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よりみち読書録

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2020年11月の記事一覧

「もの」に惹かれて 生きるということ

最近やけに「もの」に惹かれる。「もの」というのはつまり生きていないものということであるが、例えば、夜中の街は人が少なく、ものの世界なのだ。人に溢れた日中の都会の喧騒よりも、こうした時間に街を歩く方がよっぽど落ち着くのである。また僕は山を見るのが好きだ。なんとなくあっけらかんとした大きさと広がりが、気楽さを醸し出している。

生き物、というのは生まれたからには必ずいつか死んでしまう、という運命をもつ

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寺山修司 笑わない子供

以前寺山修司が徹子の部屋に出ている(!)のをyoutubeで見た時、「この人は全然愛想笑いをしないな」と感じ、黒柳徹子にも全然怖気付くことがないのはさすがだなあ、などと思っていた。一方で世の中ではこんな感じだと冗談がわからない人だと言われるよなあ、とも。

そんなこともしばらく経って忘れていたのだが、「首吊り人愉快」というエッセイ(ちくま日本文学 006 寺山修司)に、彼は笑わない子供だった、そし

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風土、とアフォーダンス

和辻哲郎の風土を読んだ。これはアフォーダンスのことを言っているのだなと思った。

よくある話であるが、人間は道具を使うことで体を拡張しているのだというようなことを聞く。例えば、杖をつくというのは手を延長しているようなもので、杖の先に自分の手の感覚が次第に結合されていく。しかし、そういったことはなぜ可能であるのかと考えると、これがなかなか難しい。

私たちが歩けるのは、足があって、それを随時動かして

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分裂症的自己と他者

ポストモダニズムに位置付けられるフランスの哲学者、ジルドゥルーズの本についての本を読んでいて気になったのが、分裂症的な自己、というキーワードだった。

僕の母親などは「人間ってのは多面体だからね」などとよくいうけれど、ここでいう分裂症的、というのはそれに近いんじゃないか。自分の中には、こんな自分がいたのか、という自分がたくさんいる。そしてその驚いている自分にまた驚いたりして、じゃあこの驚いてる自分

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関係性による実在 数学と仏教

遠山啓の無限と連続という本を読んでいる。

この本で途中から出てくる抽象代数学、というものの発展の仕方が、とても面白かった。というのも、なんだか禅宗の文脈で出てくる、空から縁起へ、という流れに似ていたからである。

少し話は飛ぶが、僕が受験生の時に河合塾の直前講習のようなものを受けたことがある。そこの英語の授業で講師の方が言っていたことで唯一覚えているのが、「人間の思考の本質とは、比較である」とい

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