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よく笑う優しい親友の抱える闇

僕の親友はとても優しく良く笑う。

そんな彼は人一倍傷ついた経験があり、家庭内でも問題を抱え悩んでいた。それを打ち明けられたのは出会ってから何年か経ってからだった。僕はそれまで彼が問題を抱えているとは思わなかったし、悩みなんて一つもないと思っていた。そう思わざるを得ないくらい優秀で、人想いで、いつも明るく笑顔で人望があったからだ。

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 彼と出会ったのは小学3年生。ある学校から転校してきて、僕の隣のクラスに所属することとなった。今でも彼が笑顔でハキハキと自己紹介する横顔を、教室の外から眺めていた記憶が鮮明に浮かぶ。第一印象は、明るく堂々としている子であった。

今ではくだらないが、実際に「スクールカースト」と呼ばれるものは存在しており、ボス的な存在と親友だったため常に5人位を引き連れて行動していた(この5人も定期的に変わった)。今では恥ずかしいが、そんなグループから見たら彼は「変な奴」と認識され、「なんかキモくね」という風潮が蔓延していた。僕は口ではその意見に合わせつつも心では魅力的だなと思っていた。

時は流れ小学五年生の頃、僕はそのボスと喧嘩をしてグループから離脱することとなった。ちょうどその頃、彼と同じクラスだったため話をするようになり、段々と距離が縮まっていった。家が近かったこともあり、毎日一緒に登校し一緒に下校した。彼は頭も良く、人間性も抜群。人望も厚く全てにおいて尊敬ができた。そして同性として惚れた。親友というのは、「恋愛感情を伴わずに惚れ合った時」に成立する関係であると僕は考えている。その時僕らは親友となった。


 地元の中学校に進学し、彼とはクラスが一緒になって大喜びした。それからも毎日一緒に登校し一緒に下校した。時間にルーズなところがあり、朝の集合によく遅刻したが、なぜか憎めず周りの友人も「やばいだろ、遅刻しすぎだろ」と口では言いつつも笑顔で彼を許していた。その位人間性が素晴らしかったのだ。

その頃からより互いの距離が縮まり、「好きな人の話」「悩みや愚痴」「家族の話」など深い話をするようになった。僕らのルーティンは、帰り道の途中のある急な階段の中腹に座って暗くなるまで話をすることだった。そこで彼は自分の家庭環境や様々な境遇を話してくれた。目には涙が浮かんでいるのか、暗くてよく見えなかったが、1人で悩み苦しんでいたのだということを感じ取った。「こんな魅力的で強い人も悩みを抱えているのか。」その頃はこのような浅はかな思索にとどまった。

 中学生活は彼との思い出で溢れかえっている。勉強でも課外活動でも委員会や体育祭でも共にトップを務め、切磋琢磨していった。

 高校は、一緒に県内トップの公立高校へ進学する予定だったが、僕は高校でどうしても春高バレーに出場したく、県内トップの私立高校への進学を決めた。高校は離れることとなったが、家は近かったため定期的に会い、夏休みなど長期休みには必ず遊んだ。

 僕は内部進学で大学へ進学し、彼は僕を追うように僕と同じ大学を受験し見事合格。同じ大学に通うこととなった。そんな彼は今でも大親友であり、一生の付き合いとなるだろう。


 つい最近、彼のお姉さんのFacebookの投稿から、僕が知る以上に苦しんでいたというエピソードを見かけた。優しいからこそ周りに心配をかけたくないと考え、自分1人で抱え込みそれを消化しようとする。そんな彼の強さに心を打たれた。

その後成長するうちに、色々な人と出会うことになった。そこでもやはりこの法則は外れなかった。それは「よく笑う優しい人は強そうに見えるだけで実は弱い」という法則だ。彼ら、彼女らは優しいからこそよく笑う、人に弱さを見せない強さがある。でも普通の人と同じように傷つくし心は脆い。特に日本人は真面目で勤勉だから、人に頼ることなく1人で抱え込んでしまう。

僕はそんな日本人の精神性を尊く思い、日本人であることに誇りを持っている。しかし、それが自殺率に繋がっていることはとても悲しいのだ。


 彼ら・彼女らは人想いだから、人の相談に親身になって乗る。人の話を否定もせずアドバイスもせずただただ聞く。だけど彼ら・彼女ら自身の話や相談は誰が聞くのか。彼ら・彼女らが弱みを吐く場所、さらけ出せる場所はあるのか。否、彼ら・彼女らは自分自身で消化しようとする。そして抱え込む。最悪の場合自殺に至る。

そうなってしまわないよう、僕は先日手紙を書いた。「いつでも頼ってくれ」「精神的にやばくなったら言ってくれ、新幹線に飛び乗って大自然の中寝っ転がって甘い果実にでもかぶりつこう」「いつもありがとう」という内容を書いた。

この手紙を書いても、彼はよほどのことがない限り弱みを見せないだろう。自分で消化しようとするだろう。でも最悪の状況は避けれるのではないか。そう考える。


もしあなたの周りに、優しく良く笑い強い人がいたらそっと寄り添ってあげて欲しい。そんな彼らの強さに敬意を持ちつつ、彼らも傷つくし弱いということを理解してあげてほしい。ちょっとした変化があったら、声をかけてあげてほしい。もし自分の大切な人なのであれば、手紙を書いてあげてほしい。

勇気がいることかもしれないが、その小さな勇気が彼ら・彼女らを救うこととなるかもしれない。そう考えれば、その勇気も出るのではないか。

その小さな一歩によって、世界が変わる。世界を良くする一番の方法は、自分の周りの人を幸せにすることだ。周りにそういう人がいたら、どうか勇気を出して行動を起こして欲しい。話を聞いてあげて欲しい。僕からの心からのお願いです。

吉田カオル

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