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アンチワーク哲学【ホモ・ネーモ】

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「労働なき世界」を実現するため「アンチワーク哲学」を紹介するマガジン。なぜ、誰1人労働しない世界が可能なのか? を徹底的に考察しています。
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2023年10月の記事一覧

ベーシック・インカムは学校制度や家族制度をどう変えるか?

ベーシック・インカムは学校制度や家族制度をどう変えるか?

いつでも嫌な仕事や会社から逃げられる点は、ベーシック・インカムのメリットとしてよく指摘されるが、逃げられるようになるのはそれだけではない。学校や家庭からもまた逃げることが容易になる。

例えばBIがないとき。いじめを受けている子どもが親に「学校に行きたくない」と悩みを打ち明けたとすれば十中八九、「頑張って続けろ」と言われるだろう。なぜなら引きもりになってしまったら最後、進学や就職といった未来が閉ざ

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テクノロジーとしてのアナキズム

テクノロジーとしてのアナキズム

人類が火星まで有人飛行を行ったことはない。だが、そのことを根拠に未来永劫まで人類が火星に到達することはないと主張する人はいない。それが10年後なのか、100年後なのかは意見が分かれるとは言え、なんらかのイノベーションによってテクノロジーが発達すれば、そのうち人類は火星に到達するだろうと、誰もが考える。

一方で、社会の組織化方法となると、誰もが極端に前例主義的になる傾向がある。「これまで、国家のな

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世間一般のアンチワーク系思想と、アンチワーク哲学はどう違うのか?

世間一般のアンチワーク系思想と、アンチワーク哲学はどう違うのか?

■はじめに突拍子もなく労働哲学者からアンチワーク哲学者に肩書を変えた。その理由を簡単に言えば「今よりもわかりやすい肩書をつけたかった」というだけの話である。

そして、確かに前よりわかりやすくなった。一目見れば「あー、とにかくこの人は労働に反対してるんだなぁ」ということはわかるようになった。とは言え、僕の言っていることは一言で言い表わせるようなものではないことも事実。

にもかかわらず人はある単語

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日本が100人の村だったなら

日本が100人の村だったなら

あれこれと統計をあたってみたが、途中でめんどくさくなったので比率は適当である。だが、さほど的外れではないと思われる。だいたいこんなものだろう。

これをみて「いや、30人の仕事いらんやろwww」という印象を抱かずにいることは難しい。しかし、現実社会においてこの30人に相当する人に向かって「いや、お前らいらんやろwww」とツッコミを入れる人はいない。100人と考えれば僕たちが生きる社会の異常性がよく

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夢の世界論争はどちらが正しいのか?

夢の世界論争はどちらが正しいのか?

『ONE PIECE FILM RED』の再上映を観に行った。もうこの映画を観るのは3回目なのだけれど、もらった映画の無料チケットの使用期限が近づいていて、他に観たいものもなかったので、消去法で選んだ。

映画というのは、その時々の興味関心の色眼鏡をつけて観てしまう。僕は今、人間の自由と欲望について考えていることが多い。そういう視点で観ていると、ウタが作り出した世界‥音楽やダンス、甘いお菓子やぬい

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申し訳程度のメンバーシップ記事(近況報告)

申し訳程度のメンバーシップ記事(近況報告)

※メンバーシップ限定の近況報告である。悪しからず。

パトロンを募集するという名目でメンバーシップを開始し、ありがたいことに数名の方が登録してくれた。僕は初めに断っておいた。これは単なる贈与であって、僕が何かサービスを提供して、その見返りに金を払ってもらうような関係性ではない、と。

だから別に僕にはなんらメンバーシップ運営に関する義務はない。しかし、せっかく贈与してくれているなら、なにかしらお返

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性善説と性悪説に、そろそろ決着つけとく

性善説と性悪説に、そろそろ決着つけとく

■性善説と性悪説はどちらも信仰人は本質的に善か? それとも悪か? この問いについて古今東西で万巻の書物が記され、議論されてきた。しかし、決着はついていない。

当然だ。この問いに答えることは信仰告白なのだから。人は明らかに善行も行うし、悪行も行う。1つの行為にも、善悪さまざまな動機が入り混じっているのが普通だ。

つまり、完全に善であることはあり得ないし、完全に悪であることもあり得ない。そして、そ

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もっと時間さえあれば?

もっと時間さえあれば?

人生の大半を仕事で埋め尽していると、まとまった休みをとって仕事以外のことがやりたくなるのが普通だと思う。

その内容は人によって様々だ。小説を書くことかもしれないし、カフェをオープンすることかもしれない。サイバーパンク2077を日がな一日プレイすることかもしれないし、草野球に没頭することかもしれない。大抵の人はこういったブループリントが複数存在するはずだ。きっと永遠に叶えられることのないブループリ

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禅仏教と労働哲学

禅仏教と労働哲学

僕が提唱する労働哲学と、禅の思想、とくに曹洞宗は、ほんの少しだけ似ている。

なんてことを書くと、いろんな意味で混乱を招くかもしれない。「働かない勇気」とかなんとか言っている僕は、欲望のままに暮らすことを重視するわけだが、それは禁欲の印象がある禅とは真逆のように感じられるだろう。

確かに、禅に限らずそもそも仏教は、禁欲的な生活と坐禅を経て悟りに至るというロードマップを提示している(そこまで単純な

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実りの秋は、苦行の季節か?

実りの秋は、苦行の季節か?

畑を借りている農家のお宅に生えている柿の収穫を手伝った。半分は甘柿で、半分は渋柿。甘柿はそのまま食べ、渋柿は干し柿にする予定だ。

世界の農民たちが年がら年中祭りをやっていた気持ちも理解できる。収穫はさながら祭りである。「もうすぐ収穫だね」なんて話をしながら収穫の日を待ち侘びて、当日になれば子どもたちと一緒になって、柿の木からチョキチョキとみのりをもぎ取っていく。ちなみに「やったー、とれたー!」と

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生きるということ

生きるということ

10歩歩いては地面を突き、100歩歩いては水を飲む。わざわざそんなことをしなくても、家畜になれば寝ているだけで飯も水も出てくる。それでも雉は家畜になりたいとは思わない。だって楽しくないから。

荘子のこの素朴な格言は、荘子の解説書に載せるには素っ気ない。荘子にはもっと壮大で難解な宇宙論や無常感みたいなものを求められているのだから。

でも、僕はこの一文が『荘子』の中で一番気に入っている。「生きると

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クリス・ミラー『半導体戦争』を読んで

クリス・ミラー『半導体戦争』を読んで

僕は見渡す限りにお花畑が広がるユートピアを夢見る左翼として自己像をブランディングしてきたが、こういう下世話な本もこっそり読んでいる。

これを喫茶店でおおっぴらに広げて読むのは少し気恥ずかしかった。あたかも僕が世界情勢の未来を予言し、めざとい投資とビジネス戦略で大金を稼ごうとする諸葛孔明気取りのおじさんであるかのような印象を持たれるかもしれないからだ。

残念ながら僕は諸葛孔明を気取りたいのではな

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お願いと強制

お願いと強制

「塩を取ってくれる?」と言われたとき、あなたならどうするだろうか?

あなたが常識的な感覚の持ち主ならば、断ることはないだろう。

しかし「おい、塩を取れ」であったならどうだろう。あなたが常識的な感覚の持ち主ならば、「はぁ?お前しばいろか?」と拒否するだろう。

このことは「まぁそらそうやろ」とスルーせずに真面目に考えた方がいいと思う。やらされることは同じなのに、こうも人のモチベーションは左右され

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自分への批判記事を書いてみよう

自分への批判記事を書いてみよう

僕の記事は、たまに批判される。批判コメントが書き込まれることもあれば、稀にわざわざ批判動画や批判記事が公開されることもある。

何はともあれ注目してくれていることはありがたいことではあるのだけれど、それが鋭い批判だと感じるかどうかはまた別問題。十中八九は、誤解曲解で揚げ足を取られているような印象があり、それを訂正しようと躍起になっているうちに、議論は重箱の隅突き合戦に発展していき、もともと自分が何

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