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読書マップダイブ・この本を持ってまちへ出よう

いきなり前回の記事の反省から

前回の読書マップでは「路上観察と建築」という章立てで、「路上観察」が何かをあまり説明せずに藤森先生の本を紹介してしまいました。

これでは路上観察学が何なのか、建築とどう関係あるのかわからないですね。反省。

路上観察とは

ということで、あらためて。

路上観察学のルーツは、建築家・建築史家の藤森照信さんや、芸術家の故・赤瀬川原平さんらが立ち上げた「路上観察学会」です。

〈学会〉といっても、あくまで趣味の集まりなのですが、街中にある建物、植物、マンホールのふたなど、普段は何気なく通り過ぎてしまうものに視点をあてて観察するスタイルは、無数のフォロワーを生み出します。

入口が塞がれて階段だけが残っている〈無用階段〉など、何の意味があるのかわからない物件を〈トマソン〉と名づけたのも赤瀬川原平さんですが、路上観察はトマソンに限らず、およそまちなかにあるものは何でも対象になりえます。

ちなみに「路上観察学入門」のさらに元ネタは今和次郎さんの「考現学入門」とも言われています。
考古学の手法で現代のさまざまな事象を観察・分類するもので、携帯電話も無い時代の人々の行動やファッションなど、その観察記録自体がいまや立派な歴史的価値を生み出しています。

元号が令和になったとき、「今 和次郎」が「令和 次郎」に見えると、ごく一部で話題になったこともありました。何かの入会受付フォームの例にありそうですね、令和次郎。

それはさておき、路上観察学から派生したさまざまな「観察」の本を集めるだけで、本棚がまるごと埋まってしまいます。
しかも、一冊読むたび、次に外に出たとき観察の対象になるものが増えていき、いつも歩いている道がこんなに面白かったのか! という驚きを得られます。

路上観察本あれこれ

まずは路上観察学会のメンバーでもある林丈二さんが専門とする「マンホールのふた」。

現在では、街おこしの一環でご当地マンホールというものが登場し、下水道関連施設などで配布される「マンホールカード」を集めるという楽しみ方も広まっています。

街中の手書き看板、味のある文字をあつめた「タイポさんぽ」。
さらに、その中からひらがなやカタカナを一文字ずつ抜き出した、まちの文字図鑑 「よきかなひらがな」「ヨキカナカタカナ」という本もあります。

道路脇に、何故かきまって片方だけ落ちている〈片手袋〉の謎に迫る「片手袋研究入門」。

公共の場所であるはずの道路にしみ出す、住民たちの園芸活動をひそかに眺める「たのしい路上園芸観察」。

さらに、そんな路上の物件の数々を図鑑の形で詳細かつコンパクトに解説した「街角図鑑」は、地球の歩き方ならぬ「街の歩き方」として必携の一冊。

街中で出会った物件でビンゴを楽しめる「たのしいおさんぽ図鑑」も一緒に持って歩きたい。

ようやく気候の落ち着いた秋、でもまだまだ遠出ははばかられる、そんなときは路上観察学本を片手にまちあるきをしてみましょう。きっと新しい発見が待っています。

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