かいらい工房(代表クグツ。)

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最近の記事

月の海で溺れてる、わたしの傍には女神さまがいて・・・。/Epitaph

「弥世川の守り主」  大好きなおばあちゃんは不思議な人だった。  ご先祖様とかは大事にしていたのに、神さまとかは、あまり信じていなかったのだ。  亡くなったおじいちゃんの仏壇にも、ちゃんと毎日手を合わせてる。 『あれは、ただの挨拶みたいなもんだよ。おはようとか、元気かとか。だって他にやり方って知らないしね。電話がつながるんなら掛けるけどさ』  おばあちゃんは月に一度は必ず、仏壇に大福をお供えしていた。おじいちゃんの大好きだった大福。お供えしたあとは、おばあちゃんと一緒に

    • 月の海で溺れてる、わたしの傍には女神さまがいて・・・。/後編

      「わたし」  ことあるごとに、おばあちゃん家(ち)に出入りしていた。わたしが行くと、おばあちゃんは一回は必ず、あの世の話しをしてくれていた印象があった。    おばあちゃんは弥世川(みよがわ)があの世に通じていることを信じていたけど、死後に旅立つ、天国とか地獄のことは信じていなかった。  おばあちゃんの影響なのか、わたしもあまり死後の世界を信じていない。  人間は、  命は、いつか失(な)くなるものだから、  わたしも、何十年か先には知ることになる。  そう、まだまだ

      • 月の海で溺れてる、わたしの傍には女神さまがいて・・・。/中編

        「女神さまとの暮らし」  いつの間にか月が小さく離れていた。濃紺の海は少しずつ存在を隠していき、まっさらな砂浜が顔を出した。初めて見た干潮だ。岩場から飛び降り、幼い女神さまを抱きかかえた。  軽い。昔、従姉の子を抱かせてもらったのよりも軽い。米十キロよりも、軽かった。  元の、わたしが打ち上げられた浜で脱ぎ捨てたスーツを着込む。きめ細かく速乾性に富んだ砂のおかげで湿気はなかった。露出狂スタイルからはさよならだけど、着替えの間中、女神さまの視線は変わらない。スーツの上着を引

        • 月の海で溺れてる、わたしの傍には女神さまがいて・・・。/前編

          【川の月にポケット瓶】 「んんにゃぁぁあああっっ!!?」  左手で握ってたポケット瓶のスクリューを回して、濃い蜂蜜色の液体をゴクリ。  それで一気にむせ返した。アルコール度数四十パーセントのウイスキーのストレートで、喉が炎上。口内の劇薬を吐き出すために喉だか気管だかが痙攣にも似た大運動会。  崩れ落ちるように欄干にもたれ掛かり、涙と、鼻水と、よだれと、ウイスキーで公共の地面を汚す。  最低で、  最悪だ。  半分以上なくなったポケット瓶中身はわたしの喉を経由して地面に染

        月の海で溺れてる、わたしの傍には女神さまがいて・・・。/Epitaph

          魔法人形は、異世界で少女の夢を視る。/終

          【エピローグ 虹の尻尾とともに・・・】  扉を叩き壊さん勢いで繰り返されるノック音。  人形が眠りに堕ちて、月と陽と夜の巡り経て現れる者のことを魔女は知っていた。  気質や性質についても幾ばくかの知識はあった。  ―――が、これほど激しいものとは―――、魔女にも思い至らなかった。  古い樫の扉は蹴破られて、仁王立ちで誇る姿に魔女はため息を漏らした。  曰く、野蛮なる狼藉者は魔女の弟子となることを強く希望した。  追い返そうにも、帰らない。  頑固で我儘。おまけに魔術の

          魔法人形は、異世界で少女の夢を視る。/終

          魔法人形は、異世界で少女の夢を視る。/二十

           マリーの腕に抱かれての逃避行は僅か日暮れまでに幕を閉じた。  お屋敷に連れ戻されたマリーはたくさん叱られた。  叱られた分だけ心配されていた証明でもある。  魔女を放っておくのも心配だけど、二兎を追うには体が小さすぎる。  私は、私が大事にしたい可愛いウサギと共にいる選択をした。  生家を離れてセドリック氏のお屋敷のある隣の領への引っ越して、婚儀は成った。  マリーも徐々に気持ちを落ち着かせて、二人の間に第一子が誕生する。  年を置いて第二子、第三子と子宝に恵まれたマリ

          魔法人形は、異世界で少女の夢を視る。/二十

          魔法人形は、異世界で少女の夢を視る。/十九

          【最後から二つ目の試練】 「この大馬鹿ものが」 『痛っ!?』  こつん! キセル先端の金属部分が頭を打った。  イオは思わず頭を押さえたままで床に蹲る。埃まみれの床と部屋に塵が舞う。  嗅ぎ慣れた薬草の匂い。乾燥させた薬草の紫煙。  目の前にある裸足。黒いマントを肩から羽織っただけの、肌を惜しげもなく晒したまま脚から肢体。  下着だけが辛うじて女の部分を覆っているが、色柄は上下ちぐはぐ。  黒いボサボサの髪に薄手の眼鏡。 『魔女、、、なの? だってここは』  場所は依

          魔法人形は、異世界で少女の夢を視る。/十九

          魔法人形は、異世界で少女の夢を視る。/十八

          【祭りの夜、そして……】 『お祭り?』 「村の人達が、わたしのために?」  イオとマリーは同時に問いかけてから互いに目を合わせてから逸らした。  侍女は心中でため息をついてから「はい」と答えた。マリーに夕食の時刻を伝えるために部屋を訪れて、ついでに要件を告げたのだが。 『……、……』 「……、……」  魔女から譲り受けた魔法人形と、仕える貴族令嬢の空気が妙な空々しさを孕んでいるのが、この数日抜けない。  気分転換になればよいとの想いは叶いそうになかった。 「お嬢様は

          魔法人形は、異世界で少女の夢を視る。/十八

          魔法人形は、異世界で少女の夢を視る。/十七

          【変わりゆく人形】  暗黒面。仰向けのまま浮かんでいく。  海の底。見えない手に掬いあげられるように徐々に高度は上がっていく。  遠くの天井には小さな窓。窓の向こう側の明るい世界が、高度を上げることで近づいて、大きくなる。  耳鳴りと頭痛と、ちょっとした眩暈。  それを乗り越えると、ようやく景色を捉えた。 (ここは、マリーの部屋? 私は、一体……?)  当然に起こった眠りでイオは自身が堕ちていたのであろうことは認識できた。    最初に違和感を覚えたことは、眠りの間の記

          魔法人形は、異世界で少女の夢を視る。/十七

          魔法人形は、異世界で少女の夢を視る。/十六

          【人形のユメ】  午前五時三十分に時計を見たのが記憶の終点。  部屋の前のインターホンが連打されている。もうどれくらい鳴らされているのか見当もつかない。  同時にマナーモードのスマホが振動で机の上を移動し、落下し、床を震わせて歩いていた。  秘密部屋の机にもたれかかるように寝ていた彼女は大欠伸で、ドールハウス内の時計を見るために眼鏡をかけた。  午前十時を少し超えていた。  床を歩き疲れたスマホの電力残量は三パーセント。  日付と時間が表示され、スケジュール帳にスワイ

          魔法人形は、異世界で少女の夢を視る。/十六

          魔法人形は、異世界で少女の夢を視る。/十五

          【新しいドレスと口づけを】 「イオ。服を脱いで待っていてね」 「イオ様。こちらにぬるま湯を用意しておりますので」 『……はい?』  森を抜けて迎えに来ていた馬車に乗り込んだマリーは疲れを隠せないようで、すぐに寝息を立てはじめた。  人形のイオを抱えていた少女の腕が緩んだ。  外歩き用の服を通して伝わる少女の体温に充てられた為か。  朝方までの魔女とのやり取りが堪えた所為なのか。  イオもいつしか意識の蓋を閉じていた。  魔法人形のイオに備わった特異体質。  眠っていても

          魔法人形は、異世界で少女の夢を視る。/十五

          魔法人形は、異世界で少女の夢を視る。/十四

          【契約】 「契約は成った。お前はこれで自由だ。どこへ行くも、何をするのも自由。自身の選択に責任を負う限り、お前を妨げるものはない」   厳しくて恐れを喚起させる魔女の箴言は、どこか慈愛を帯びていた。  【サヨナラ】  夜。  昼は悪戯風が駆け回る空に比べると、夜風は遥かに落ち着きを備えた風の領域だ。  天上とも謳われる魔女の住処にあるバルコニーに柵はない。  その理由を魔女は端的に「落ちても死ぬような馬鹿は、ここに住んでいない」からだ。  魔女は空を飛べる。落ちたと

          魔法人形は、異世界で少女の夢を視る。/十四

          魔法人形は、異世界で少女の夢を視る。/十三

          【妖精蝶とむぎわら帽子】  深緑の木々が天蓋として張られた森の奥。木漏れ日が差し込むことで地面は宝石を散りばめたように陽光を映していた。  冷たい空気。静謐な場所は総ての微かな音さえも咎めるような厳かさに満たされていた。  人々はこの場所を畏れてか立ち入った気配はないので、あるのは獣道。  木々が意図的に生えたように覆い隠していた。  最奥には岩場があって、その脇からちょろちょろと零れるような水が湧き出ている。  魔女の水瓶。  近隣の村人の間ではそう呼ばれているのだと、屋

          魔法人形は、異世界で少女の夢を視る。/十三

          魔法人形は、異世界で少女の夢を視る。/十二

          【眠り醒めて】 「よく眠っていたな」  目に染みる夕焼け。赤橙色のハイライト。青紫色のシャドウ。  雲が優雅に泳ぐ様を臨めるバルコニーで大の字になる魔女。  その隣にある化粧箱。シャンパングラスひとつが収まる大きさ。元の用途は魔女にも知りようがないが、今はただのベッド。  シャンパングラスに等しい小さな人形が寝そべっていて、ゆっくりと半身を起こした。 『どれくらい堕ちてた?』 「日の出が二回。日の入りが二回と、もうすぐ三回目だ」 『二日間も、、、』 「あの娘の屋敷でまた

          魔法人形は、異世界で少女の夢を視る。/十二

          魔法人形は、異世界で少女の夢を視る。/十一

          【人形と魔女 後編】  「やはりお前は気に入らないな」  吐き捨てるように魔女は立ち上がった。 「自己を殺して虚言に酔いながらあたしを体よく使おうとしている。欠片も思っていない虚構の願いを叶えさせるために、あたしを利用している。そんな奴の願いを、誰が叶える? 魔女への冒涜だ。死ぬ価値すらない」  表情は険しい。  人形は、元の時分の顔に辟易していた。嫌悪すら抱く。 「お前は永久に生き続けろ。老いず死なない人形の身が朽ちるまで己の罪に焼かれるのが相応しい末路だ。時間だけは死ぬ

          魔法人形は、異世界で少女の夢を視る。/十一

          魔法人形は、異世界で少女の夢を視る。/十

          【人形と魔女 前編】     自分の顔を見ながら浴びせられる皮肉はいちいち癪に障る。  せめて朝一番には聞きたくないのに、これだ。  もう腹も立たないがイラッとはする。  半分だけを満たした水差しを背負ってわたしは蓋を閉めた。  水差し本体にも麻ひもを巻きつけてリュックサックのようなストラップが取り付けてある。  満タンとなれば厳しいが、体幹を使えば人形の身でも荷物は運べる。 「ん、ごくろう」トコトコと魔女が腰かけた椅子に近づいた矢先に、水差しごと体を持ち上げられる。クレ

          魔法人形は、異世界で少女の夢を視る。/十