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旅と日々

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旅をすることは、息をするということだ。
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#文学フリマ

書けない part.x

書けない part.x

そう、書けないのだ。
今回の書けないはしかし深い絶望を孕まない。
5月のすっきりとした青い空のような書けなさだ。
3週間ほどが経過するので、時節にも合う「書けない」なのがまた面白い。

どうして書けないか。いつもならどうして書けないのかの理由も分からず途方に暮れることが多いけれど、不思議と今回は目星がついている。
僕は人を書けないし、変化も書けない。
だから書けないのだ。

人物が書けない

現在

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広島で靴の音を鳴らす。 文学フリマ広島6前日譚前篇

広島で靴の音を鳴らす。 文学フリマ広島6前日譚前篇

広島に着いた。
2月24日、土曜日のことだ。

新幹線の改札を抜けてコンコースへ至ると、その人の多さに驚いた。
新幹線に乗り換えた小田原駅や途中の名古屋駅では海外の人たちの姿が目立った印象だったけど、
広島では国内の人たち、とりわけ地元の人が多いように思えた。
ただの認知バイアスであることは承知の上でだけど。

僕は広島という街のことが好きだ。

さあ、歩こう。
先日迎えたばかりのOn Cloud

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証とはそういうものだ

証とはそういうものだ

初めてのぞみに乗った。
いや、もしかすると幼い頃に父に連れられて乗ったことがあるかもしれないけれど。というか、電車好きな父のことだから、乗せないわけがない。
だからこう訂正すべきだろう。

初めてひとりでのぞみに乗った。
名古屋駅で乗り換えだった。
しばしホームで待っていると、東京方面の線路の先から新幹線の白いビームがまぶしく見えた。僕は思いがけず心が浮き立った。大して期待もしてなかったのに、のぞ

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だから僕は他人の為に書くのをやめた。

だから僕は他人の為に書くのをやめた。

新幹線に乗っている。
明日開催される文学フリマ京都の遠征のためだ。

小田原駅を出てしばらく経ち、北の峰に新東名と東名の高架が見え、雲に隠れた(大抵この付近を訪ねると隠れている)富士山が主張をし始めたので、まあ静岡のそこらへんなのだろう。





今、僕は小説を書いている。
このたった一行を記すことができたことに、僕は僕の感じる以上の嬉しさを抱いている。
とても、とても。

昨年の今頃は、

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記憶の道、間近の車窓

記憶の道、間近の車窓

急遽、文学フリマ福岡には新幹線で向かうことになった。人生で何度か乗った覚えがあるけど、ここ数年は乗っていなかった。長距離の旅は、車を使っていたからだ。

小田原駅からこだまに乗っている。聞き覚えのある地名を冠する駅まで、あっという間に辿り着き、あっという間に過ぎていく。これがひかりやのぞみだったら、あっと口を開くまでもなくいつの間にか過ぎ去っていくのだと思うと、この乗り物は実に魅惑的だ。

車窓を

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