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【本要約】仕事選びのアートとサイエンス


2021/12/20

仕事

【仕事探しの混乱要因】
・人工知能
・寿命の伸長
・事業の短命化
・VUCA
 Volatility:不安定
 Uncertainty:不確実
 Complexity:複雑
 Ambiguity:曖昧

仕事選びを予定調和させることはできない。自分をオープンに保ち、いろんなことを試し、しっくりくるものに落ち着くしかない。

哲学の学習
筆者が「何を言っているのか」よりも「どのように考えたか」に注目する。

未来が不確実になった現在では、あらゆる領域において計画の持つ価値は目減りしている。私たちは、不確実な世界に身を投げ出すようにして生き始め、様々な試行錯誤を通じて世界における自分の居場所を見つけるしかない。勝ちパターンが存在していた20世紀後半という時代が異常だったのだ。

スピノザ

コナトゥス
「本来の自分らしい自分であろう」とする力
努力・衝動・傾向・性向

人の本質は、姿形・属性・肩書きではなく、コナトゥスによって規定される。

私たちは、良い・悪いという評価を、社会で規定された絶対的尺度として用いている。しかし、それらの評価は、相対的なモノでしかない。

コナトゥスを高めるのであれば良い。
コナトゥスを毀損するのであれば悪い。

「この世に存在しているもの」は、「それ自体として良い・悪い」ということではなく、自分のコナトゥスとの組合せによって決まる。

私たちが自分の人生を幸福に楽しむためには、様々なものを試し、「どのようなモノゴトが自分のコナトゥスに影響を与えるのか」を経験的に知っていく必要がある。

私たち各々のコナトゥスはユニークなものであるから、自分なりの良い・悪いという判断軸を作っていくことが必要だ。

コナトゥスに対置される考え方がエイドスである。

エイドス
自分の姿形・属性・肩書きなどの形相

私たちはエイドスに基づいて「自分はこうするべきだ」「自分はこうしなけれならない」と考えてしまう。エイドスに基づいた自己認識は、個人のコナトゥスを毀損し、自分らしく生きる力を阻害する。

天職

キリスト教では、天職は神から与えられるモノとしている。

天職とは「自己によって内発的に規定されるのではなく、人生のあるときに、思いもかけぬ形で他者から与えられるモノ」として解釈できる。

自分は「世界に何を求めているのか?」
という私たちが抱えている問いを、
世界は「自分に何を求めているのか?」
という問いへと180度切り替えることを意味する。

天職が「他者から与えられるモノである」と考えた場合、偶然をより良い形で起こさせるための思考様式や行動パターンこそが、必要な技術である。

・戦略とは、引き算である。
ありたい姿と現在の姿の引き算である。
・この差を問題 = " 解消するべきギャップである " と定義する。
・ギャップを解消するための一連の計画を設定することを戦略策定と考える。

「明確なゴールイメージを設定して、脅迫的にそれに囚われながら、突っ走る」というのは、「幸せな人生を歩む」という目的に視点を置いた場合、危険性もまたある。

自分が「何かの意思決定をしよう」としているとき、その選択は「本当に内発的な動機なのかどうか」を今一度考えてみる。

一方で、

・キャリア形成のきっかけは「80%が偶然である」という調査結果がある。
・キャリアは偶発的に生成される以上、中長期的なゴールを設定して努力するのは、間違いである。
・努力は、いい偶然 ( Serenability ) を引き寄せる計画と習慣に向ける。
いい偶然は単に持っているだけでは起こらず、招き寄せるための日々の習慣が重要である。

未来予測は不可能である。

1番確実な未来予知の方法は、未来自体を作り出してしまうことだ。
ドラッカー

好きと得意

好きと得意の重なる領域から仕事を選ぶ手法が良しとされてきた。

自分は何が得意か?
自分は何がやりたいか?
「社会的意義がある」と感じるのはどのような活動か?
自分ならではの強みはどこにあるのか?
自分が何かをしたと思うとき、なぜそれがしたいのか?
自分はこれまで誰とつながり、どのような関係を築いてきたか?

自分の得意は、わからない。やってみないとわからない。

本当に得意なことは、自然と無意識でやっていることなので、気付かない。

経営はサイエンスではないので「全てを機械的にロジックで判断しよう」とするとどこかで論理破綻してしまうか、「極めて不自然な解」「または当たり前すぎて何の面白みもない解」を出すことになる。そうした際に、企業の置かれている状況やビジョンを踏まえた上で、ロジカルに判断すべきところとそうでないところとを切り分けて、解を出す必要がある。適切な状況下で、ロジカルシンキングを捨てなければならない。

ビジネスでは、時間が大変重要な関数なので、100点の解を100の時間を使って作るよりも、70点の解を30の時間を使って作ることが状況次第では求められる。状況に応じて、ギリギリOKという水準の点数を、できる限り短い時間で出すことが求められる。

人生を見つけるためには、人生を浪費しなければならない。
アンモローリンドバーグ

好きと憧れを混同しない。

「何になりたいのか」と「何をやりたいのか」は全く違う。

なりたいは目的で、やりたいは手段

好きはやがて得意になる
長期的な継続は得意になる

地道に着実に続けられるということが、才能や努力に結び付く。
継続が、素質や資質よりも大事な要素である。
羽生善治

うた

「歌は世につれ、世は歌につれ」と考えるならば、現代は一体どういう「世」なのか?

昭和を代表する作詞家の阿久悠は、平成の歌をして
「あなたと私以外に世界を持たない。向かい合っている相手だけを見ているのか知らないけれど、歌の中にまったく景色がない。( 中略 ) その結果、今年の歌も去年の歌も一昨年の歌も、結局、どこかで聞いた同じようなことを歌っているだけということになる」
と指摘している。

『星の王子様』の作者でパイロットでもあったサン・テグジュペリは「愛するとは、お互いを見つめ合うことではなく、一緒に同じ方向を見ることだ」と言っている。

阿久悠は「日本の歌がお互いを見つめ合うことしか語らなくなってしまった」と指摘しているわけだ。

自分らしさを安易に称揚する歌謡曲の氾濫は、我々が「過大な自己愛の時代」を生きつつあることを示している。

かつての全共闘は「自己否定せよ」と叫んだ。

現代の歌が訴えているのは「自己肯定せよ」ということで、そのためにまず「僕が君を肯定するよ」と言っているわけだ。

『新約聖書』では、イエス・キリストは神の名のもとに娼婦や皮膚病患者等の、当時のユダヤ教社会において排斥されていた多くの弱者を肯定する。現代の歌手やアーティストは、いわば現代のキリストとして、多くの人に「あなたはかけがえがない、あなたは肯定される」と訴えているわけだ。

キャリアアンカー

8つのキャリアアンカー
個人が自らのキャリアを選択する際に、最も大切、あるいは、どうしても犠牲にしたくない価値観や欲求を指す。

①【専門・職能別コンピタンス】
何らかの専門領域や職能別の領域において、自分の才能をフルに活用して専門家として能力を発揮することに満足と喜びを覚えるタイプ。

自分の専門領域において挑戦を課せられるような仕事を得たときは、特に大きな幸福感を覚える。自分の専門領域の中では、他人の管理を厭いはしないものの、経営幹部になると自分の専門領域を発揮できる仕事が減るので、相対的に経営幹部への昇進に対する関心は弱い。

②【全般管理コンピタンス】
組織の階段を上り詰めること、経営者になることに価値と充実感を感じるタイプ。

出世志向の人。現時点で専門的・職能的な仕事についているのであれば、企業経営に求められる全般的な能力の獲得に必要な学習経験として納得はするが、根本的には「ジェネラリストとして経営管理に携わりたい」という気持ちを強く持っている。

③【自律・独立】
どんな仕事であれ、自分のやり方・自分のペースを守って仕事を進めることを大切と考えるタイプ。

このタイプの人は、集団行動のための一定の規律が求められる企業組織に属することは好まず、自分の裁量で柔軟に働くことができる道を選ぶ傾向が強い。また、独立しないまでも、コンサルティング・教育・研究職など、行動の自由度が高い職種が向いている。

④【保障・安定】
自分の人生の安定性を最優先に考えるタイプ。

このアンカーでは経済的な保障や雇用保障に対する関心が特に目立つ。安定を望むため、職務での終身雇用が何らかの形で約束されるのであれば、それと引き換えに雇用者側の望む通りの働き方を受容する傾向が強い。もちろん、ほとんどの人は基本的に安定した仕事や報酬を求めるわけだが、このアンカーにつながれている人は、この点を最優先するというところに特徴がある。

⑤【起業家的創造性】
危険を顧みずに、自分自身の会社や事業を起こすことに幸福感・充実感を覚えるタイプ。

具体的には、発明家・芸術家・起業家を目指す人たちが該当する。雇われの身にあるときも常に将来の起業の可能性を追い求め、最終的には独立・起業する道を選ぶ。『自律・独立』タイプの人と異なる点として「何か新しいこと ( 事業や作品など ) を生み出す」といった創造性の発揮に価値を感じる点が挙げられる。

⑥【奉仕・社会貢献】
「環境問題や貧困問題を解消する」「民族間の調和を推進する」といったように、何らかの形で
世の中を良くすることに価値を感じるタイプ。

社会起業家のように、社会的問題を、営利事業を通じて解決していくことを目的とする人たちと言える。彼らにとって大事なのは社会貢献であり、事業を立ち上げることは、そのための手段にすぎない。

⑦【純粋な挑戦】
一見、解決不可能と思えるような障害や問題を解決すること、手無い相手に打ち勝つといったことを追求してやまないタイプ。

常にあえて困難を探し求めているため、特定の仕事や専門性にこだわらない。挑戦自体を「人生のテーマにしている」と言える。ほとんど倒産している会社の建て直しだけに関心を持つターンアラウンド・マネージャーや、不可能と言われている仮説の実現に情熱を燃やすエンジニアなどが、こういったキャリア・アンカーの典型例。

⑧【生活様式】
個人としての欲求や家庭の要望と仕事上の要請、「公的な仕事の時間と私的な個人の時間のどちらも大切にしたい」と願い、両者の適切なバランスを大事にするタイプ。

決して「仕事をないがしろにしよう」ということではなく、両者の統合を追い求めるが、場合によっては職業面のある部分を犠牲にする。例えば、昇進と見なせる異動であっても「家族に負担をかけるような転勤であれば辞退してしまう」といった面も見られる。自分のアイデンティティは、専門性や所属している会社にあるのではなく、「人生全体をどのように生きているか」という点にある、と考える傾向が強い。

セレンディピティ

職業未決定は、従来、問題行動として捉えられてきたけれど、学習理論の立場に立てば「職業未決定は、新しい学習が促進される契機になりうる」としている。

私たちのキャリアは、用意周到に計画できるモノではなく、予期できない偶発的な出来事によって決定される。

■いい偶然の引き寄せ方

【好奇心】
自分の専門分野だけでなく、いろんな分野に視野を広げ、関心を持つことでキャリアの機会が増える。

偶然を起こすための種まきをする。

【粘り強さ】
最初はうまくいかなくても粘り強く続けることで、偶然の出来事・出会いが起こり、新たな展開の可能性が増える。

粘り強さは、鈍感力と言い換えることができる。プライドが高く責任感が強い人たちは、うまくやれていない自分、仕事で成果を出せていない自分が許せなくなってしまう。
「新しいことをやって成果を生み出すには、それなりの時間と積み重ねが必要なのだ」と腹を括って、許される範囲内でギリギリまで粘ってみる。「それでもダメなら、またそのとき考える」というある種の「いい加減さ」が求められる。

【柔軟性】
状況は常に変化する。一度決めたことでも状況に応じて柔軟に対応することでチャンスを掴むことができる。

【楽観性】
意に染まない異動や逆境も「自分が成長する機会になるかもしれない」と発想を転換させて、ポジティブに捉えることでキャリアを広げられる。

楽観性とは性格ではなく、状況判断に関する思考様式である。

【リスクテイク】
未知なことへのチャレンジには、失敗やうまくいかないことが起きるのは、当たり前である。積極的にリスクを取ることでチャンスを得られる。

狭い範囲に閉じこもって同じことだけを繰り返しやっていると、キャリアの糸は細くなってしまう。

課題提起

自由さを獲得したければ、不自由な期間を過ごさなければならない。

自由な行動の裏には、自信がある。

自分の人生の選択は、他方の選択肢を捨てていることである。

何か大きなモノを喪失しているのかもしれない。

「何を得られる」のではなく「何を失うか」をちゃんと考える。自分が持っているモノは、空気のような存在になっていて意識されにくい、失うモノに気付きにくい。

・課題を与えられるのが、課題先行型の仕事である。
・課題を作るのが、好奇心駆動型の仕事である。

課題を作るのは、個人の問題意識や好奇心が内発的動機となって仕事が駆動されるので、それがないとやることがない。

顧客基盤ができあがれば、顧客の課題を解決することで、事業が運営できるが、顧客基盤がない状況では、内発的な動機に基づいて商品を作ったり、マーケティングを行ったりして、顧客を創造しなければならない。

課題を自分で見つけ出し、優先順位を付けて取り組む、すべて自分で決めなければならない。

仕事は自ら創るべきで、与えられるべきではない。課題が来るのを待つ姿勢ではダメだ。

経営者は自分で課題を設定するのが仕事である。

幸福

【世界三大幸福論】
ラッセルの幸福論
アランの幸福論
ヒルティの幸福論

すべて19世紀の人たちである。なぜ19世紀になって、幸福にフォーカスした議論が巻き起こったのか?

19世紀は産業革命を経て、生活水準が急激に改善したから、憧れの生活を実現できるような時代だった。

産業革命を経て、社会全体の豊かさが高まり、過去に望んでいた安全で豊かな暮らしが実現されたにも関わらず、幸福を感じられない。幸福がわからなくなった。

三大幸福論での共通の要素は、幸福になるためには、仕事をすることが大事ということだ。

「世の中に確固とした価値を提供している。誰かの役に立っている、必要とされているという実感」が、精神の健康を保つためには必要である。

人間が幸福であるために避けることができないモノ、それは、勤労である。


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