みすみぞの いずみ

ライター・宮崎に住んでいます

みすみぞの いずみ

ライター・宮崎に住んでいます

マガジン

最近の記事

  • 固定された記事

意味はない

5月の模範解答みたいな空と緑の色、風の匂い。桜の季節には車でいっぱいになるスペースはがらんとしていて、わたしは堂々と真ん中に駐車する。エンジンを切った後、ダッシュボードから取り出したマスクをつけるか否か一瞬だけ悩み、かばんの奥に押し込んだ。 バタンと車のドアを閉めて外に出ると、濃密な5月の空気が鼻の奥まで流れ込む。あまりにてらいのない、ストレートな5月に足元がぐらつく。世の中ってもっと揺らいで、曖昧で、確実なものなんてなかったはずでは。ただただまっすぐな5月がここに存在する

    • ペットボトル選びすら手堅い君

      ホウセンカの花が咲いた。次男が学校で育てていた鉢を持ち帰ってきていたのだ。茎に寄り添うように、葉の根元に真っ白な花びらが幾重にも重なっている。知らなかった。そんなふうに咲くのか。「秋になると種子が弾け飛ぶ」だけだったホウセンカの情報が刷新された。 持ち帰った鉢に、次男は空のペットボトルをジョウロ代わりにしてせっせと毎日水を与えている。ペットボトルは使い込まれ、いつの間にかべっこりと凹んでいた。「別のペットボトルに替えたい」と言うので、それはそうだろうと、資源ごみで集めている

      • いないことにされたくない

        「十分がんばってるよ」と夫から言われて、そうか、と思った。 国保だ住民税だなんだって去年に比べてざくざくとお金が出ていくことになり、なんだか申し訳なくなって「もうちょい仕事がんばるからね!」とわたしが言ったところ返ってきた言葉だ(もうちょい仕事がんばるとさらに国保も住民税も上がるのは置いといて)。 でも、夫にそう言われた後、一瞬なんだかよく分からない感情に包まれた。そしてひと息ついて、そうか私がんばっているんだな、と思った。もちろん自分でもそれなりにがんばっているつもりだ

        • 20年越しに悪態をつく

          車ごと滝に打たれているような雨の中、ハンドルを握りしめて信号待ちをしていると、通りの向かいのガストに配達帰りの店員さんがいるのを見つけた。雨ガッパに雨靴の完全装備で、配達終わりでスクーターから降りたところのよう。「こんな大雨の日に……」と思うと同時にふと蘇ってきたのは、20年前インターネットの片隅に落ちていた文章だった。 かなりうろ覚えだけど、「大雨の日にピザを注文したら、届けにきた店員がまるで子宮から出てきたばかりみたいな顔してた」みたいな内容だったことは間違いない。はて

        • 固定された記事

        マガジン

        マガジンをすべて見る すべて見る
        • 【雑記】
          みすみぞの いずみ
        • 【短歌】
          みすみぞの いずみ
        • 【どこにでもある風景】
          みすみぞの いずみ

        記事

        記事をすべて見る すべて見る

          かごフェス 記

          所用でひとり鹿児島へ行くことになり、偶然にも同日に山形屋で 「かごフェス」が開催されていることを知る。鹿児島のクリエイターさんやこだわりの店が集結するイベントらしい。 「へええ時間あったら行ってみよ」と山形屋のホームページを見ながら考えていたところ、スクロールしていた手が止まった。 まち歩きの達人で田の神さぁに詳しい東川隆太郎さんのトークイベントがあるじゃないか!?!? いそいそとスケジュールを確認し、予定より1本早めの電車で向かうことを決める。 ✴︎ ✴︎ ✴︎ 久し

          金太郎飴的日々を見つめて

          生活というのは、おしなべて淡々と過ぎていくものだ。ドラマのように、3人の元夫から好意を寄せられたり、能楽師の人間国宝である親の跡を突然継ぐことになったりはしない。ふと気づけば、昨日と今日の区別がつかない金太郎飴のような日々が続いている。 だけど、例えば連休明けに苦手な歯医者の予約をうっかり入れてしまっていたり、エンドレスに届くTwitterのスパムを無の表情で報告&ブロックしていたり、よくよく見れば、金太郎飴の断面の表情も少しずつ違うはずだ。 昨日と今日は似て非なるもの。

          金太郎飴的日々を見つめて

          心に海がない

          「オーシャンビュー」と呼ぶにはいささかラグジュアリー感に欠けていたものの、穏やかな入り江のほとりに佇む静かな部屋をわたしはいっぺんで気に入ってしまった。 最新の設備が整っているわけではないし、部屋がそう広いわけでもない。スタッフから熱気あるホスピタリティ精神を感じるわけでもない(褒めてる)海辺のホテル。部屋にベランダはなく(角を切り取ったような外に出られる1/4畳ほどのスペースはあった)、はめ殺しの窓には日がな一日入り江の様子が一枚絵のように映し出され、波の音が途切れること

          野良のライターだからw

          「そろそろ腹括りなよ」と聞こえた気がした。 ◆ こんなことを言うと同業者の方々に叱られてしまうかもしれないけれど、ことさらにライターになりたいと思ってこの仕事を始めたわけじゃない。当時まだ小さかった子どもたちを見ながら家でできる仕事はないかと探していたときに見つけたのが、この仕事だった。 ありがたいことに、そんなわたしでも仕事が少しずつ増えてきた。想定していたよりも仕事の量は増え、幅が広がった。そして、進めば進むほどこの先は沼地が広がっている。 ◆ 原稿が真っ赤にな

          野良のライターだからw

          飼い慣らす不機嫌

          普段は、たいてい、おおむね、機嫌よく楽しく毎日を過ごしているが、3ヶ月に一度ほど、どうにも手がつけられないくらい気分が地を這うことがある。 一瞬でも油断すれば堰を切ってあふれでるであろうドロドロとした気持ちを、どうにか表面張力で内側に留めおく。ときおりつくため息はガス抜きであり、心をかき乱されないよう努めて平静を保つ。たとえ不意に子どもが鉛筆削りのクズを床にぶちまけても、こんなのは想定内だという顔をして。 大丈夫、大丈夫と呪文を唱えるように、そろりそろり、なみなみ注がれた

          飼い慣らす不機嫌

          【短歌】浮つく街を背にして帰る

          南国にも雪が降りまして。ワーイと思ったのも束の間、寒すぎて一歩も外に出たくなかった……しかしこんな日に限って出かける用事が多くて、夕方にはラッシュ渋滞に巻き込まれるし。だけど運転中に1首浮かんだのでヨシとします。 ◆ こちらは冬、霧の深い朝が多いんです。本当に見渡す限りまっしろい闇。列になって登校していく子どもたちは勇敢に霧へと立ち向かう勇者のようだし、散歩中の犬も朝からなんかよくわかんないけどがんばってる。 冬至は過ぎたけれどまだまだ昼が短くて、17時ごろには夜の気配

          【短歌】浮つく街を背にして帰る

          【短歌】「いいね!」と無縁の身軽さいいね

          最近この2冊を読んで、結構な衝撃を受けました。言葉の精度がおそろしく高く、鋭利な刃物を突きつけられたかのよう。 31音にこんなにも可能性があるのかとワクワクする反面、その地平はあまりに広すぎてどこまで到達できるのだろうか……。けれど、とりあえずは趣味なので、「続けるために続ける」ことを目標にしています。 ◆ 昔はあんなに夜が長く、楽しく感じられていたのに、今はもう22時過ぎると完全に心身が寝る体勢に。かといって朝が得意なわけではないので、なんか損している気がする。 実

          【短歌】「いいね!」と無縁の身軽さいいね

          【短歌】電子の海底 無数の「いいね!」

          こちらもすっかり空気が冷たくなり、冬の様相を呈してきました。ちまちまと短歌やっています。 ◆ このご時世、SNSでしかつながっていない人って結構多いと思うんです。最近見かけないなと思っていたアカウントを訪ねたら無効になってるなんてことも珍しくなくて、あの「いいね」はどこに消えちゃったのだろうな。 深夜にかちゃかちゃと仕事していると世界からひとり取り残されたような気分になる一方で夜に守られているような気にもなり、妙な安心感を覚える。なんだろうなあれ。 全然文字数合わせら

          【短歌】電子の海底 無数の「いいね!」

          【短歌】すべてのゴールに光を祈る

          先日、子どもの通う小学校でマラソン大会があって、みんな一生懸命走っていて。自分の子ももちろん大切なんだけど、一人残らずすべての子に幸せになってほしいと心底思った。 子どもと一緒に歩くときにさりげなく手をつなぐと、下の子は嫌がらないんだけど、あと何年つないでくれるのかなと思うとちょっとさびしくなってしまうな。 雨の日にひとり仕事していると雨音とキーボードを叩く音が溶け合っていく気がして。まあそんなサクサクと書ける原稿ばかりではないのだけど。 少し前に庭師さんが刈り込んでい

          【短歌】すべてのゴールに光を祈る

          短歌はじめました

          ここのところTwitterで #1日1短歌 ってことで、短歌つくってます。とはいえ初心者の戯れなので生暖かい目で見守っていただければ幸いに存じます。 で、せっかくなのでnoteにもピックアップしてこうと思います。 ◆ 幼稚園の園庭に隣接する電柱で高所作業車が工事をしているところを、取り囲むように園児たちが眺めていて。直前まで砂遊びをしていたことも忘れて、作業中のおじさんを見つめる子がとてもかわいかった。 キラキラと朝霧に濡れて光る蜘蛛の巣があまりにきれいで、どうにか手

          短歌はじめました

          スーパーが好きだ(2)

          あんなに幅広く老若男女が集う場所、スーパーの他にないんじゃないだろうか。生後数ヶ月の赤ん坊から、文字通り杖をついたお年寄りまで、世代を問わず人間がやってくる。しかも、みんな(おそらくは)一心に食べ物のことを考えているわけで。……よくよく考えれば結構な異空間だ。 ◆ そんなスーパーでじんわりと異彩を放つ存在。それは休日のおじさんたちである。 「奥様に連れられやってきたものの特に用事があるわけでもなく、所在なさげにたたずむおじさん」の姿を数多く観測できるのが休日のスーパーだ

          スーパーが好きだ(2)

          スーパーが好きだ(1)

          スーパーが好きだ。 どれくらい好きかというと、体調のバロメータにしているくらいだ。スーパーに行き、心が踊らないときは、だいたい風邪を引いている。ただし、「スーパーに来ているのに楽しくないはずがない」という正常性バイアスが働き、買い物中に体調の悪さを認識できないのであまり役に立たないバロメータではあるのだけど。 スーパーの何が好きなのだろうと考える。たぶん、半分くらいは消費欲を手軽に満たせるとか、健全に消費の欲望を注げる対象だとかそういう理由が占めている。けれど、単にそれだ

          スーパーが好きだ(1)