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その内容、もうスルーできないんです

広島県の「働く女性応援よくばりハンドブック」が炎上した。もはや、スルーされない内容だと理解がないことが、ジェンダーギャップ指数120位(2021年)を物語る。なんとなく、ハンドブック統括者は、少し前の世代価値観をもったままのような印象がした。ニュースで取り上げられた以外で、私が感じたのは2つ。

ひとつめは、まだまだ女らしさの呪縛に囚われた部分があるのではないか?は、前回書いた。その、これまで見えなかった女性の価値観や社会の意識の変化に対する気づきである。ゆっくりではあるが、性別役割分業などの違和感を、徐々に解き放とうとしていると感じだ。このハンドブックの初版は2014年。ちょうど、私も子育て真っ最中で、ニュースでも取り上げられていた「同僚・周囲への感謝と配慮」の狭間で苦しんでいた。悩んだ挙句に、ジェンダーを学ぼうと大学院に行った頃と重なる。確かに、当時『仕事も、結婚も、子どもも』的な本を読み、触発されたことがきっかけだった。最も苦しんだのは、「これまでと違うこと、多くの人と違うことをすることは、控えめにしないと認めませんから!」的な圧力に対してだった。職場でも家庭でも、アップデートしない古い慣習が続いていた。それに対して不満をかかえている者に対してつめたかった。「身動きとれないんだったら、そのまま従っていろ!」と、言わんばかりの暗黙の了解があらゆるところに充満していた。それに抗うのに必要な武器を、まだまだ女性は持ち得ていなかった。何も悪いことをしていない、むしろ、さまざまな支えが必要な者に対して、「へりくだってお願いしろ、そして、やってもらったら感謝しろ!」と「配慮」が強制された。今でこそ、誰もが使う「ハラスメント」という言葉は、当時まだなかった。以前は、モヤモヤした違和感を表す言葉がなかったから、あらゆる場面で、泣き寝入りがとっても多かった。それが、「ハラスメント」という言葉のおかげで、簡潔に威圧的行為を受ける者のモヤモヤする感情を、一言で伝え訴えることができるようになった。(最近は乱用も懸念されるが…)こんな言葉のパトロールも、暮らしの正常運転に寄与した。その他、いろんなアクションの結果、7年前とは違う価値観が浸透してきての今回の炎上だろう。少し安心した。

そして、ふたつめは、このハンドブックには、働く女性が必要とする内容は、まんべんなく書かれていると思う。しかし、根本的なジェンダーの問題についての意識というか、最終目的が違うような気がする。ハンドブック全体は、ウィンウィン(win-win)の関係で、みんなで快適な環境づくりを目的に作られている。(炎上で切り取られた、修正が必要な内容については改定が必要)わかりやすいしこんな感じでいいだろう。一方、ダイバーシティ多様性への道のりは、かなり遠い気がした。

いろんな価値観を受け入れるには、相手を変えたり、要求したりするのではなく、それぞれが、どうしたらうまくいくかと考え工夫することが大事だ。変わっていくジェンダーの常識や意識を、変えていこうとする努力をし続けることだ。人権という根っこで考えていかなければ、真の優しさはきっと生まれない。

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