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お父さんが倒れた、かぞくの物語

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前より

前より

仲良くなった。
一緒にいるのが楽になった。
一緒に歩くことが増えた。
横にいることで癒される。
次、何をする?どこへ行く?と考えることが増えた。
一緒に美味しいものを食べたいと思うようになった。
言いたいことが言えるようになった。

愛おしさが増した。
大切に思う気持ちが増した。
幸せを感じ続けている。

40代が過ぎて、50代になっても、
何も変わらずに時だけが過ぎていくものだと思っていた。

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みーくんとボート②

みーくんとボート②

さて、ボートクラブに入部し、練習を始めたみーくんでしたが、始める前には思いもしなかった壁が行手を遮りました。

体重。

体脂肪率。

ボートを始めて短期間にも関わらず、身長がぐんぐん伸びて、165センチに。8つ上の兄が小1からコンスタントに学期に2センチずつ伸びて180センチを超えたのとは違い、みーくんの伸び方はイレギュラー。冬眠期間に耐えていた成長ホルモンが一気に噴出したように、背を伸ばしたの

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ドライブ

ドライブ

ICU(集中治療室)

命の峠を越えられるかどうかの瀬戸際で。

旦那君の手をさすりながら話しかけたことは、白い室内医療機器の音と点滴や薬剤とは程遠い世界のこと。「一緒に旅行しようね」「ドライブしようね」ということ。

なので、退院できた今…。

さぁ、行きましょうドライブへ。

初めての遠出は、南知多と決めていた。
久々だから馴染んだ場所がいい。

8時半には出発だ‼️…と息巻いたものの、久しぶ

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シベリアとサンパウロ

シベリアとサンパウロ

私達夫婦は、シベリアとサンパウロくらい性格が違う。
私は誰とでも仲良くしたくて、社交を大切にするタイプ。
旦那君は人に媚びない、人の目は気にしないタイプ。

シロクマとツキノワグマぐらい。
たけのこの里とキノコの山…。

ま、それはそれとして。

とにかく、思考回路が違う。

私はこれ迄、旦那君の病気の具体について記すことを控えてきた。
いくら配偶者だからとはいえ、本人の許可なく記すことなどできる

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みーくんとボート①

みーくんとボート①

みーくんは私の3番目の子どもです。

彼を産んで半年で東日本大震災があり、私はそれからボランティアやまちづくりの活動を始めたので、みーくんは様々な人に出会い、川や森の中で伸び伸びと育ちました。

2人姉妹の私にとって、三人きょうだいの末っ子とは「容量が良く、テキパキとして、抜け目がない」というイメージを勝手に描いていました。

しかし、みーくんは、ちょっと違う。

少食、偏食(珍しいモノは食べられ

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食べることは生きること

食べることは生きること

入院食は、味が薄くて健康的だと、相場は決まっており、やんちゃ三兄弟の長男である旦那君には(病院には大変申し訳ないのですが)満ち足りた食生活とはいかなかった10カ月でした。

旦那君には、手術後、オール点滴生活の時期が長くありました。そういった患者さんは、嚥下食から食べることをリスタートしていきます。

食べることもリハビリなので、「まだ食べることへの意欲が湧かず、途中で眠ってしまいました」などと言

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暗闇に灯りを照らす言葉掛け 〜医療・教育に携わる人達へ〜

暗闇に灯りを照らす言葉掛け 〜医療・教育に携わる人達へ〜

「ご主人は〇〇が大変だと思います」
「お子さんは〇〇が大変だと思います」
「ご主人は〇〇が難しいですね」
「お子さんは〇〇が難しいですね」

患者の家族になって、病院の人に、このような話をされることが何回もあった。

そして、教員も保護者さんに、このような話し方をすることはないだろうか?

「〇〇が大変」「〇〇が難しい」
それだけの説明を聞いて、説明された側にどれだけメリットがあるだろうか。

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病院

病院

集中治療室。

面会は一回につき30分以内。

面会が始まる13時から病院に行き、1回目の面会を終えると、2回目の面会をするために、待合室で勉強をして待つ。

14時頃、2回目の面会を終えて、再び待合室へ。そして、18時、3回目の面会をして帰宅する。

17時に看護士さんが交替するのを知り、18時に3回目の面会をして帰るようにした。

何回も行くのは、恥ずかしい。
それでも、側にいたい。
側にいて

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辛いことがあった日は

辛いことがあった日は

辛いことがあった日は、

いつか行きたい場所のことを考える。
フランスで美術館巡り。
私の現在生きるモチベーションは、
フランス🇫🇷で保たれている。

人と喋る。
うんうん聞いてくれるだけでいい。

本屋に行く。
ふらりふらりと歩くだけ。

Netflixを観る。
可哀想な登場人物に一時励まされる。

他愛のないテレビ番組を観る。
何にも考えなくて済む。

YouTubeで占いを観る。
次から

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自分が猫だったら、と考えてみる

自分が猫だったら、と考えてみる

せっかちでカリカリ考えてしまう私は、
自分の思い通りにいかないことがあると、
クヨクヨ考える。

目標に向かって計画を立てて努力することはできる…いや、むしろ、大好物。

そうやって、高校入試も大学入試も就職もやってきたから。

でも、上手くいかないのが人生。いろんな「思うようにいかない出来事」に出会う。

例えば今。
コロナが流行っていて、入院中の旦那君に面会できない。

「面会できたら、あれも

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救急車

救急車

救急車を見るとドキドキする。

今までだって、勿論、サイレンを鳴らして走って来るのを見れば、大変だと道を開けた。

今は、サイレンを鳴らす救急車を見ると、あの日に記憶が引き戻される。

あの、訳の分からない恐ろしさと必死さが、
蘇ってくる。

今日は、別々の場所で、2台の救急車を見かけた。病気や怪我の方を乗せ、病院に向けて、出発する前の。

私はこれまで、自分が全く「子ども」だったことに気づいた。

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苦しい2月が教えてくれたこと

苦しい2月が教えてくれたこと

岐阜弁で言う所の「えらかった(苦しかった)」2月。

旦那君の仕上げの手術的なものがなされる筈が延期になった初旬。

延期になった上に、
コロナで面会ができず、
様子も分からず、ただただ病院からの連絡を待つ日々。

以前も書いたが、様子が知りたいと電話をしてもイマイチこちらの思いが伝わらず歯痒さと我慢の日々。

携帯が手放せず、頻繁に確認したり、
病院のホームページを「もしかしたら面会が解禁されて

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小さな春

小さな春

娘が中学を卒業した。

人生には、
旦那君が倒れるという嵐の様な日があれば、
不安に泣くシトシト降る雨の様な日もある。
かと思いきや、今日の様に娘の成長に感動の涙を流す幸福な日もある。

幸せと不幸せは同じだけやってくる。
そして、皆に、平等に。

自分だけが特別だと思ったら、
とんだ悲劇のヒロインごっこだ。

そして、旦那君にも小さな小さな春が来た。
小さな小さな変化だけれど。

旦那君にも、春

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きょうだい

きょうだい

私達夫婦には、3人の子どもがいる。

この春で、大学4年、高校1年、中学2年。

21歳、15歳、13歳。

長男と長女は6歳、
長男と次男は8歳違うのだから、
長男と下2人は、始終一緒に過ごす訳ではなかった。

それでも、
父が倒れ、長男が最も気遣ったのは、
弟と妹のことだった。

妹は父が大好きで、
中学生になると、休みの日には父が営むカフェを手伝いに行っていた。

「店が無くなるとキョーが心

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