青い恋
10数年ぶりに祖父母の田舎へ帰省したときの話です。
部屋の整理をしているときでした。埃をかぶったアルバムの中から2人の子供が写っている写真を目にした途端、ひぐらしの鳴き声と共に記憶がフラッシュバックしました。
昔この辺りに同い年くらいの子供が住んでいたのですが、その子が幼い頃に親は亡くなったらしく、
「人は忘れられたときに死ぬんだと思う。だから、まだ、生きてるんだ。」
思い詰めたような顔で言っていました。
その子となんとなく仲良くなり、お別れの日に一緒に写真を撮りました。
それから数年後、その子のことを思い出して家を訪ねてみると表札が変わっていました。後で知ったことなのですが、その子はつい先日引っ越したそうです。
その子の言葉を思い出して私は泣き崩れました。その子が今何処で何をやっているのかわかりませんが、数年間私の中でその子は死んでいたのです。今考えると多分好きだったのだと思います。何で自分はそんなことも忘れていたのか、何で自分はこんなにも頭が悪いのか、好きだった子供をまるで自分が殺したかのような罪悪感に囚われていました。そして私は精神を守るために記憶に蓋をしました。
用事を済ませた私は一枚の写真と共に夜の列車に乗りました。
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