがそれを一定期間着用、そしてそれを再度回収したのです。 その着用の状態を検証し、素材のリサイクルを行い、改めて靴の状態の戻したのです。 これは、本当にすごい。 これまでのリサイクルって、例えば靴の状態のものが「靴に戻ること」はなかったのです。 他の別のものや、ペレットの戻されて別のプロダクトに使われる、そういうリサイクルの仕方だったのです。 なぜなら着用の状態や素材、構造、製造過程で靴に戻せない状態になってしまうからです。 でもこれはちがいます。 おそらくなんども検証され、これだったらいけるだろうと練られたものだったのでしょう。 結果がこれです。 これのなにがすごいかって「生み出された靴が使用されてまた靴に戻る」という生産と消費の閉じたループが出来上がりかけているということなのです! こんなプロダクト世の中にありますか!? いやあ、これはすごいです。 2019年を代表する一足なだけでなく、これからのあたらしい未来をひらく一足になるのではないかとおもうし、そうなったほしいとねがいます。



2019年は激動の年になりましたが、以降もさまざまなところでいろいろなことが起きるでしょう。 そのなかでスニーカーをめぐる環境ももろに影響を受けている形になりました。

なかでもスニーカー新興国というか、これまでめぼしいブランドがなかった国からのグローバルに向けての発信が行われてきたこと。 発信時代が容易になったことに加えて、製造方法やコストも下がったきたことが要因でしょう。

機能においては身体的な機能補助ではなく、機能拡張に向かっていること。 これは他のテクノロジーのトレンドの影響も強いとおもいますが、全体としてそちらに向いている以上、そっちの方向に向かざるおえないでしょうね。 同様にそれに対しての規制とか、もっと大きな部分での反対も並行して発生するのではないかとおもいます。

一番おおきかったのはサステナビリティに対しての対応。 素材や製造工程、もっと言うと考え方までそれぞれのブランドがそれぞれの回答やトライアルをもって世に問うているのが伺えます。

個人的には月一でニュースをまとめていたのが今回のランキングをつくるうえでとても役にたったので、2020年もつづけていこうとおもいます。



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