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映画鑑賞

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2022年11月の記事一覧

2022年 第14回 TAMA映画賞授賞式 雑記

大規模改修を終えたパルテノン多摩 大ホールに、4年ぶりに「TAMA映画賞授賞式」が帰ってきた。
本稿は授賞式を観た私の簡単な個人的雑記である(受賞者の方々のコメント等は様々なメディアで報じられているので、そちらを参照されたし)。

11月26日に開催された今年の授賞式を華々しく盛り上げたのは、何と言っても「いい二朗の日」の主役・最優秀男優賞の佐藤二朗氏であったのは間違いない。

最優秀作品賞は『ハ

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映画『LOVE LIFE』~(2022年 TAMA映画賞最優秀作品賞)

映画『LOVE LIFE』(深田晃司監督、2022年。以下、本作)の最終盤、椅子に腰かけた妻(木村文乃)から言われ、彼女に背を向けて立っていた夫(永山絢斗)がその体勢のまま振り向き、二人の視線が合った瞬間、唐突に「LOVE LIFE」とタイトルが出るのを観て、この静かでさりげない瞬間が、二人のこれからの「LOVE」「LIFE」を暗示しているように思えて身体が軽くなった気がした。

本作開始からこの

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現代だからこそ「未来を信じる力」が刺さる~映画『ハケンアニメ!』~(2022年 TAMA映画賞最優秀作品賞)

映画『ハケンアニメ!』(吉野耕平監督、2022年。以下、本作)は、”今どき珍しい”「熱血お仕事物語」だが、それは「昔流行ったものを今更」という意味合いではなく、それを巧妙に外して「今どきにしては珍しい視点」を持った物語であることを意味する。

この、バトル的要素を組み込みながらも、登場人物全員が揃いも揃って(実は)善人で、誇りを持って真摯に自分たちの仕事に取り組む物語は、テンポの良さと、未熟な主人

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映画を愛する全ての人へ~映画『銀平町シネマブルース』(2022年TAMA映画祭ワールドプレミア・世界初上映)~

西武新宿線本川越駅の改札を出て、交番と喫煙所の前を通り、スクランブル交差点を渡り、川越市観光会館「小江戸蔵里」の前を通りながら「帰りは川越の地酒を試飲して帰ろうかな」などと考え、信号を渡り熊野神社には入らず鳥居の前で軽く会釈をしてどんつきまで歩き、信号も横断歩道もない道路を渡って鰻屋の前を歩き、お好み焼き屋の角を左折し、何屋さんか未だに知らないお店の前に置いてある首のないマネキン人形を見て必ず、「

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映画『まなみ100%』(2022年TAMA映画祭ワールドプレミア・世界初上映)

映画『まなみ100%』(川北ゆめき監督、2023年公開予定。以下、本作)の結末を観て、バンバンのヒット曲「いちご白書をもう一度」(荒井由実作詞・作曲、1975年)の現代版のようじゃないか、と感じたのだが、上映後のアフタートークで本作が川北監督自身の"現在進行形"の「実話」だと知って、当たらずとも遠からずだったと思った。
本作は、2023年2月公開予定の映画で、映画館で観た若い人がどのような感想を持

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共に傷つき共に癒す~映画『渚に咲く花』~

映画『渚に咲く花』(松田圭太監督、2022年。以下、本作)の冒頭、海岸に座って海を眺める一人の女性を観て、『あたしさぁ、返さなきゃいけないモノ、いっぱいあるんだ』という声が聞こえた気がした。
それは、『深呼吸の必要』(篠原哲雄監督、2004年)という映画で、ほとんど刈り終わったさとうきび畑でキャッチボールしている男たちを、やはり座って見ていた川野悦子が立ち上がってキャッチボールに加わり、ボールを投

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王道のアイドル映画~映画『左様なら今晩は』~

好意を寄せている男の子の唇に自分の唇を近づけようとしているヒロインのシーンを観ながら、年甲斐もなくドキドキしてしまった自分に内心苦笑しつつ、何だか久しぶりに「王道アイドル映画」を観たような気になった。
というか、「王道アイドル映画」だなぁと思ってから改めて、映画『左様なら今晩は』(高橋名月監督、2022年。以下、本作)のヒロインである久保史緒里が「乃木坂46」の現役アイドルだと認識したのである。

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映画『窓辺にて』を観ながら思った取り留めもないこと…(感想に非ず)

窓ガラス越しに外を見ながら思う。
今、この窓を開けて外に出るとどうなるのだろう?
それは新しい自分への覚醒だろうか?
宛てのない逃避、或いは逃亡だろうか?
それとも、「死」だろうか?
ガラス窓は鍵を開ければ容易に開き、そこから外に出ることは簡単だけれど、ガラス窓を隔てた外側がたとえ「新しい自分への覚醒」だとしても、きっとガラス窓の鍵には手をかけない。
『せっかくのチャンスだったのに』
『俺もそう思

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「社会の重力」に翻弄される/抗う~映画『やまぶき』~(第4回大島渚賞受賞)

岡山県真庭市。実在するこの地方都市には採石場があり、ヴェトナム人など外国人も働いている。
映画『やまぶき』(山崎樹一郎脚本・監督、2022年。以下、本作)の主人公である韓国人のチャンス(カン・ユンス)もその一人。
韓国の乗馬競技のホープだった彼は、父親の会社の倒産で多額の借金を背負い、苦労の果てに真庭市に流れ着き、人当りと働きぶりの良さを買われて正社員への道が開ける。
彼には、やはり他所から流れ着

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街の小さな映画館が超絶な挑戦をしてしまった話~映画『こころの通訳者たち』~

いわゆる「健常者」と云われる人たちからすれば、単純に「健常者」と「障がい者」とに二分されているように思ってしまいがちだが、「健常者」が様々であるように「障がい者」も様々であり、それらは想像以上に分断され、相互のコミュニケーションに高い壁がある。

近年、障がい者と云われる方々も気軽に映画が楽しめるような取り組みが進んでいる。
客席の車椅子スペースは一般的になりつつあるが、それ以外にも、聴覚障がい者

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2022年10月 酒。読書。観劇。それだけ

私の「note」のプロフィールは、『酒。読書。観劇。それだけ』とそっけない、というか投げやりな一文だが、それで充分説明に足りている。

たとえば、2022年10月……

2022年10月1日(土曜日) 日本酒の日新宿で映画を1本観て、呑みに行く。

2022年10月5日(水曜日)朝倉宏景著『あめつちのうた』(講談社文庫、2021年)読了。
阪神甲子園球場のグラウンド整備で有名な「阪神園芸」を舞台と

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