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会社を定年退職して初めて知った「この世の罠」

先日、もうすぐ定年退職だという会社の後輩に会った。

そのとき、「定年になって初めてわかる苦労」を、私がいろいろレクチャーしてやった。


1 「健康保険」と「確定申告」


会社を辞めると、まず気づくのが、「総務」がいかに有り難かったかということだな。

年末調整の書類が回ってくると、また総務が面倒なものを持ってきやがった、とか思ってなかったか?

実は、面倒なことを全部やってくれてたのは総務だ。会社を辞めると、それを自分でやらなきゃならない。


定年退職して、すぐ直面するのは、「健康保険」をどうするか問題だ。

会社をやめれば、会社の健康保険組合から離脱することになるが、2年くらいの猶予期間がある。

会社を辞めてすぐ国民健康保険に切り替える、1年後に切り替える、2年後に切り替える、という選択肢があって、どれにするか、非常に悩まされる。

それについては、ネットにもいろいろ情報がある。


でも、実際に直面しないと、ちゃんと考えないと思う。

少し前は、2年間の猶予期間を目一杯使うのが有利、と言われていたようだ。

国民健康保険料は、前年の収入に応じて決まる。何月に会社をやめるかにもよるが、定年後1〜2年目は、サラリーマン最後の(比較的高い)1〜2年の年収に応じて保険料が決まるから、国民健康保険だと一般に高くなる。数十万円になるのだ。会社の健康保険料は年収にあまり関係なく定額に近いので、そのまま会社の健康保険組合に入っている方が得だった。(このあたりの説明、あまり自信ない)

だけど、昨今は、企業の健康保険組合の台所が厳しくなり、保険料が上がっているので、よくよく比較しないと、どちらが有利かわかりにくくなっている。それぞれサービス内容(健康施設利用、検診など)が違うので、それも含めて比較しないといけない。

次年の健康保険料が決まるのが遅いのも、判断を難しくする。

私は結局、1年後に切り替えたけど、定年直後に、こんなに頭を悩ませるとは思わなかった。


1年以内には確定申告もしなければならなくなる。

自営業の人には当たり前だけど、ずっとサラリーマンだけやってきた身だと、これがまた大変だ。

収入がなければ確定申告は必要ないだろう、と思っていると、実はそうではない。

確定申告はしなくても、収入がないことを市税事務所で「申告」しておかないと、その後の保険料とか、補助金支給など、すべてに影響してくる。貧乏なのに、高い保険料を取られ、補助金がもらえない憂き目にあう。

そういうことを誰も教えてくれなかった。

サラリーマンだけやってると、自分の収入は国税、地方税、保険とか、各方面に自動的に知られているから、面倒がない。だけど、サラリーマンをやめると、各方面にあまねく自分で知らさなければならなくなる。どんだけ「方面」があるのかもわからない。

こういう面倒が減るなら、マイナカードでもなんでも、どんどん推進してくれ、と思う。

俺の個人情報とか、いくらでも漏らすから、面倒をなくしてくれ、と思う。


2 「健康管理」


健康診断も、サラリーマンは自動的に会社がやってくれるが(法律で義務づけられている)、会社を辞めたら自分で手配しなければならない。

国民健康保険に入れば、定期健康診断があるけれど、会社でやったのと同じではない。

これは、地域によっても違うかもしれないが、たとえば私の地域では、「視力検査」がない。

「あれ、視力検査は、しないんですか」

「それは、入ってないですね」

と言われて、「あれ〜」となる。

結局、自分の健康管理も、会社任せ、他人任せだった、と気づかされる。

これからは、全部自分で考えて、検査を手配しなければならない。


3 「交通費」


あと、会社を辞めると、交通費がいかに高いか、気づかされる。

会社で働いていると、通勤定期を持っているし、仕事で行く場所には交通費が出る。

そういう、会社から出ている交通費を利用して、仕事以外の部分でも、いろいろ移動していたんだよね。

それがなくなると、一駅動くだけでも、自分で交通費を出さなければいけない。

日本は、交通費が高いんだ。日本に来る外国人がよく言うけど。

一駅動くだけでも、往復で400円弱かかる。それは、老人の生活費感覚では、1食分の食費相当だ。

バスだって、本数が減り、料金が上がっている。

自治体によってはやっている、老人のための無料パスみたいなのも、最近は削減傾向だ。

そういうわけで、移動のコストが高いので、老人はあまり移動せず、出歩かなくなる。

現役時代、満員電車での通勤は地獄の苦しみだったが、しだいに「タダ」で電車に乗れた時代が懐かしくなるよ。


4 「人間関係」


で、最後に思い知るのは、いかに人間関係がはかないものか、だ。

現役時代に集めた名刺の数、アドレス帳に乗っている情報は、実に膨大だ。

しかし、会社を辞めた途端、それらは一切「無」となる。

退職の通知を出しても、もう返事もくれない人が多い。

退職して、友達が1人でも残っていたら上等だ、と言う人がいたが、本当だと実感する。

俺は、1人以上はいたかもしれない。でも、せいぜい数名だ。

考えてみれば、自分だって、辞めていった会社の先輩とは連絡をとっておらず、思い出すこともない。

自分を可愛がってくれた先輩に対しても、ね。

世の中なんて、そんなもんだ、と思い知る。

世の中、みんな恩知らずだ。俺も含めてね。

だから、後輩の君が、僕のことを思い出してくれて、会いたいなんて連絡してきたから、うれしくてね。


5 「暇になればやりたかったこと」はなんでも1、2年で飽きる


君も、定年になったら、やりたいと思っていることがあるだろう。

ゆっくり本を読みたい、とか、音楽を聞きたい、とか、旅行をしたい、とか。

そういうのは、1、2年もすれば、たいがい飽きると思った方がいい。

本当にやることがなくなるんだ。

それで、どうすべきか、って?

わからないけど、ヒマだから、俺は長生きでもしてやろうと思ってる。

また連絡してくれよ。

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