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vol.5 トルストイ「人はなぜ生きるのか?」を読んで

名越陽子=訳

文章は簡素でわかりやすく書かれた短編だけど、内容はよくわからなかった。時間をおいて再読したけど、ますますわからない。

しかしこの作品、どういうことだろうと考えたくなる。自分だったらどうするかを考えてしまう。

セミョーンのように赤の他人に優しくできるだろうか。

素っ裸で弱り果てている赤の他人を街で見かけた時、どうする?いかにもやばそうな奴だから、見て見ぬ振りをして、そのままま通り過ぎる?「素っ裸でうずくまっているやばそうな奴がいる」と警察に連絡するのが、せいぜいできること?今の社会ならそれが正解かも。

人はみんな隣人愛で生きているのか。そんなこともないだろうけど、困っている人を見かけたら声をかけ、場合によっては慈しむ。そんな社会がいい。

僕はどうだろう。

作品の中で問われている「なくてはならないもの」とは、なんだろう。人にとって一番大切なものはなんだろう。「人間の中に神様がいる」ってどういうことだろう。そもそもミハイル(天使)ってなんなんだ。トルストイはこの作品で何を伝えたいのだろう。いまいちよくわからない。ひょっとしたら、「なくてはならないも」とは、素っ裸でうずくまっている人を助ける「直感」なのかも。

愛だとか神だとか、どうも馴染みがない。

「人間の中にあるものは何か、人間に与えられていないものは何か、人間はなんで生きるのか」という三つの命題。

この作品でトルストイが伝えたかったことは、どうも馴染めない。

先日読んだ、吉野源三郎の「君たちはどう生きるか」は、人権意識や社会秩序を重んじることこそあるべき姿だと、促していたように思うけど、トルストイの「人はなぜ生きるか?」は宗教的すぎてしっくりこない。

ただ、どんな社会がいいかと問われれば、人に優しい社会がいい。隣同士慈しむ社会がいい。「直感」で動ける人はかっっこいい。そんなことを考えた。

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