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putti essay ~日々を綴る~

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#日記

2021年、8月末の夕暮れ情景

夕暮れ前、木陰のせいで少し涼しく感じられるが、終わりが近いといえまだ8月なのでじめじめしている。今まで気がつかなかったが、夏の間に黄色くなった葉を落とす木があることを発見し、アメンボが水面にたてるような驚きの輪がからだの中に広がってゆく。
つくつくぼうしが大合唱し、そのなかでひときわハッキリとした声で、「ミーンミンミンミー」 と鳴いている蝉が、まだ夏は終わっていないと主張する。

もくもくと湧いて

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ポストカードと、誰かの不思議そうな表情

ポストカードと、誰かの不思議そうな表情

今月になって行くことを諦めた、美術館から取り寄せたポストカードを布団の上にひろげて眺めはじめる。カーテンをしていたら、外からの日が入らずに、まだ涼しく感じられる時間が幸福だ。
以前行った美術展で買った、クリムトのユディトの絵はがきをひっぱりだし、部屋の隅のテーブルの上に載せた。

子供の夏休みっていいなぁ、という誰かの呟き。そういうものは、もう簡単には巡ってこないのだろうなぁと答えていたわたしに、

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(ちょっと汚い)便と、食事と生活改善のはなし

接客業をしたく、パートで仕事をする会社を代えてから、その職場では一日も働いていない。数日の研修はあったものの、その施設自体が閉まっているために出勤できず、休業補償を頂いている。

ただし、掛け持ちの仕事を倉庫でしているため(歩き回る)、運動不足にはならず、極めて健康的な生活を送っている(一応タンパク質も野菜も摂ってるし)つもりだったのだけれども、最近になって少し体調を崩す。

一月末頃までの1週間

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この3ヶ月という日々と、約十年

今年の2月の末くらいまで、ここ数年の主な仕事は接客業だった。十年位勤めていた職場で(その間に違う職場でもやはり接客をしていたわけだけれど)、最後のほうは同僚や先輩というのは何だかゆるやかな家族みたいな雰囲気があり、お客さんは何年も前から知っている近所の顔見知りみたいな方も少なくなく、わたしはよく話を聞いたり、したりしながらのびのびと仕事をさせてもらっていた。(何と幸せなことだったろう。)

3月末

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年上の友人と、心理学者と作家とわたし

河合隼雄さんのことを最近初めて知った。
地元で知り合った、年上の知恵のある女性に新型コロナの外出自粛中にLINEすると、わたしはこれまでに彼の著書を読んで、自分の物の見方と合うと思いました、というテキストが返ってきた。
早速スマートフォンで彼の名前を検索すると、大量の彼の著書の題名が表示される。全く彼のことを知らない者からすると、どれを選んでよいか分からないくらいの量なのだけれど、その中に 河合隼

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バジル

朝目が覚めると、2階の開いたベランダの窓から、バジルの匂いが漂ってきた。
どうしてこんなに香るのだろう、とわたしは不思議に思う。

1階のテレビが何人が死亡、と伝える声がわたしの耳に届く。
聞き慣れた、うんざりした、諦めのような気持ちが一瞬わたしの横を通りすぎる。
わたしは自分の部屋の扉を閉めて、少しの間瞑想をする。わたしは何者でもなく、この世界の一部でもなく、‘わたし’というちっぽけな枠が取り払

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カタカナ語

朝、大きなやかんでお茶を沸かしていたら、母が「マタニティ...マタニティー茶!」という。

ある時、玄関の上の棚に‘ナタデココ’があるから取ってくれと言った母は自信満々だった。母がそのようなものを買ってわざわざ棚の上に置いておくなんて珍しいから、わたしは既にそれが‘ナタデココ’でないことには薄々感づいていた。
棚の扉を開けて見てみると、魚の缶詰やナッツ類なんかが備蓄してある、いつもの光景が広がって

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