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深谷市民が初めての「渋沢栄一フィーバー」に直面して

11月11日は渋沢栄一の忌日である。義務教育の9年間、その日の給食は「煮ぼうとう」だった。

「煮ぼうとう」は栄一の好物だったと紹介されていた。なんでも、商売に成功してからも地元に帰れば「煮ぼうとう」を食べたと言う。溢れる金があっても質素な味を懐かしんだと、そんなエピソードを聞いている。


私は埼玉県にある、深谷市に生まれて深谷市で育った。

進学、就職で深谷を出た後、出身地を問われれば「埼玉」とだけ答えた(埼玉県の市の名前など、誰が知っているだろう)。

たまに、「深谷」と答えた時の反応は「ねぎ」だった。深谷ねぎは全国的に有名である。埼玉と言ったらねぎが連想されたのだ。ねぎは深谷だ。ありがたい。

ビジネスや歴史に造詣が深い方からは「渋沢栄一」の名が出た。私は心の底から感嘆して、「よくご存知ですねえ」と言う。渋沢栄一は深谷の生まれだ。

渋沢栄一は、深谷では偉人である。ずっと昔からだ。おじいさんの、おじいさんの時代から。誇るべき偉人であり、栄一の功績は社会科や日本史だけでなく、道徳にも取り上げられていた。

深谷市の児童生徒は「渋沢栄一は偉人である」ということを教え込まれる。渋沢栄一は深谷のどこにでもいる。イラストになって広報誌の角でニコニコしていたり、旗に印刷されパタパタしていたり、小さな像になっていかめしくしていたり。

私は給食から、かの偉人を知ったが、誰でも深谷で幼少期を過ごせばどこかのタイミングで自然と「渋沢栄一は郷土の偉人である」と認識するのである。


しかし全国区の知名度の低さにも徐々に気付いてゆく。テレビで彼の名前はほとんど聞かない。取り上げられればびっくりだ。「即録画」を押す。20秒で終わる。見返すことも無い。年末に消す。

悲しいかな、判官贔屓。「良い人」の「成功者」は娯楽として楽しめない。

深谷市は「渋沢栄一」の知名度を上げようと血の滲むような努力をしていた。渋沢の紙幣化を願って作られた「10万円札」を見た時には涙が出た。


そんな郷土の偉人、渋沢栄一が新一万円札に、本当になるという。驚きだ。渋沢は一万円にふさわしいと思っていた。そう思うのは深谷で育ったからだと思っていた。客観性を持とうとすればするほど、視野が狭くなっていたのかもしれない。

▼盛り上がる深谷駅

深谷駅

渋沢は「日本資本主義の父」とも呼ばれている。尊王攘夷思想を持っていたが、留学を機に西洋文明を取り入れ日本の近代化に大きな貢献をした。

大河ドラマになった今、渋沢の生き方や考え方、経営手腕が注目されている。私は「青い目の人形」(日米児童の友情交流)や、高等教育への深い関わり、仕官した一橋家への忠義など、人間的な情に魅力を感じる。

変化すべきは変化し、変えるべきでないところは変わらない。


私は渋沢が支援した女子教育の一環の大学出身であるため、偶然にも渋沢のエピソードを聞いたことがある。渋沢は寄付の際、一番に名前を書き、多額の寄付金を記した。

さあ渋沢の次に寄付する資産家は、大幅に下げるわけにはいかない。成功したらその分社会へ還元する。並の人間では出来ないだろう。

渋沢は2024年になれば全国に知れ渡る。彼の人間性に倣う人が増えることを願っている。「渋沢のような人であれ」と、幼い頃の教育が消えることなく胸にある。


▼駅前にある「栄一像」。運が良ければ鳩を膝に乗せたり、頭のてっぺんにのせているのを見ることが出来る。

駅前の栄一像

▼尾高惇忠の生家。この2階で高崎城乗っ取りを計画した。当時から変わっていない。

尾高惇忠の生家

▼昔駅前に立っていた栄一。見上げることを前提に作っているので頭が大きい。今は草原を見ている。

昔の駅前の像

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インソースでは現在 “偉人の金言” を基にした研修 を拡充しております。その開発過程で心に残った偉人「渋沢栄一」のエピソードを特選し、こちらのnoteでも先月まで連載しておりました。

本日は、深谷出身のインソース営業担当者 Nさんに、そんな渋沢に関するゆかりの地の写真とともに、「地元の英雄への想い」「深谷市民としての想い」を率直に綴っていただきました。(詩的な書き出しに驚いた方もいらっしゃるのでは?)

今年は渋沢の物語を見聞きすることが多い年ですが、彼の名前を聞いた際には、ぜひ、国を代表する偉人生誕の地である「深谷市」についても、想いを馳せてみてはいかがでしょうか。

本日も最後までご覧いただき、誠にありがとうございました。


▼渋沢栄一に学ぶ、社会人向け研修プログラム「仕事の向き合い方~志を立て、先の見えない時代を突破する」はこちら

▼渋沢栄一の他、孫子や松下幸之助など「偉人に学ぶ研修シリーズ」はこちら

▼先月まで連載していたnote「渋沢栄一に浸る10日間」シリーズはこちら