「介護時間」の光景 ⑲「屋根」 7.30.
いつも読んでいただいている方には、本当に繰り返しになり、申し訳ないのですが、私が介護に専念している頃のことです。
今から、18年も前のことで、母の入院する病院に、片道2時間かけて、週に3度も4度も通っていました。顔を見せなくなると、また症状が悪化するのではないか、といった薄い恐怖心に引きずられるように行っていました。帰ってきてから、義母の介護があるのですが、それでも、母親が入院して2年がたとうとしていて、やっと病院への信頼が出てきて、気持ちも少し楽になってきた頃です。
今振り返ると、介護に専念している時のほうが、身の回りの小さな出来事に敏感だったように、思います。2002年のことです。
屋根
病院を出て、暗い道のすぐ左側には民家がある。
そこに3台のクルマが止めてある。そこのうちの1台の屋根の上にネコがいる。ちょっと上体を起こして顔をふいているような仕草をしている。ちょうど屋根の真ん中の位置だから、巨大なエンブレムのようにも、タクシーの印のようにも見えた。
(2002年7月30日)
この「屋根」を記録する前は、母の病室にいました。
その時のことも、メモを残しています。
母の症状が安定しているせいか、介護者としても、なんとなく、落ち着いているようでした。
「午後4時30分頃、着く。
今日は、夏用にタオルケットを買って、持ってきた。
いつも、この病院でお会いする家族の方に、花びんをいただく。
母が、毎日のように、部屋のすみに、空のペットボトルを並べて、そこにボールを転がして、ボーリングのようなことをしている。
その道具一式を入れるための、箱を妻が作ってくれて、ふたにはボーリングのピンのイラストが描かれている。
母は、ベッドに横になっていた。
テレビをつけて、高校野球を見ていた。
夕食は、55分かかった。
そのあとトイレに行っていた。
けっこう平和な時間が流れて、午後7時に病院を出た。
空が、赤い」。
それから、18年がたちました。
2020年7月30日。
午後になって、東京都内の新たな感染者が367人と、過去最多を記録した、というニュースが流れています。
これから、この数字は、さらに上がるような予感しかなく、自分たちのことは自分たちで守っていくしかないでしょうし、それでも、どうなるか分からないので、恐さや不安は、確実に、少しずつふくれあがっています。
今日は、雨があがってから、温度も少しずつあがってきて、薄曇りですが、雨の気配は薄くなりました。
午後4時頃、近所に出かける途中で、妊婦さんとすれちがって、当たり前のようにマスクをしていましたが、温度も高くなってきたのに、これから先、勝手な心配ですが、より大変そうだと思いました。
英語教室から、子供が歌っている声が聞こえてきます。キックボードの小学生女子2人に勢いよく抜かされました。幼稚園の小ぶりな園庭では、園児たちが元気に走り回っていました。小学生は静かにしているらしいですが、この年齢では、これで自然なのだろうと、感じます。
河川敷には、人がけっこう歩いたり、走ったりして、野球部は練習をしています。
用事を終えて、自宅に戻ってきたら、家の前の道路の上で、スケボーがくねくね動くようなボードに乗った小学生女子が集まってました。
6人がボードに乗って、一人だけが乗っていないのですが、7人が手をつないで輪になって、乗っていない一人が走って、スピードをあげると、きれいに回り始めました。そこにいる女子小学生たちが歓声をあげ、さらにスピードをあげ、きゃーみたいな声になって、それでも、手をつないでいるので、けっこう速度が上がっても、きれいな輪のまま回っています。すごく楽しそうです。なんだか見事でした。
家の前の狭い道路なので、ちょっと近づけず、その動きがおさまってから、動こうと思いました。
そのまま、輪になってスピードがあがって、そのうちに手を離して、輪はこわれて、女子小学生たちが、あちこち違う方向へ、滑って行くのを見てから、道路があいたので、そこを通ることができました。
今日は、少し歩いただけでも、いろいろな人のエネルギーを感じました。
特に小学生や、もっと小さい子供達にとっては、コロナ感染というのは、もしかしたらピンとこないかもしれません。自分たちが重症化する可能性が低ければ、いろいろと制限されていれば、もっと動きたい、という気持ちが強くなって、当然のような気がしました。
何しろ、久しぶりに雨の確率が減って、外で遊べる日になったのですから、走りたくなったのは、分かる気がします。ただ、今日、見た範囲だけですが、走っていたのも、キックボードも、ブレイブボード(さっき調べました)も、なぜか、全員が女子でした。
(参考資料)
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「介護相談」のボランティアをしています。次回は、2020年 8月26日(水)です。
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