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ガーディアンズ・オブ・ザ・部屋(編集版)
午前十時に洗面器にぬるま湯を溜める。おれは三人を順番に沈める。どの個体も最初は浮かび上がろうという抵抗がある。おれはそれを押さえつけて彼らの身体をそっと握る。ぬるま湯が洗剤とともに染み込む。そうすると抵抗はなくなる。
最初におれが沈めたのは八歳のときから付き合いのある無口な奴で、仮にB・ベアと呼んでもよい。おれはこいつらの本当の名前を明かす気はない。Bはイギリスのコメディ番組に出演していた。お
アナザー・ライフ・オン(古賀コン お題:アメリカの入学式)
おれは大学の入学式に出席する。パーカーにデニム、フィリップ・K・ディックのTシャツを着たおれは手持ち無沙汰に鞄をぶら下げている。ニッポンジンはおれ一人だ。アジア人差別を受けたらおれは即座にそいつの足を踏みつけて相手の喉に指を突っ込み「おれはニンジャだ。おれの爪に塗ってある毒はCovid-19よりキツいぜ」と言うつもりでいるが、周囲の学生たちは朗らかな雰囲気で、群れながら談笑したり、あるいは孤独だ
もっとみる[小説] 羊飼いの島
踏まれた砂は身を寄せ合って鳴いていた。秋の終わりの風は冷たい。浜辺の先には影法師がひとつ立っていて、それに向かってわたしは歩いた。影法師の隣に立つと、わたしはピーコートのポケットからげっ歯類の頭蓋骨に似た錆びた金具を取り出して、それを影法師に近づけてやった。
「どう?」
影法師はこちらを向いて手をのばしその小さな金属に触れた。撫で回してから自分の上に載せ、身体を揺すって、うまく合わない、でもあり
閃光のハサウェイ 感想
めっちゃ良かったね。
ハサウェイの今後がどう左右されるか、それらをどう乗り越えるか(または乗り越えられないか)。
ハサウェイがマフティーとして戦うことは周りから求められていることだ。ギギはその行動をアップデートして独裁者になれと促す。ケネスは清廉だが幼稚な倒すべき敵としてマフティーを求める。ハサウェイ自身が用意されたリーダーで本当の黒幕ではないとも示唆される。ハサウェイはシャアの反乱で死んで
[小説] 氷が溶けるまでわたしたちは
妻から電話がかかってくる。なんだって? もう一度言ってくれ。オフィスは暖房が効きすぎていて、上着を脱いでも下着が汗で湿る。外では雪が降り積もっている。
「池に落ちたの。一時間もそのままだった。気づかなかった。気づかなかったの」
ベッドに横たわる息子は、生まれたときも予防接種も何もかもこの病院で処置されてきたのだと思い当たる。
「心臓は止まっていました。いまは脈拍が安定しています。冬場の冷た
[小説] 未熟なテロリストと王女の踊り
ダークナイトはテオが生まれる前の映画だけれど、病院が吹き飛ぶシーンを見た瞬間、八歳のテオは以前と変わる。瓦礫と炎で胸がいっぱいだ。庭で爆竹を爆ぜさせても満足できなくて、図書館に行き発破技術の本を手に取る。司書は誰がどの本を借りたか外に漏らすことはないというけれど、テオは棚の陰に隠れてページをめくる。本から顔を上げるたび、図書館中に爆弾が設置されていく。家に帰ったテオは上の空で、それを見た母は戸惑
もっとみるID: INVADED イド:インヴェイデッドの話5 それはそうでしょうね。
ネタバレメモ
ジョン・ウォーカー結局お前かよとか飛鳥井木記が生体部品ていうのは「それはそうでしょうね」という感じで、むしろ素直にそんな描写してきたことがおかしいので、このあとガツンとくるのが準備されてるのは間違いない。だって結局何やろうとしてるのか未だにまったくわからない。
飛鳥井を触媒に殺人鬼作って、飛鳥井の特性を使ってミヅハノメを作って、自分が作った殺人鬼を捕まえさせて、何やりたいんだよ
ID: INVADED イド:インヴェイデッドの話4 文脈とか罠とか
10話の前に予想。
9話を整理する井戸の中の井戸は仮想世界の中の仮想世界か、もしくはマジで過去の世界だ。
意識(魂)だけが過去の自分にタイムスリップしたという展開はありうる。
どっちだ?
鳴瓢は殺人鬼(になる予定者)を殺しはじめた。
きっかけは飛鳥井木記の2つの呪い。夢に侵入してくるジョン・ウォーカー、感覚を共有する能力(当然これらはミヅハノメの機能に重なるがわからんので放置)。
ジョン・ウォ
ID: INVADED イド:インヴェイデッドの話3 古事記木記
8話のあとに考えたこと。
ミヅハノメ・ワクムスビ ミヅハノメもワクムスビも古事記と日本書紀に出てくる神様の名前だけど、2つの書で微妙に血縁関係が異なる描写になっており、『イド』の場合は古事記ベースになっていると思う。理由は古事記だとミヅハノメとワクムスビは双子関係だから。日本書紀だと伯母と甥の関係で『イド』の関係とズレてしまう。
ちなみにミヅハノメは水の神様で、ワクムスビは養蚕と五穀の神様。水
[小説]精神のなんとか
疫病の時代はいつでもあったけれど、人類はそれを乗り越えのだから今度も大丈夫ですよ、と聖バリボル・ハムンクサはおっしゃいます。
「安心なさい」
彼は微笑みます。ですから、わたしはこの五十七歳でトロンとした目つきの善良だが頭の悪い男に反射的に反社会的に素早く手を伸ばし、白髪交じりの髪を左手で掴んで右拳で頬を殴り、殴り、殴る。その動きはまるで『逆襲のシャア』でニューガンダムがサザビーを殴るシーンのよう