無職がいた。グータラでいい加減で不精者の男がいた。無職になるべくしてなった男であった。 例のごとく家でゴロゴロしているとノックの音が聴こえてきた。 「おーい、居るかぁ。」 古い友人の声だ。根っからの世話好きであり週に一度家に来ては片付けをしてくれる。友人なくして男の生活は成り立たない。 「居るなら返事くらいしたらどうだ。」 男は適当に手を振る。 「まぁいい、コレが今週分の献立だから。冷蔵庫に入れておくからチンして食べて。」 タッパーに詰められた
15の春、鏡を見た瞬間に全てを理解した。 俺絶対生まれ変わりだわ、と。 兎に角自慢がしたかったので学校で友人に話した。 少しざわついている朝の学校。まあまあ仲のいい友人に近づいた。 「おはよう。そんなことより聴いてくれ。昨日凄いことに気づいたんだ。もう世紀の発見、ノーベル賞クラスのやつ。」 友人は怪訝な顔をしている。多分ホラーかなんかでも見ちゃって顔面がつったんだろう。温めると良いよと伝えてるとますます変な顔をした。人の好意がわからんとは哀れな奴だ。他人から
後払い制のバスに乗り、他の乗客を眺め「ここは俺の奢りだ、好きなだけ乗れ。」と言い1人バスを降りること。
小さな頃からある才能に溢れた者達がいた。彼らはまさしく天才であり、メキメキと頭角を表していった。才能のない者はただ蹂躙されることしか出来なかった。 それから数年後、ここに1人の青年が集団に絡まれている所から始まる。 「お前じゃ力不足だ。出直してこい。」 「お前ごときがダメさんに勝てるわけないだろ。」 「馬鹿と駄目は違うぞ。あの方を見ろ。」 言われた方に目を向けるとひときわ大柄な男が佇んでいた。 「ヨォ、ルーキー。ああ、名前は要らねえ。どうした、俺に何か用か
周りの人がヒソヒソと俺を見ながらナイショ話をしてるんだけど感じ悪いったらありゃしない。どうも普通の人は犬と会話できないらしいね。俺を不気味に思ってるって訳だ。じゃあ何で俺は犬とお喋り出来るのか、そんなもん俺が知るか。そんなこんなでお爺さんに聴いてみることにした。 「昔婆さんが川で桃を拾ってきたんじゃ。」 川の側で拾われたんかな、まぁ俺の親にしては年を取りすぎだもんな。少し寂しいが仕方ない。 「桃を割ろうとしたらお前が生まれた。」 急だなぁ。何の前触れも
松田「いやー、やっぱり新車は良いなぁ。買って良かった。」 鈴木「おはようございます。」 松田「おはよう。」 鈴木「聞きました?狂信者が出たって話。」 松田「今日新車?ああ!俺もだよ。」 鈴木「松田さんもなんすか!?あんまり自分から名乗るものとは思えませんが。」 松田「別にいいだろそのくらい。それで、今日新車だからどうかしたか?」 鈴木「そのくらいって…。イエ、捕まったって話です。」 松田「捕まったの!?そんだけ
ある家屋の一室に数人が集まっていた。 「今どき首吊りなんてダサいよ、薬物なんかスカッとするぜ。」 「犯罪者として死ぬのはヤだな。やっぱ王道に切腹だよ。」 「自殺って王のすることか?集団切腹なんて絵面がギャグだろ。ここはスタンダードにガスだな。」 「関係ない人を巻き込みかねないしなぁ。だから首吊りだって。」 いい自殺方法はないかとネットを彷徨っていた際に意気投合し、どうせなら心中しようと誰かが言い出したのが発端だ。 「でも首吊りって死んだ後に糞尿垂
朝起きて状況を一瞬で理解した。 テレビを点ける。 顔を洗う。 朝食を食べる。 絵という絵が消えて世界は文字化…いや、文章化していた。 「一体何が起きてるんだ?」 「やっと目が覚めたか。」 「誰だ?いつからそこに居るんだ?」 「誰って、昨日から一緒だったろ。」 「ああ…ところで文章としてしか認識出来ないんだけど何だこれ。」 「やっぱりお前もか、ワンチャン俺だけだったらどうしようかと思った。何科に行けば良いのかもわかんないしさ。眼科?」
スマートフォンと頭を同期することに成功した。画期的な発明だ。 何でそんなことをしたのかと言うと、もちろんカンニングのためだ。他にも理由は色々あるけど、差し当たってカンニングのためだ。 スマホには講義内容のメモや板書の写真なんかも入ってるしネットに繋げることもできる。まさにカンニングのための機械と言っても過言じゃないだろう。 まずは試運転。お腹が空いたので近場の飲食店を調べると店の情報がヒットした。飲食店に向かう最中に腹痛を覚えると、胃薬や病院の検索結果が出て煩わしかっ
「クローン技術を確立した彼に盛大な拍手を!」 大勢の拍手に包まれながら博士は手を振った。 日照り、干ばつ、洪水、温暖化、戦争…世界からほとんど全ての食物がそう遠くない未来に消え去ろうとしていたとき、大きなニュースがあった。 それがクローンの完全なる確立システムである。食糧危機の問題を前に頭を抱えるのみであった世界に一つの答えをもたらした。これで飢餓など未来永劫起こらないと誰しもが思った。 しかし、ときは既に遅く全世界が受け入れるには少し時間が足りなかった。クローンより
道ゆく人に言いたいことがある。 日食だの月食だので何を騒いでるのか。そんなの俺でも出来る。 そもそも名前逆でしょ、何で月が日を隠して日食なんだ。今すぐ月食に改名しなさい、曇りのことを何だと思っているんだ。俺の立場が無いじゃないか。俺なら日食も月食も出来るし何なら空もUFOも食える。 まぁややこしいから仮に雲食と名付ける。鼻で笑った奴の家には雨を降らせてやるから覚悟しろよ。洗濯物があるなら家の中に取り込んでおくことを薦める。 せっかくの日食が曇って見えなかったと言う人
10数年ぶりに祖父母の田舎へ帰省したときの話です。 部屋の整理をしているときでした。埃をかぶったアルバムの中から2人の子供が写っている写真を目にした途端、ひぐらしの鳴き声と共に記憶がフラッシュバックしました。 昔この辺りに同い年くらいの子供が住んでいたのですが、その子が幼い頃に親は亡くなったらしく、 「人は忘れられたときに死ぬんだと思う。だから、まだ、生きてるんだ。」 思い詰めたような顔で言っていました。 その子となんとなく仲良くなり、お別れの日に一緒に
眼鏡派とコンタクト派の争いは熾烈を極めた。 「どうしても行くの?」 「ああ、このままでは眼鏡派に負けてしまう。楽観視している奴も居るが、なし崩しに眼鏡をかけるなんて俺は嫌だ!こんな辺鄙な村ではいつ眼鏡に染まるかわからん。俺は、皆にはずっとコンタクトでいて欲しいんだ。わかってくれ。」 「皆の中に貴方は居るの?眼鏡の貴方を見るのはもう嫌よ!」 「わかってくれよ!なぁ、いいだろ?眼鏡をかけたって別に死ぬわけじゃない。俺は死ぬまでコンタクトだから、約束す
カフェ内で1人の男がぼやいていた。 「ああクソッ、見る目のない奴め。俺の何処が問題なんだよ。」 男は就活に連敗しており、半ば自暴自棄になっていた。 「段々面倒くさくなってきた。もう何もしたくない。人手が欲しいなら企業側から声を掛けてこいよ。」 そこに老人が話しかけてきた。 「もし、少し声を聞いてしまってね。話だけでも聞いてみないか。君にとって良い話のはずだ。」 男は少し考え、ついて行くことにした。 「しかし、こんなところで俺は何をすれば良いんだ?俺に
「実家からお見合いの話がきたんだけど俺はもう好きな人がいるから、告白するまでの猶予をもらったんだ。」 「うん、だから?」 「手伝って欲しい。」 「嫌だ。」 「無視するよ。『月が綺麗ですね』ってあるだろ?真偽はともかく。でも今となっては月並みな表現だと思うんだ。」 「月だけにって言いたいの?」 「和訳したら月が貴方で綺麗が好きにあたるわけだけど、ここまではわかるね。」 「どっちも日本語だけど。」 「そんな些末なことはこの際どうでもいい。問題はプロポーズの言葉だ。
夢を見た。 「君にこれをあげよう。この石を握って見た夢は正夢となる。逆にこっちの石を握って見た夢は逆夢となる。上手く使い分けると良いだろう。」 目が覚めると枕元に逆夢の石があり、正夢の石が手の中にあった。 取り敢えず正夢の石を握って寝てみた。 近所のガソリンスタンドの側で百円拾う夢だった。 目が覚めてガソリンスタンドに行ってみたら夢と全く同じ位置に百円が落ちてた。 これは本物だと思い、次に逆夢の石を握ってみた。 記憶力が上がってテストで高得点を取りまくる