0509洗濯カゴの消失

車で1時間半ほどの距離の街まで仕事の用事があり、朝から出かける。国道を走り、山を越える。沿道にはとりどりの緑が冴え渡る。久しぶりに天気もよく、揺れる影すら発光しているようだ。

前の車がハザードランプを消し忘れたままで走っている。後続の私は伝える術がなく、ただ距離をおいて走り続けるしかない。ここはひとつ、「ハザードランプをつけっぱなしで走る車」で、何かうまいこと例えられないかと頭を捻ったが何も思い浮かばなかった。

用事を終えて帰宅すると、すでに子どもが下校していた。洗面所を見やると、何やらビニール袋が床に置かれている。よくよく見ると、子どもが身につけていた服と靴下が入っているようだ。

我が家ではそんなシステムは採用しておらず、なぜ? と思い尋ねると、洗濯カゴが見当たらなかったからだという。ああそうだ、ブラウスのシミ抜きのために、洗濯カゴ(といっても実際には巨大なゴムバケツ)を使って漂白していたのだった。

「脱いだ服は洗濯カゴに入れる」という強固なルーティンから逸脱を余儀なくされ、思いついたのがビニール袋だったというわけなのか。

……愛おしい。愛おしすぎる。

汚れた服が床につかないよう考えあぐねた結果なのだろうな。「洗濯カゴがない! どうしよう……………あ! ビニール袋に入れればいいのか!」という一連の思考まるごと額縁に入れて飾っておきたい。

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