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路地裏で揺らぐ -内在性解離の当事者研究-

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精神的虐待サバイバーであり、内在性解離を持って生きる僕たちを記録するエッセイを集めたマガジン。10人のパーツたちがそのときどきで思ったこと、考えたことをまとめている。
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#トラウマによる解離からの回復

僕の興味関心は、誰かの無関心【僕とパーツの人生紀行】

僕の興味関心は、誰かの無関心【僕とパーツの人生紀行】

僕たちパーツはひとつの体に同居していながら、性別も性格も興味関心の方向も、まったくもって違っている。

例えば僕は、育児や保育系の本を読むことが好きだ。インテリアに大したこだわりはなく、無難なデザインで、問題なく使えればそれでいい。

一方「パニック少年」は僕と同じ本を、子ども目線や、主が子どもだった頃の記憶と比較しながら読む。ままごとセットを中心に、おもちゃも好きだ。いつか和室の隅におもちゃを飾

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「監理者」と僕【僕とパーツの人生紀行】

「監理者」と僕【僕とパーツの人生紀行】

今日は「監理者」というパーツについて話そうと思う。

正直、僕が直接的に関わることは少ないのだが、遠目から観察しているとおもしろい人だ。

「おもしろい」というのは「興味深い」という意味で。

彼は僕たちの中で「規律」を司っているような人だ。「日常を送る自己」の代理として、長く事務的なことを担ってきた。

まるでビジネスマンのように、のりの利いたスマートなシャツと細身のスラックス、ほどよく爪先の尖

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「主」を何と呼ぶか問題【僕とパーツの人生紀行】

「主」を何と呼ぶか問題【僕とパーツの人生紀行】

「パーツ」たちの存在に気づいたきっかけとなった本の中では、いわゆる「主人格」のことが「日常を送る自己」と訳出されている。

トラウマがあっても仕事に行き、家事をこなし、家族の世話をする――日常生活を送る自分のことだ。

トラウマケアとは「日常を送る自己」でいられる時間を増やし、パーツたちの感情に圧倒されず、それを客観的に見つめて対処すること――と表すこともできるかもしれない。

自己の一部に過ぎな

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家に犬がいる!【僕とパーツの人生紀行】

家に犬がいる!【僕とパーツの人生紀行】

主は犬を飼っている。ちょっと人間くさいトイ・プードルだ。

実は僕は少し前まで、家に犬がいることを知らなかった。

トラウマによって断片化された「パーツ」たちは、トラウマを受けた時のまま、意識内での時間が止まっているという。

だからこそトラウマの記憶が体と心に残り続け、鮮烈なフラッシュバックが起きるのだ。(本の中ではもっと脳神経科学的なアプローチからも、フラッシュバックの理由について解説されてい

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きっかけ【僕とパーツの人生紀行】

きっかけ【僕とパーツの人生紀行】

はじまりは1冊の本だった。

人はトラウマに遭うとある種の解離を起こし、ひとりだった「自分」は「パーツ」に分化するのだという。

これが僕たちに起こっていること、起こってきたことを、一つ残らず説明してくれた。

耐えがたい過去の罪悪感に囚われて死を考えることも、
同時に来週の親しい人との約束を待ち遠しく思うことも、
堅実に人生の計画を考えることも、
その次の日には衝動に任せて計画を全部壊してしまう

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