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”見えない戦い“がそこにある! 答えが見えない世の中で、ひときわ輝くブラインドサッカーの魅力とは?

私は小学校時代3年ほど、とある地元のサッカークラブに所属していた。

中学、高校では特に部活やクラブなどに所属はしていなかったが、気の合う友人とたびたび、フットサル大会(あくまで自分たち基準で)を開催していた。

社会人になってもしばらく続けていたのだが、数年も経つと、若い頃と比べてめっきり開催頻度は少なくなっていった。

しかも最近は、かのウイルスの影響で、以前と比べると気軽に外でスポーツすることも難しくなってしまった。

一方で、余計な体脂肪は、すくすくと成長してしまう。三国志の「髀肉の嘆」ではないが、風呂場で贅肉がついた自分の姿を見た際に、思わずため息が漏れてしまうのであった。


そんな(順調に?)おじさんの道へと歩みを進める私だが、それでも度々テレビで見るサッカーの試合は、いまだに胸躍るものがある。

サッカーのルールは、とにかくシンプルである。

手以外の、主に足を使って、とにかくボールをゴールに放り込んで、試合終了時にどっちのチームが多くゴールを決められたかを競う。言ってしまえば、それだけの競技である。

もちろん、細かいルールはいろいろあれど、突き詰めればそれだけであり、老若男女問わず、多くの人に世界中で愛されているスポーツだ。

普段クラブチームの試合を見ない人でも、代表戦だけは見る、という人も多いかと思う。先日も、日本代表 vs U-24の試合を無観客で実施したり、U-24日本代表 vs ガーナ代表の試合があったりと、何かと話題に事欠かない状態が続いている。


しかし、そんな話題の裏でひそかに、 “とあるサッカーの国際大会” が開かれていたことを、皆さんはご存じだろうか。

それこそ今回ご紹介する「ブラインドサッカー」の国際大会、「Santen IBSA ブラインドサッカーワールドグランプリ 2021 in 品川」である。(※大会は6月5日に、日本は準優勝で幕を閉じている)

また、本大会に対し、当社インソースはシルバースポンサーとして、僭越ながらご支援させていただいた。

実は当社インソースと日本ブラインドサッカー協会は、2018年5月よりパートナー契約を結んでいる。当社の公開講座の提供などで、協会をサポートさせていただいている。

加えて、ブラインドサッカーを活用した体験型研修「OFF T!ME Biz」について、代理販売も行っている。興味のある読者の方は、ぜひお問合せていただければと思う(宣伝です)。


さて、皆さまはそもそも「ブラインドサッカー」という競技について、ご存じだろうか。

「そもそもサッカーとは何?」と思う方は、世の中的には少数でいるかと思うが、「ブラインドサッカーを知らない」という方はまだまだ多いのではないかと思う。

サッカーの各種ルールは、当たり前かもしれないが、フィールドプレイヤー全員「見えている」ことが前提となっている。

それに対して、「ブラインドサッカー」はいわゆる「見えないサッカー」。ゴールキーパー以外が全盲の選手で、アイマスクを装着し、音の出るボールを用いてプレーする競技だ。

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(提供:日本ブラインドサッカー協会/鰐部春雄)

ちなみに私は、当社の広報担当として、6月5日の試合を初めて生で観戦させていただいた。

ここ最近、天候が不安定であった中、その日は幸運にも晴天に恵まれ、強い日差しがピッチ上を常に照らしている状態であった。

また、大会開催にあたっては、ウイルス対策を徹底しており、選手の手の触れるところに対する消毒など、念入りになされていた。

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(提供:日本ブラインドサッカー協会/鰐部春雄)

また今回、当社がシルバースポンサーになったことで、ピッチ上のサイドボードに当社のロゴが掲載された。そのことに少し感動しつつ、手前味噌ながら「なかなか映えるいいデザインだな」と感じながら、キックオフを待っていた。

恥ずかしながら、私はそれまでブラインドサッカーのことを、情報として
知っていただけだった。

しかしこの日、多くの認識が、いい意味で間違えていたことに気づかされた。


まず皆さまも、視覚がゼロの状態で、ピッチ上をどれくらいの速さで走ることができるか想像してみてほしい。

自分だったらドリブルができるのか、果たしてゴールに向かってシュートを打つことができるのか。

私も実際に見る前は、自分がサッカーをかじっていた自負も相まって、「そこそこの速さで移動して」「ちょこちょこっとしたドリブルで」「シュートもフワッとした感じ」なのかと、言ってしまえば「浅い認識」であったと痛感する。

直接試合を見た私は、それが完全な誤解だということにすぐに気づかされた。

プレイヤー同士の衝突も恐れない全力の走り、キレのあるドリブルと、狙いすまされたシュート。それ以外にも、見えているかのような正確なパスや、相手ボールのインターセプト、選手同士の迫力あるぶつかり合い、ゴールキーパーやガイドからの指示の駆け引きなど……

私の想像を超えたスポーツの世界がそこにはあった。

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(提供:日本ブラインドサッカー協会/鰐部春雄)

ダイバーシティ時代とよばれて久しい現代において、まだまだ自分も「障がいのある人向けのスポーツだからこのくらいだろう」「見えないのだからこれくらいだろう」といった、いわゆる「アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)」にとらわれていたと痛感した。

今、コロナでなかなか世界の先行きが「見えない」状態が続いている。ただ、ブラインドサッカーを見ていると、そこには大きな「可能性」があることに、我々は気づかされる。


スポーツとしてまだまだ未成熟がゆえに、これからどんどんブラインドサッカーは進化していくだろう。

ブラインドサッカーはプレーの間、絶えず晴眼者から視覚障がい者の方へ指示出しが行われている。その連携がしっかりとれているかが、この競技において大きな肝となっている。

「コミュニケーションの大切さ」「わかりやすい指示を出すことの大切さ」などは、視覚障がいのあるなしに関わらない、多くの人に共通する事柄だ。

もしかしたら、そうした社会課題・人々の普遍的な悩みを解決する糸口に、ブラインドサッカーはなる可能性を秘めている。かもしれない。

ブラインドサッカーの今後を、引き続き注目していきたい。

(インソース メディア事業部メンバー 松尾)

トップ写真のご提供:
日本ブラインドサッカー協会/鰐部春雄