和泉みずほ

エンジニア・システムアーキテクト。短歌を詠む人。 読書量は年300冊以上。 読書傾向は…

和泉みずほ

エンジニア・システムアーキテクト。短歌を詠む人。 読書量は年300冊以上。 読書傾向は主に科学・数学・デザイン・フォント・建築・まちあるき・都市鑑賞・SF・ミステリ・将棋など。 読んだ本を、一冊ごとではなく、二次元の平面上に整理しておすすめする〈読書マップ〉を提唱しています。

記事一覧

私ではない〈わたし〉のための現代短歌(または川柳)

今回は、短歌入門・川柳入門と題された2冊の本を読んで、創作について感じたことを書きます。 まずはこちら、我妻俊樹・平岡直子「起きられない朝のための短歌入門」(書…

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【読書マップ】2023マンガ編 言葉と世界の見方を変える

2024(令和6)年、最初の記事です。 今回は昨年・一昨年から刊行された比較的新しい漫画3作品と、そこから連想をつなげた本で読書マップを作りました。 西尾維新・原作/…

和泉みずほ
3か月前
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これは令和の短歌革命 - 榊原紘 『推し短歌入門』(左右社)

ふだんの記事では、複数の本を〈読書マップ〉という形でまとめて紹介してきましたが、今回は単推ししたい本があります。 それが榊原紘「推し短歌入門」(左右社)です。 …

和泉みずほ
5か月前
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【読書マップ】2023.08 まちまちの文字と人とに魅せられて

2023年夏、7〜8月の読書マップです。 前回の記事と読書マップの説明はこちら。 文字と言葉の歴史スタートはレスリー アドキンズ・ロイ アドキンズ「ロゼッタストーン解読…

和泉みずほ
7か月前
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【読書マップ】2023.06 千年後人類がまだ在るのなら誰か読むかなわたしのノート

久しぶりの読書マップです。 はじめての方に説明すると、読書マップとは一定の期間に読んだ本を、そのテーマや著者などから自由な連想で結びつけ、ひとつの文脈で語るとい…

和泉みずほ
10か月前
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【読書マップ】2022.07 科学的思考、青春記、ときどきネコ

2022年7月の読書マップです。 先月の記事はこちらから。 信仰と科学的思考、ときどきネコ スタートは島田裕巳「宗教対立がわかると世界史がかわる」(晶文社)。 ここから…

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【読書マップ】2022.06 世界を変える言葉のちから

2022年6月の読書マップです。 先月の記事はこちらから。 人それぞれのまんが道スタートは米澤嘉博「藤子不二雄論 FとAの方程式」(河出文庫)。 藤子不二雄A先生といえば…

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【読書マップ】2022.05 多様性とは生きづらさ

2022年5月の読書マップです。 先月の記事はこちらから。 https://note.com/izumi12031/n/n2186b8935cd6 多様性と生きづらさスタートはガイ・ドイッチャー「言語が違えば…

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【読書マップ】2022.04 世界のことば、世界のみかた

2022年4月の読書マップです。 先月の記事はこちらから。 4月もちょっと冊数は少なめですが、「世界」と「言葉」がキーワードの読書マップができあがりました。 世界の歴…

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【読書マップ】2022.03 現存在、生と死と働きかたをかんがえる

2022年3月の読書マップです。 2月の読書マップはこちらからどうぞ。 3月はちょっと体調が思わしくなかったり、仕事が立て込んでいたりで読書量は少なめ。けれどマップにし…

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【読書マップ】2022.02 いつの日か消えてなくなる時までは街へと出よう、人にも会おう

2022年2月の読書マップです。 先月の読書マップは以下の記事をどうぞ。 まちを楽しむスタートは先月の雪朱里「もじモジ探偵団」(グラフィック社)。ヒグチユウコさんが描…

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【読書マップ】2022.01 日常はやがて歴史となってゆく

2022年1月の読書マップです。今年も毎月の読んだ本から連想を広げて、自分なりの「読書マップ」をつくる取り組みを続けていければと思います。 昨年末の読書マップは以下の…

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【読書マップ】始まりも終わりも無き世を生きる人の区切りのために一年はある

2021年(令和3年)も、残すところわずかです。 たくさんの本を読んでいてつくづく思うことは、どの本も、けっきょく書かれていることは人のいとなみ、その結晶としての言…

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【読書マップ】歴史と人のミステリー

2021年11月の読書マップです。 ひとつ前の読書マップは以下の記事をどうぞ。 歴史と人のミステリー スタートは山田正紀・恩田陸「SF読書会」(徳間文庫)。 こちらで取り…

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【読書マップ】ヒトと動物、世界のミカタ

2021年10月の読書マップです。 ひとつ前の読書マップは以下の記事をどうぞ。 コトバ、そして芸術のミカタスタートは川添愛さんの「言語学バーリ・トゥード: Round 1 AIは…

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読書マップダイブ・この本を持ってまちへ出よう

いきなり前回の記事の反省から 前回の読書マップでは「路上観察と建築」という章立てで、「路上観察」が何かをあまり説明せずに藤森先生の本を紹介してしまいました。 こ…

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私ではない〈わたし〉のための現代短歌(または川柳)

今回は、短歌入門・川柳入門と題された2冊の本を読んで、創作について感じたことを書きます。 まずはこちら、我妻俊樹・平岡直子「起きられない朝のための短歌入門」(書肆侃侃房)。 入門といいつつ、まったくの初心者向けというより、既に短歌の実作をある程度経験し、その先のステップを模索している人向けといった趣です。 わたし自身も短歌を詠みはじめて5年ていど、歌会に参加したり、連作の作り方に悩んだり、ちょうど刺さる内容でした。 眠れない夜ならぬ起きられない朝のような対話を通して、お互

【読書マップ】2023マンガ編 言葉と世界の見方を変える

2024(令和6)年、最初の記事です。 今回は昨年・一昨年から刊行された比較的新しい漫画3作品と、そこから連想をつなげた本で読書マップを作りました。 西尾維新・原作/岩崎優次・画「暗号学園のいろは」(集英社ジャンプコミックス)まずは、週刊少年ジャンプ連載作品である「暗号学園のいろは」。2024年1月4日に最新5巻が刊行されたばかりです。 主人公・いろは坂いろはが入学したのは、未来の暗号兵を育成する、毎日が暗号漬けの暗号学園。 暗号によって世界の戦争を停めるため、きょうも謎

これは令和の短歌革命 - 榊原紘 『推し短歌入門』(左右社)

ふだんの記事では、複数の本を〈読書マップ〉という形でまとめて紹介してきましたが、今回は単推ししたい本があります。 それが榊原紘「推し短歌入門」(左右社)です。 冒頭は左右社さんの公式 note で無料公開されています。 この本で言うところの「推し短歌」とは、アニメや漫画のキャラクター、あるいは俳優など現実の人物への、あふれる愛情=推しを原動力にした、あたらしい短歌のかたち。 世に短歌入門書は星の数ほどあれど、このような形でターゲットを絞ったものはおそらく類例がなく、まさ

【読書マップ】2023.08 まちまちの文字と人とに魅せられて

2023年夏、7〜8月の読書マップです。 前回の記事と読書マップの説明はこちら。 文字と言葉の歴史スタートはレスリー アドキンズ・ロイ アドキンズ「ロゼッタストーン解読」(新潮文庫)。ロゼッタストーンによって誰も読めなかったエジプト古代文字が解読される過程を追った本書から、平成初期の日本につなげてみます。 山根一眞「変体少女文字の研究」(講談社文庫)は、昭和末期から平成初期にかけて、10代の女子を中心に流行した独特な(見慣れない人には読めない)丸文字の謎を追っていくノンフ

【読書マップ】2023.06 千年後人類がまだ在るのなら誰か読むかなわたしのノート

久しぶりの読書マップです。 はじめての方に説明すると、読書マップとは一定の期間に読んだ本を、そのテーマや著者などから自由な連想で結びつけ、ひとつの文脈で語るというものです。 前回の記事はこちら。 実は記事にしていなくても読書マップは作っていたのですが、その紹介はまたいずれするとして、今回は2023年5-6月に読んだ本を中心にまとめています。 言語という沼にはまるスタートは釘貫亨「日本語の発音はどう変わってきたか」(中公新書)。古代日本語の発音を文献や中国漢字の研究をもと

【読書マップ】2022.07 科学的思考、青春記、ときどきネコ

2022年7月の読書マップです。 先月の記事はこちらから。 信仰と科学的思考、ときどきネコ スタートは島田裕巳「宗教対立がわかると世界史がかわる」(晶文社)。 ここからリチャード・ドーキンス「神のいない世界の歩き方 『科学的思考』入門」(ハヤカワ文庫NF)につなげてみます。 「利己的な遺伝子」で知られる生物学者による、聖書・聖典に描かれた神や造物主の存在を徹底的に否定する、なかなか危険な書物。 神の恩寵なき世界で、なぜこれほど多様な生物が存在し、繁栄を遂げているのか。ドーキ

【読書マップ】2022.06 世界を変える言葉のちから

2022年6月の読書マップです。 先月の記事はこちらから。 人それぞれのまんが道スタートは米澤嘉博「藤子不二雄論 FとAの方程式」(河出文庫)。 藤子不二雄A先生といえば「トキワ荘青春日記」も復刊されたところですが、まずは生前に出版された「81歳いまだまんが道を…」(中公文庫)を。 手塚治虫に憧れ、のちの藤子・F・不二雄先生と共に上京し、伝説となったトキワ荘で漫画家の夢を叶えた若手時代。 そしてF先生とのコンビを解消したのちも、常に新しい挑戦をし続ける、旺盛な好奇心によって

【読書マップ】2022.05 多様性とは生きづらさ

2022年5月の読書マップです。 先月の記事はこちらから。 https://note.com/izumi12031/n/n2186b8935cd6 多様性と生きづらさスタートはガイ・ドイッチャー「言語が違えば、世界も違って見えるわけ」(ハヤカワ文庫NF)。 多様な世界の言葉を比較した本書のテーマが、マシュー・レイノルズ「翻訳 訳すことのストラテジー」(白水社)でも深掘りされます。 現代ではAIによる自動翻訳もずいぶん進化しましたが、一つの言語から他方の言語へ、まったく同じ

【読書マップ】2022.04 世界のことば、世界のみかた

2022年4月の読書マップです。 先月の記事はこちらから。 4月もちょっと冊数は少なめですが、「世界」と「言葉」がキーワードの読書マップができあがりました。 世界の歴史と芸術スタートは内澤旬子「世界屠畜紀行」(角川文庫)。 革製品への興味が高じ、なぜか世界の屠畜現場を回るというのが内澤さんの独特なスタイル。 同様に、他の誰も真似できないことをやる、誰も行かないところに行く〈辺境作家〉といえば高野秀行さんでしょう。 「世界のシワに夢を見ろ!」(小学館文庫)は、高野作品でも異

【読書マップ】2022.03 現存在、生と死と働きかたをかんがえる

2022年3月の読書マップです。 2月の読書マップはこちらからどうぞ。 3月はちょっと体調が思わしくなかったり、仕事が立て込んでいたりで読書量は少なめ。けれどマップにしてみれば、そんな時だからこそ考えたい重要なテーマが浮かび上がってきました。 進化と絶滅今回は〈世界から〇〇が消えたなら〉というテーマで紹介した2冊の本をスタートにしてみます。 一冊目はアラン・ワイズマン「人類が消えた世界」(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)、もう一冊は筒井康隆「残像に口紅を」(中公文庫)。

【読書マップ】2022.02 いつの日か消えてなくなる時までは街へと出よう、人にも会おう

2022年2月の読書マップです。 先月の読書マップは以下の記事をどうぞ。 まちを楽しむスタートは先月の雪朱里「もじモジ探偵団」(グラフィック社)。ヒグチユウコさんが描く猫探偵の二人が、まちなかにあふれる文字の秘密を徹底的に究明する。スーパーネコの日のあった2022年2月にもふさわしい一冊ですね。 スズキナオさん「遅く起きた日曜日にいつもの自分じゃないほうを選ぶ」(スタンド・ブックス)は、2021年8月の読書マップで取り上げたパリッコさんの本と同じく、行動が制限された宣言下

【読書マップ】2022.01 日常はやがて歴史となってゆく

2022年1月の読書マップです。今年も毎月の読んだ本から連想を広げて、自分なりの「読書マップ」をつくる取り組みを続けていければと思います。 昨年末の読書マップは以下の記事をどうぞ。 懐かしい日々スタートは藤井基二「頁をめくる音で息をする」(本の雑誌社)。 尾道の古本屋店主の日常を描いた本書から、エッセイ、というより随筆と呼びたい本を繋げてみます。 南條竹則「酒と酒場の博物誌」(春陽堂書店)は、古今東西のお酒や酒場にまつわるエピソードが描かれます。 南條竹則さんは、森見登

【読書マップ】始まりも終わりも無き世を生きる人の区切りのために一年はある

2021年(令和3年)も、残すところわずかです。 たくさんの本を読んでいてつくづく思うことは、どの本も、けっきょく書かれていることは人のいとなみ、その結晶としての言の葉なのだということ。 わたしが産まれる、はるか前からこの世界は存在していて、そしてきっと、死んだあともずっと世界は続いていく。 そんな営々とした人のいとなみ(なんと、「営」という漢字自体に「いとなみ」という読みがある!)を、正しく伝えていくために人は本を書き、そして読むのだと思います。 ほんとうは、世界は一

【読書マップ】歴史と人のミステリー

2021年11月の読書マップです。 ひとつ前の読書マップは以下の記事をどうぞ。 歴史と人のミステリー スタートは山田正紀・恩田陸「SF読書会」(徳間文庫)。 こちらで取り上げられていたうちの一冊が、小松左京「果しなき流れの果に」(ハヤカワ文庫JA)です。 早川書房の国内SFレーベル「ハヤカワ文庫JA」、その輝かしき1番目。ちょうど今年(2021年)、ハヤカワ文庫JA1500番台到達記念で復刊されました。 白亜紀の太古、ティラノサウルスが跋扈する中、電話機のベルが鳴り響く…そ

【読書マップ】ヒトと動物、世界のミカタ

2021年10月の読書マップです。 ひとつ前の読書マップは以下の記事をどうぞ。 コトバ、そして芸術のミカタスタートは川添愛さんの「言語学バーリ・トゥード: Round 1 AIは『絶対に押すなよ』を理解できるか」。 言葉をテーマにした本から、「言葉は京でつづられた。」(京都モザイク 7)を選びます。 「檸檬」の梶井基次郎、哲学者の西田幾多郎など、京都にゆかりのある作家・学者だけでなく、中原中也や夏目漱石など京都を訪れた人の残した言葉までを、幻想的な装丁で一冊に。 わたしも

読書マップダイブ・この本を持ってまちへ出よう

いきなり前回の記事の反省から 前回の読書マップでは「路上観察と建築」という章立てで、「路上観察」が何かをあまり説明せずに藤森先生の本を紹介してしまいました。 これでは路上観察学が何なのか、建築とどう関係あるのかわからないですね。反省。 路上観察とはということで、あらためて。 路上観察学のルーツは、建築家・建築史家の藤森照信さんや、芸術家の故・赤瀬川原平さんらが立ち上げた「路上観察学会」です。 〈学会〉といっても、あくまで趣味の集まりなのですが、街中にある建物、植物、