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「批評の座標」書籍化のお知らせ――まとめに代えて
1.「批評の座標」1年間の連載を終えて
2023年4月に始まった、人文書院note連載「批評の座標――批評の地勢図を引き直す」は、2024年3月第23回をもって連載を終了いたしました。
ここまでご愛読いただいた皆さま、改めまして、ありがとうございました。本企画では、月に2回の記事を1年間連載し、新進気鋭の批評家・ライターの方がたによって、以下の批評家が取り上げられました。
小林秀雄・吉本隆明・浅田彰・柄谷行人・絓秀実・東浩紀・斎藤美奈子・花田清輝・澁澤龍彦・種村季弘・保田与重郎・西部邁・福田恒存・山野浩一・宮川淳・木村敏・山口昌男・柳田國男・西田幾多郎・三木清・江藤淳・鹿島茂・蓮實重彥・竹村和子
⑤韻踏み夫「「外」に向かい自壊する不可能な運動――絓秀実『小説的強度』を読む」
⑧袴田渥美「妖怪演義――花田清輝について、あるいは「どうして批評は面白くなければならないか?」」
⑩後藤護「溶解意志と造形意志――種村季弘と「水で書かれた物語」」
ブランショやバルトなどフランス現代思想を美術批評に輸入し、『鏡・空間・イマージュ』などを刊行するも、44歳で早逝した批評家・宮川淳。彼は絵画の制度を問題にしながら、「見ること」自体をどのように問おうとしていたのか、荒川修作や横山奈美の作品をヒントに探求します。執筆者は、文学と美術を架橋する美術批評・近代文化史研究者の安井海洋です。
⑯「孤児」よ、「痛み」をうめいて叫べ――『鬼滅の刃』と木村敏における自己と時間の再生(角野桃花)
精神病理学の第一人者であり、人間関係の「あいだ」を探る古典的著作『自己・あいだ・時間』等で独自の哲学・人間学を展開した精神科医・木村敏。今回は木村の理論を応用して漫画『鬼滅の刃』を読み解き、「キャラ」や「成熟」と対決しながら、現代社会を生きる「痛み」を掘り下げます。執筆者は、本論考がデビュー作となる角野桃花です。
⑰失われた世界への旅先案内人——山口昌男と出会い直す(古木獠)
中沢新一や上野千鶴子の師に当たり、その後ニューアカとしてデビューしてゆく論客たちの影響源であった山口昌男。文化人類学者の山口は何を「批評」のシーンにもたらし、どのような知の「場所」を模索しようとしていたのか。『近代体操』創刊号にて、山口昌男と親密な交際を有した大江健三郎の作品を参照しながら、「悪場所」の政治思想を論じた近代体操同人であり、憲法学を専門とする古木獠が論じます。
⑱名をめぐる問い――柳田國男『石神問答』において(石橋直樹)
民俗学の祖、柳田國男。吉本隆明や柄谷行人をはじめ、歴代の批評家によって論じられてきた評価の分かれる人物でもあります。知識人との往復書簡集『石神問答』を読み解き、柳田の思想の核心「名への欲望」に迫るのは、「ザシキワラシ考」でデビュー、「〈残存〉の彼方へ」によって第29回三田文學新人賞を受賞した石橋直樹です。
⑲「戦場」から「遊び場」へ――西田幾多郎と三木清の関係性を手がかりに「批評」の論争的性格を問い直す(岡田基生)
独自の哲学体系を創出し「京都学派」と呼ばれる思想の系譜を生み出した西田幾多郎と、西田の『善の研究』に影響を受けながらも時事的な評論及び実践へと次第に開かれていった三木清。二人の関係性から、哲学と批評の緊張関係や「遊び」としての批評のあり方を論じます。執筆者は、宮沢賢治をはじめとして、哲学や文学を批評のフィールドで論じながら、蔦屋書店コンシェルジュとして人文系の学問を社会に開くことを実践している書店員・岡田基生です。
代表作『成熟と喪失』によって現在の批評シーンにおいても存在感のある文芸評論家・江藤淳は、「過去」と「私」をどのように考えていたのか。日本浪曼派を批判した保守派のリアリストとしても知られる江藤の思想を紐解くのは、山田孝雄、蓮田善明など近代の国学を研究している松本航佑さんです。
19世紀のフランス文学を専門とする文芸評論家であり、古書コレクターとしても著名な鹿島茂。パリの風俗、美術と映画、ベンヤミンに吉本隆明と、多岐にわたって語る鹿島のその思考に一貫するものは何なのか。ラップミュージックをはじめとした音楽やファッション、モードなどを横断的に論じてきたつやちゃんが解き明かします。
第22回で取り上げるのは、フローベール研究から出発した仏文学者であり、アカデミズムでも批評の場でも第一線で活躍し続けている蓮實重彥です。『表層批評宣言』等の著作を丹念に読み解きながら、「近代」という観点から蓮實にとって「批評体験」とは何か、今月初めての単著『声なきものの声を聴く――ランシエールと解放する美学』を上梓する美学研究者・鈴木亘が探ります。
㉓「あなた」をなかったことにしないために――竹村和子論(長濵よし野)
「批評の座標」最終回の本論考で取り上げるのは、英米文学者でありフェミニズムの思想家、ジュディス・バトラーの訳者としても著名な竹村和子。日本のフェミニズムに功績を残しながらも早世した彼女の思想を読み解き、その呼びかけに応えるのは、大庭みな子を研究する傍ら在野の編集者・ライターとしても活躍する、長濵よし野です。
各記事を公開するごとに、読者の皆さまからそれぞれ大きな反響をいただき、編集部一同まことに感謝しております。
また、2023年10月には、本屋B&B様にご協力をいただき、本企画と連動したブックフェアを開催することができました。ご関係のみなさま、本当にありがとうございました。
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2.「批評の座標」の今後について――書籍化のお知らせ
そして、note連載やブックフェアの好評を受けて、このたび本企画は『批評の歩き方――これからの人文学の書き手のために(仮)』(人文書院、赤井浩太・松田樹編)と、タイトルを一新して書籍化することが決定いたしました。
これからの書き手は、どのような座標に自身を据え直し、どう批評というフィールドを歩いてゆくことができるのか。これまでの連載記事だけでなく、それに合わせた座談会やブックリスト、ガイドマップなど、あたかも「旅行ガイド」のような形で、批評の魅力が伝わるようにまとめ直す予定です。書き下ろしの新たな内容を盛り込み、ボリュームアップしてお届けいたします。
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『批評の歩き方――これからの人文学の書き手のために(仮)』(人文書院、赤井浩太・松田樹編)は、2024年11月頃に刊行を予定しております。
これまでnoteの連載記事をお読みいただいた方も、そしてまだ読んだことがないという方にも、楽しんでいただける書籍を目指します。
本書を通して、批評の面白さをお伝えできればと思いますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
「批評の座標」編集補助班
赤井浩太・松田樹
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