新規ドキュメント_2020-02-09_23

ID: INVADED イド:インヴェイデッドの話2 井の中の死んだ蛙

今夜7話ですね。
6話を観たあとに思った舞城王太郎のこと+カエルちゃんについて。

舞城王太郎は容赦しない

・ラストは怒涛の本堂町だったけど、そうだ舞城王太郎はこういうことやるんだった…と思い出した。思わぬ展開で足元が崩れる。容赦しない。

・鳴瓢の娘を殺した殺人鬼タイマンが絡んできたけど、鳴瓢の娘の殺され方がめちゃくちゃエグかったのはいかにも舞城だった。舞城王太郎が繰り返し書いていることのひとつに「邪悪なものは実体を伴って世界に存在する、その邪悪なものは愛する人を脅かす、故に主人公は対決しなければならない」というのがある。アニメでは遺体をキレイな状態に誤魔化して回想するというやり方だったけど、小説であれば直接読まされるので胸くそ悪さがもっと高くなっただろう。

・舞城は愛することへいかに向き合うかも追求しているのだけど、今回は愛の描写はないのか?これはちょっと議論の余地があって、鳴瓢は娘の死をカエルちゃんに重ねているのでカエルちゃんを殺す井戸を作る殺人鬼たちをほぼ自動的に殺す。歪な愛。
富久田は穴を開けた相手たちを井戸の中で家族として扱っている、そして本堂町が自分から穴を開けたことに感謝する。歪な愛。
本堂町が殺した相手は愛と殺意が入れ替わっていた。これも歪な愛。

・本堂町の井戸は変質したかもしれない。自殺者本堂町の首吊りの井戸から、殺人鬼本堂町の井戸に構築され直したかも。穴を開けられたからか?


カエルちゃんと井の中の蛙のこと

・最初に殺されてばかりのカエルちゃんだけど、井戸での重要度がとてつもなく高いことを確認しておきたい。彼女は導き手であり、どの井戸にもいる。ジョン・ウォーカーの対存在か?
「井の中の蛙」は井戸の中でなら蛙が最上位の存在と言えるわけだから(大海は知らないけれど井戸の中なら知り尽くしている)、カエルちゃんもイド=井戸の中では中心にいる。死ぬことでその役割を果たす。

カエルちゃんは殺されることで名探偵を生み出し、謎とヒントを与える。
カエルちゃんが殺されていることで井戸に入った人間はその謎を解く役割を与えられ、名探偵という自我を持つ(「思い出す」と表現される)。
カエルちゃんが井戸にいないと事件がないため名探偵が不要なので、井戸に入った人間は自我を持てない。

自分の井戸に入るとき、その井戸にカエルちゃんは不在なのか?
あるいはカエルちゃんを殺すのは自分だから事件を解く必要がなく、見つけられるのを待つだけの存在になる。
そのせいで戻ってこれないのか?

殺人事件の犯人と名探偵は双方向で互いを喚び出す。どちらが先でも自動的にもう片方が出てくるメタ構造がある。
同じように井戸と蛙も「井の中の蛙」という枠の中では双方向で互いを喚び出す関係だ。蛙がいなければ(もしくは井戸がなければ)蛙のいる井戸はありえないから。

いちいち記憶を失う名探偵は毎回新しくカエルちゃんの死の謎を解くが、これは記憶のない名探偵にとって唯一の事件であり名探偵を名探偵たらしめるもので存在理由となる。カエルちゃんは井戸を支配する存在と見ていい。

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・これは関係ない話だけど
『海辺のカフカ』で少しだけ迷宮の話が出てくる。ギリシャ神話。迷宮は人間の腸と関連し、みんな内部に迷宮を抱えている。

ミノス島の迷宮を作ったのはダイダロスという職人。王妃が雄牛と交わって、牛頭の怪物ミノタウロスを産む。ミノタウロスは迷宮の最奥に隠された。生贄が捧げられるためテセウスという若者がそれを倒す。テセウスは姫アリアドネからナイフと糸玉を渡され、ナイフでミノタウロスを倒し糸によって迷宮を解いた。

役割を考えるなら
ダイダロス→ジョン・ウォーカー
迷宮→井戸
アリアドネ→カエルちゃん
テセウス→名探偵
ミノタウロス→犯人
に置き換えられる。

ダイダロスは製作者(メーカー)だ。王妃は雄牛と交わるために雌牛の模型の中に入ったが、その模型を作ったのはダイダロスだ。ミノタウロスの誕生に大きく関わっている。そしてダイダロスは迷宮を知り尽くしている。アリアドネはダイダロスから迷宮の助言を受けてテセウスを助けた。

カエルちゃんとジョン・ウォーカーは繋がるのか?

古い物語の型は意図しなくても現れるから言及がなければそこまで気にするべきではない。ただ思いついただけ。

ちなみに『海辺のカフカ』はギリシャ悲劇『オイディプス王』をなぞっている(こっちは意図的)。
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・カエルちゃんが井戸で死んでいるのが当たり前になっているから、ちゃんとピンを留めておきたかった。

以上

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