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車窓から見えたのは裏側

ひょんなことから、子どもたちだけで電車に乗って祖母の住む街へ行ってみようということになった。1時間に1〜2本ほどのダイヤで、鈍行に揺られる40分ほどのショートトリップ。わたしが出発駅に送り届け、夫が到着駅で迎える算段だ。

こちらは完全なる車社会なので、電車に乗る機会は極端に少ない。乗車経験としては、幼稚園の遠足で乗ったくらいだろう。ただ、長男は昨年旅行で東京を訪れたので、そのときの経験をしきりにアピールしてくる。しかし、「Suicaは使えないの?」と言う始末で(県内のJRでICカードを使える駅はごくごく限られている)、これはしっかりと乗り方を伝えておかねばならない。

駅へ子どもたちを連れて行った。買った切符をなくさないよう財布の中へ入れるまでを見届け、降りる駅を復唱し、復唱させる。「心配になったら運転士さんに聞くんだよ」(ワンマン運行なので車掌さんはいない)とも伝えた。

出発時刻が近づくと、平然とした様子で座っている次男に、座席とホームにいるわたしの元を何度も行き来する長男であり、性格の違いがこんなにも顕著だ。やがて、昭和54年製だというわたしよりも年上の車両は、重低音のうなりを上げ、子どもたちを運んで行った。

40分後、到着予定駅で無事に降りたとの連絡を夫からもらい、安堵する。

夜に子どもと夫が帰宅。感想を求めると「裏側がたくさん見えた」とのこと。「裏側?」と尋ねると、「コンビニとかコメリの裏側」と言う。

なるほど。店舗というのは、道路側を正面に建てられているものだから、確かに車窓から見えるそれらは正面と反対の裏側がよく見えるもんな。

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