新規ドキュメント_2020-02-09_23

ID: INVADED イド:インヴェイデッドの話3 古事記木記

8話のあとに考えたこと。

ミヅハノメ・ワクムスビ

 ミヅハノメもワクムスビも古事記と日本書紀に出てくる神様の名前だけど、2つの書で微妙に血縁関係が異なる描写になっており、『イド』の場合は古事記ベースになっていると思う。理由は古事記だとミヅハノメとワクムスビは双子関係だから。日本書紀だと伯母と甥の関係で『イド』の関係とズレてしまう。
 ちなみにミヅハノメは水の神様で、ワクムスビは養蚕と五穀の神様。水は井戸と通じるけど、養蚕と五穀はなんでしょうね。糸で編むことから変じて、井戸を構築することにかかるのでしょうか。糸と井戸の読みの繋がり?
 
 ミヅハノメとワクムスビはイザナミ(母)の娘と息子です。面白いのはイザナギ(父)の協力なしで生まれたこと。イザナミがカグツチ(火の神)を生んだときに火傷を負い、苦しみの中で漏らした尿から生まれたのがミヅハノメとワクムスビ。そのあとイザナミは死ぬ。

 つまりイザナミを殺したカグツチが、ミヅハノメとワクムスビの誕生のきっかけです。

 さて『古事記』では死んだイザナミはその後冥界(黄泉)で死の神になりますが、『イド』ではミヅハノメとワクムスビに関わる女性の死者がいますね。
 カエルちゃんです。井の中の蛙。

ここで2つ問題がある。
①カグツチは誰か
②カエルちゃんは何者か

①カグツチはミヅハノメとワクムスビの製作者かと思いきや死んでいるのでジョン・ウォーカーだろう。あとで触れます。

②ここで出てくるのが飛鳥井木記。

 7話と8話で井戸の中の井戸(ミヅハノメの中のミヅハノメ装置)が出てきて、そこに表示されていたのは飛鳥井木記の名前でした。つまり井戸の底には飛鳥井木記が潜んでいる。
 飛鳥井木記の井戸があるということは、飛鳥井木記も殺人鬼(すでに自殺未遂常習者なのは判明済み)であるということです。

 井戸の中の井戸に入ることは地下の地下へ降りることなので、冥界下りに重なります。そこにいるのが飛鳥井木記。
 イザナミは冥界で死の神になってから、1日に1000人殺すことを宣言した。

 つまり、あらかじめ井戸の中にいるという点でカエルちゃんと飛鳥井木記は共通しており、井戸の上層にいるのは殺害された者であるカエルちゃんで、井戸の下層には殺害する者(自分、もしかしたら他者も)である飛鳥井木記がいるという構図になっている。この両面がイザナミに重なる。
 なので2人は同一人物の別の姿と取れる。

下は製作側のミスによるネタバレかもしれない部分があるのでいやな人はとばしてください。

 実はカエルちゃん=飛鳥井木記説はすでに指摘されていて、3話のエンドロールでカエルちゃんのところが飛鳥井木記表記になっているそうです。ミスなのかなんなのか。ただそれでカエルちゃん=飛鳥井木記で終了っていうのはつまらないし、いろいろ拾って考えるほうが楽しい。遊びなので。問題は飛鳥井木記がなぜカエルちゃんになるのかだし。

 はい。

 で、ジョン・ウォーカー。彼がカグツチに該当する場合、飛鳥井木記(イザナミ)から生み出された存在となります。
 飛鳥井木記は自殺未遂を繰り返した。
 ジョン・ウォーカーは、飛鳥井木記の死への渇望から生まれ、死の衝動を与える存在と考えられる。
 (その場合、飛鳥井木記の家族が彼女を損なったという設定があるかもしれない。家族に邪悪なものがいるというのを舞城王太郎が扱うことは多いから)(その飛鳥井木記を損なったものがイザナギのポジションなのか)

 飛鳥井木記を素材としてミヅハノメが作られたとした場合、カエルちゃん同様にジョン・ウォーカーもそこから生じたことになります。ミヅハノメのプロトタイプの話があったけど、その井戸を通じて井戸側から出てきたメタ存在なのでは。
 でもジョン・ウォーカーが飛鳥井木記由来だと(ていうか飛鳥井木記がジョン・ウォーカーの正体でも)、殺人鬼たちの発生と時系列合うのか?

 ということで古事記経由で考えてみた話。本気にしていい内容じゃないな。

 あと百貴をハメた奴とその目的が完全に置き去りだ。

疑問点

・カエルちゃんが飛鳥井木記である場合の問題点は、百貴が気づいていないとおかしいということ。顔が変わっているのか?
 罠だと言ってたので、他の人が知らないことを知っていそう。

・井戸に入る前に名探偵と事件の関係をミステリの構造で説明した富久田。わざわざあの説明があったのは気になる。舞城はああいう「名探偵とは…」をたまに作中に入れるのですが、富久田が危惧していたことがまったく起きず、スムーズに話が進んだのは気がかりです。富久田が井戸に入ったあとに反応がなく、鳴瓢が入ってから井戸端チームが観測できるようになった点もひっかかる。富久田は鳴瓢と同じ井戸に入れているのか?

・異なる井戸から飛鳥井木記の井戸に入って本堂町を救出するのが現在のミッションですが、それが可能な場合、井戸同士はその底で繋がっていることになります。ユングの集合無意識みたいなことでしょうか。

・8話は砂漠の井戸だったけど、鳥が1羽飛んでいてミイラ化した死体もありましたね。
 「飛」んでいる「鳥」がいる「井」戸で「木」乃伊がヒントを「記」す、で飛鳥井木記かと思いました。冗談みたいだけど、こういうのやったことあるんですよ舞城。まぁ違うと思うけど鳥はひっかかる。鳥の姿をしたやつが井戸の犯人では?カエルちゃんより先に干からびてる死体があって、それが犯人なのもおかしいし。

・8話の井戸は百貴の井戸ではないだろうけど、じゃあ誰のものなのか。庭に埋められたミヅハノメ製作者を殺した犯人のものなのか。

ムクのこと

画像1

 今さらなんですが、鳴瓢の娘、椋は読みが無垢に通じてイノセンスの象徴であり、それが邪悪なものに損なわれたというのが主人公の物語の発端。
 鳴瓢はカエルちゃんを椋に重ねていて、それが酒井戸に作用しているけど、カエルちゃん=飛鳥井木記で殺人鬼メーカージョン・ウォーカーの生みの親、もしくは飛鳥井木記がジョン・ウォーカーだとこの構図がひっくり返るからめっちゃ悲しいな。ありそう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?