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〈小説〉腐った祝祭

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お話がとても長いので、一節ずつをここにまとめてみようと思います。 よろしくお願いします。
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記事一覧

小説|腐った祝祭 第一章 1

 サトルは言った。 「なかなか面白い」  本当はそれほど面白い話でもなかった。しかし、それ…

mitsuki
1年前
11

小説|腐った祝祭 第一章 2

 朝食の食卓で、サトルがフォークの先でスクランブルエッグをつついている隣では、ミリアがお…

mitsuki
11か月前
4

小説|腐った祝祭 第一章 3

 子爵家が所有する美術館の新しい展示物披露のため、その日、館は貸し切りになっていた。招待…

mitsuki
11か月前
2

小説|腐った祝祭 第一章 4

 出迎えてくれた警備員に聞くと、客とクラウルは執務室にいるということだった。 「警察は呼…

mitsuki
11か月前
4

小説|腐った祝祭 第一章 5

 パーティーはモルガの自宅ではなく ――何しろ彼女はアパート住まいだったので、ホームパー…

mitsuki
11か月前
2

小説|腐った祝祭 第一章 6

 公邸の居間にたどり着くなり、ナオミはソファーに崩れるようにして座った。 「ああ、緊張し…

mitsuki
11か月前
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小説|腐った祝祭 第一章 7

 サトルは朝七時になると、女中を一人連れてナオミの部屋の前に来た。  自分は廊下で待ち、女中にナオミの様子を見に行ってもらう。  廊下の窓から庭を見る。公邸の裏側にあたる庭だ。本館との間の中庭より広い。  まだ薄暗い朝だった。庭全体に低く靄が立ち込めている。視界が悪いので、遠くに見えるはずの街並みはかき消されていた。  改めて見れば神秘的で美しい庭だ。晴れた日も綺麗だが、朝の気温が急に下がるこの時期は、この靄のお陰で幻想的な雰囲気になる。冬になれば、気温差がさほどでもなくなる

小説|腐った祝祭 第一章 8

 クラウルを従えて、サトルは執務室にこもっていた。  警察の相手や、国から送られてきた文…

mitsuki
10か月前
1

小説|腐った祝祭 第一章 9

 州立孤児院の玄関前では職員が迎えてくれた。  ロビーに入ると二歳から十五歳までの子供た…

mitsuki
10か月前
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小説|腐った祝祭 第一章 10

 ナオミはサトルの用意したものを着てはくれなかったが、自分で持ってきていたワンピースを着…

mitsuki
10か月前
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小説|腐った祝祭 第一章 11

 朝食の後に大使館にやってきたのは、サトルが懇意にしている会員制美容室の女性スタッフだっ…

mitsuki
9か月前
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小説|腐った祝祭 第一章 12

 翌日にはナオミを高原に誘った。  皇太子の所有する土地で、連絡を取ると快く許可を出して…

mitsuki
9か月前
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小説|腐った祝祭 第一章 13

 雨が降っていた。  六時に目が覚めた時にはすでに降っていた。  廊下の窓から外を眺めてい…

mitsuki
9か月前
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小説|腐った祝祭 第一章 14

 靴屋の正面玄関に走りこむ。  馬車は大使館に向かって走っていった。 「本当、寒いわね」 「ほら、言わない事じゃない」  少し濡れてしまったナオミの髪や肩をハンカチで拭いてやる。  すると、ナオミも同じようにしてくれた。  二人はお揃いのキャメルのレザージャケットを着ていた。女に服を合わせるのは珍しくなかったが、お揃いとなると、これは初めてだ。  少し照れくさい気分を味わわされている。  女といて照れるなど、子供の時分以来かも知れなかった。  店に入る前、ナオミはサトルに耳打