雲食

 道ゆく人に言いたいことがある。
 日食だの月食だので何を騒いでるのか。そんなの俺でも出来る。
 そもそも名前逆でしょ、何で月が日を隠して日食なんだ。今すぐ月食に改名しなさい、曇りのことを何だと思っているんだ。俺の立場が無いじゃないか。俺なら日食も月食も出来るし何なら空もUFOも食える。
 まぁややこしいから仮に雲食と名付ける。鼻で笑った奴の家には雨を降らせてやるから覚悟しろよ。洗濯物があるなら家の中に取り込んでおくことを薦める。
 せっかくの日食が曇って見えなかったと言う人も居るだろう、そのときは多分雲が拗ねてるんだと思う。100円で俺が代わりに怒ってあげるからよかったら連絡してくれ。風向き次第では行けるから。
 ここまで長くなったが何でも飲み込める懐の深さが自慢の俺に不可解なことが起きたんだ、いいから聞いてくれ。
 あるとき変なのが俺に住み着いた。強いて言えばスカイフィッシュとか言うのに少し似てた気がする。羽を広げたコンドル位の大きさですばしっこい奴だったな。懐の深さが仇となったわけだけど、変なのは俺の中で好き勝手に暴れ始めた。痛くも痒くも無いから別にいいけど単純に欝陶しい。カクレクマノミを見習えと思った。
 何が気に入らないのか知らんが変なのは俺の中にやってきた飛行物を次々と襲い始めた。俺を勝手に殺害現場にするな。早よ出てけ。悲鳴を四六時中聞かされる方の身にもなってほしい、断末魔なんてもう聞きたくないぞ。
 すると、地上でも問題になったのか何処かの軍隊がやってきて俺ごと攻撃してきた。俺は無実だ。
 そうして激戦が始まった。俺の中で。
 あわや軍隊が負けそうなそのときだった。ほんの偶然だったんだ。たまたま俺は雨になって地上に落ちていったんだけど、そのとき雲の上は快晴で強い日光に晒された変なのはチリとなって消えた。
 もし俺がもっと早く雨になれてたら被害はグッと減っていただろう。そんなことは不可能だが考えずにはいられなかった。だって海の底にも変なのがいたから。


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