閃光のハサウェイ 感想

めっちゃ良かったね。


 ハサウェイの今後がどう左右されるか、それらをどう乗り越えるか(または乗り越えられないか)。

 ハサウェイがマフティーとして戦うことは周りから求められていることだ。ギギはその行動をアップデートして独裁者になれと促す。ケネスは清廉だが幼稚な倒すべき敵としてマフティーを求める。ハサウェイ自身が用意されたリーダーで本当の黒幕ではないとも示唆される。ハサウェイはシャアの反乱で死んでいった人たちのために戦うと言うが、しかしその理由も外から与えられたものでしかない。

 ハサウェイはマフティーとして戦う理由を自分のものにしなければならないのだが、組織の黒幕であれ、シャアの反乱で死んでいった人々であれ、クェスであれ、それらによって呪われている。本質を見抜くギギは一見導き手のようだが、ここでギギの誘いに乗ると結局外からもたらされた新たな呪いを受けることになってしまう。
 自分の呪いを解かなくてはならない。自分の答えを見つけなければならない。

 同時にこれはテロリストを扱うことで生じる現実との摩擦をどう解消するかという問題にも繋がる。マフティー・ナビーユ・エリンが「真実、正当な預言者の王」を意味するのは、ISのリーダーが「カリフ(預言者ムハンマドの後継者)」を主張することに重なる。マフティーを名乗る勢力が各地で出てくるのもISと同じ。マフティーの行動は市民に歓迎されていないことは、イスラム過激派のせいで肩身が狭い思いをしているムスリムという構図に当てはめて観れてしまう。こういった合致を無視してテロリストを主人公にした物語を進めることはできない(はずだ)。こうして物語の内と外から呪いに挟まれる。

 ハサウェイは自分の行動が正義であることを信じて動いているのだが、それが突き崩される発言にたびたび遭遇する。調査官から、タクシー運転手から、空港の雑踏から。テロリストは支持されるとこはないとか、頭が良すぎて市民の目線に立っていない1000年先のことより今日のことで手一杯だとか、迷惑なだけだとか。ハサウェイが勝つための、たとえ死ぬとしても何か価値あるものを残すための活路は、これらの声にあるように思われる。これらの言葉を受け取り逡巡することで、彼はわたしたちの世界にいるテロリストをなぞることから抜け出すことができるかもしれない。受け取った呪いを解けるかもしれない。紛い物のガンダムを駆る偽の英雄が一瞬であれ本物になれるかもしれない。ギギという本質を見抜く存在に別の答えを見せなければならない。その下地が準備されている感じはする。

(マンハンターに憤るハサウェイだけど、マフティーの目的「全人類を宇宙に上げる」と噛み合うからマンハンターと対立することはない。マンハンターのボスとの会話でも示されていた。これも市民との敵への意識がズレている箇所なので今後の重要な点に思えるが…
 持続可能な社会を考えなければならない現実に対して、同じ問題を抱えるフィクションの世界の解答が「地球から人がいなくなること」なのはなんだかお粗末な気がする。その世界でそういう思想が出てくるのはわかるけど。だから余計にハサウェイの変化や選択を期待したいところがある。)

*****

 人物の関係は昼に進み、戦いは夜に行われるというのが、正体を隠した関係性と対応してるようでよかった。クスィー対ペーネロペーすごく良かった。ミサイル連打のエフェクトすごかった。ハサウェイは頭が良いしずっと好感がもてた。ケネスは願掛けのためにおれと寝ろとギギに迫ってたのが最悪だった。ギギは勝利の女神扱いされてるけど死神になってケネスに死を招いたらいいと思う。レーンはいい奴。ハサウェイチームがみんな仲良くて楽しいし嬉しい。最後に出てきたハサウェイの彼女はちょっと怖い感じがした。ハサウェイとギギが小声で会話するときの雰囲気がすごくよかった。逃げてるときのギギはヤバかった。今回はクスィーがペーネロペーに勝ったので、次の映画ではクスィーが負けると思う。負けたクスィーを逃がすために、今回クスィーの受け取りに同行した二人のどちらか、もしくは両方が死ぬかも。ペーネロペーの飛行音が鳴き声混ざってるみたいで面白かった。全体的に金がかかってるな〜という豪華さがあってよい。東南アジアの景色も晴れ渡っていて気持ちよかった。暑そうだったね。

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