文字化

 朝起きて状況を一瞬で理解した。
 テレビを点ける。
 顔を洗う。
 朝食を食べる。
 絵という絵が消えて世界は文字化…いや、文章化していた。
 「一体何が起きてるんだ?」
   「やっと目が覚めたか。」
   「誰だ?いつからそこに居るんだ?」
   「誰って、昨日から一緒だったろ。」
   「ああ…ところで文章としてしか認識出来ないんだけど何だこれ。」
   「やっぱりお前もか、ワンチャン俺だけだったらどうしようかと思った。何科に行けば良いのかもわかんないしさ。眼科?」
   「本でも読んでるみたいだ。テレビが点いてるってことしかわからん。ニュースの内容どころかニュース番組かもわからん。」
   「お前が何を食べたのかもわからないもんな。」
   「あのぅ、ちょっといいですか。」
   「わっ、びっくりした。何だ急に、誰だよ。」
   「すみませんインターホン鳴らしたのですがお返事がなくて、これ回覧板です。」
   「気づかなかった。わざわざすまない。」
   「いえ、いいんです。しかし世界に何があったんでしょうね。皆騒いでるはずなのに声すら聞こえません。」
   「貴方もか。何か新種のウイルスでも流行ってるのだろうか。」
   「何処かの軍事兵器じゃないか。」
   「集団催眠かもしれません。」
    議論は小一時間続き、一人が言い出した。
   「ひょっとして世界が小説になったんじゃないだろうか。」
   「どういうこと?」
   「世界五分前仮説というのを聞いたことがあるんだけど、世界は五分前に作られたというものだ。」
   「そのまんまだね。」 
   「つまり、そういう設定の小説なんじゃないだろうか?」
   「ちょっと待ってください。仮にそうだったとしても誰が主人公なんですか?名前すら出ないせいで誰が何を言ってるかも分かりにくいのに。」
   「そう言えばそうだな。じゃあ違うか。」
   「もしかして全員脇役なんじゃないか?妙に理解が早いし、細かい情報も出ないし。」
   「エキストラだから大雑把なことしかわからんのか、筋は通るな。」
   「そうですかね?どちらにせよ、脇役人生だと知って嬉しいものでもありませんね。」
   「そんなことよりどうやったら終わるんだ。」
   「そりゃまぁ、話しを終わらせるしかないんじゃないの?」 
   「つまりこういうことだな。」
                                                                 完
   
   「おい終わらないぞ。」
   「だってただの脇役だからね。」
   「やはり主人公でないと終わらせられないんですかね。」
   「なら、これでいいだろ。」
                                                                 未完
    
   

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