「しょうがい」いもうと By ET◎

私と暮らすモモちゃんは、じぶんが「知的障害者」にカテゴライズされているなんて、ちっとも…

「しょうがい」いもうと By ET◎

私と暮らすモモちゃんは、じぶんが「知的障害者」にカテゴライズされているなんて、ちっとも知らない。

最近の記事

ご近所に「英会話」が響き渡っていた

午前5時に起きて、 庭に水をまく日々が続いている。 それでも クスの若木は葉っぱを全部落としてしまったし、 イチジクも 実をつけるどころではなく、 大きな葉っぱが茶色く変色している。 ねじりハチマキ…じゃないけど、 ガーゼのタオルを おでこにくくり、 蚊よけネットの上下を着て、 布マスクでホースを握る。 毎日水をまいていると、 近所の人と会うことが増える。 出勤前に洗濯物を干したり、 ゴミ出しをする人たちだ。 親しくしている隣家の人が にこにこしながら「おはよー」と

    • 「まあ、なんて可愛い耳」

      私は 東京オリンピックの真っ最中に生まれた。 大きな赤ちゃんだったので、 なかなか出てこなくて、 母は陣痛で2日間も苦しんだ。 父は産院で待ちながら、 オリンピックを観ていたそうだ。 テレビ嫌いの父は ふだん、テレビを観なかった。 観ずにはいられない心境だったのだろう。 原爆当日に広島市内を横断し、 一時は命が危ないと言われ、 原爆手帳を持っていた父は、 周囲からそれとなく、 「生まれてくる子が無事だといいが…」 と囁かれていたようだ。 被爆した人の子どもは、 無事では

      • コロンブスのゆでたまご

        モモちゃんに野菜を食べさせるため、 毎日、 目を血走らせている。 血糖値を下げる薬は モモちゃんの幸福度が あまりにも下がるので断念し、 入院して 血糖コントロールするというのも、 無理があると思っている。 白米にもち麦を混ぜて炊いて、 カロリーを落とし、 食物繊維をアップ。 カレーにも焼き飯にも、 「これでもか」と野菜を入れる。 自家製ピザにはトマトとタマネギのみじん切りを。 パンはレタスを挟んだ玉子サンド。 この玉子サンドを 何回かつくってみて、 私はがっくりき

        • ああ、どうしようヒロシマ

          昨日、ふと思いついて、 モモちゃんに問いかけてみた。 「モモちゃん、明日は何の日?」 モモちゃんは即答した。 「カラオケ!!!」 そのとおり。 モモちゃん自身の日にち指定で、 8/6はカラオケの予約をしていた。 私が「そうね、カラオケ、楽しみやね。 8/6は、 ほかにも何かの日じゃなかった?」と尋ねると、 モモちゃんは「わからない」と言った。 私が「広島にゲンバクが落とされた日だったね」 と言うと、 モモちゃんは すごくわかりやすくガーンという顔をした。 広島生

        ご近所に「英会話」が響き渡っていた

          「のれんに腕押し」戦法

          ここ1か月くらい、 ほぼ毎日、 モモちゃんは家族くんに 「6時に起こしてちょうだい」と頼んでいる。 そしていつも 6時より前に自力で起きて、 テレビをつけている。 そして6時ごろからは 朝ご飯を食べる家族くんの隣に来て、 ああだこうだ話しかけているようだ。 「カラオケ、明日、来るのよ!」 「シャワーはしません!」 「チョコレートの都合が悪いのよ!」 暑くなってからというもの、 私はその時間、 庭で水まきをしている。 うちの中から、 モモちゃんのワアワア言う声が聞こえる。

          「水分補給を、飲みに来ました」

          シャワーのあとや、 ドラマを観たあとなどに、 モモちゃんにお水を渡している。 「水分補給しようね」 最近はモモちゃんも、 ちょっと意識しているみたいだ。 「水分補給を、飲みに来ました」 とダイニングに来ることがある。 私からモモちゃんへの最初の声かけは、 夏を迎えてしばらくしてから、 シャワーのあとの 「お水、飲んでおこうか」だった。 モモちゃんは とくに「飲まない」という様子でもなかったけど、 私は長々と説明した。 「あのね、 夏は暑いし、シャワーしたら汗をかくで

          「水分補給を、飲みに来ました」

          うちの鳩時計は、時間を尋ねてくる

          2階で片付けをしていると、 階下からパタンと戸を開ける音が聞こえてきた。 モモちゃんが自分の部屋の戸を開けたらしい。 そしてリビングでテレビを観ている 家族くんに話しかけた。 至近距離のはずなのに、 モモちゃんの声は、やたら大きい… モモちゃん「明日、6時に起こしてちょうだい!」 家族くん「ハイ」 会話はそれで終わり、 モモちゃんが部屋の戸をピシャッと閉める音がした。 …かと思うと、 すぐまたモモちゃんの部屋の戸があく音がした。 モモちゃん「おかえりなさい!」 家族

          うちの鳩時計は、時間を尋ねてくる

          出会ったからには、離れられない

          何が人と人を 引き合わせるのだろう? 高校に入って、 同級生が「バンドやろうよ」と言うまで、 私はロックを聴いたことがなかった。 半年後、 ドラムスティックを握って、 人前で演奏をしていたのだから、 人生はわからない。 ラジオを聴いたり、 雑誌を買ったりして、 いろんなミュージシャンのことを 少しずつ知っていったけど、 今はちょっとネット検索しただけで、 来歴とかすぐわかるから、 すんごい昔から知ってるミュージシャンでも、 新しい発見がいろいろあって楽しい。 バンドはと

          出会ったからには、離れられない

          サヨナラが言えないコドモたち

          洗濯機の中からTシャツを取り出し、 広げてみて、びっくりした。 背中の一番上あたりが、 ぽっかりと破れていて、 Tシャツが笑っているように見える。 どんなふうに着たら、こんなになるの? ランドリーバッグに入っていたってことは、 これ、まだ着るの? 帰宅した家族くんに尋ねてみた。 私「あのお、Tシャツの首んとこ、破れてたけど」 家族くん「あ、そーやねん」 「あ、そーやねん」って? やっぱ、知ってたんやね。 私「あのお、これまだ着るの?」 家族くん「あー…どうしようかな

          サヨナラが言えないコドモたち

          おかあさん、いつ天国に行った?

          「おかあさん、いつ天国に行った?」 昨日モモちゃんが 突然、尋ねてきた。 「そうね、いつ行ったと思う?」 と私は返した。 「わからない」とモモちゃんは言った。 亡くなった日も、 お葬式の日も、 モモちゃんは覚えているはず。 でも、 そういえば口に出したことはない。 母が亡くなってしばらくは、 「新しいお母さん、買ってきて」と言っていた。 今年に入ってからは 「新しいおかあさんがいいの、今度は天国にいないおかあさん」 と、つぶやいていた。 モモちゃんが 「天国」と母

          おかあさん、いつ天国に行った?

          「ありがとう」は最強の遺産

          モモちゃんと電車でおでかけするとき、 駅員さんに必ずお世話になる。 駅員さんは、 モモちゃんが車椅子で電車に乗れるように、 わざわざホームまで来て、 一緒に電車を待って、 さらに降車駅に連絡を入れて、 スムーズに電車から降りられるように、 連携をとってくれる。 とてもありがたい。 私とモモちゃんは口を揃えて 「アリガトゴザイマース」とお礼を言う。 モモちゃんと私は まだバスを利用したことはないのだけど、 バスでも同じように、 スロープを用意してもらえるのだという。 バ

          「ありがとう」は最強の遺産

          ヒグマだと思ってください

          モモちゃんとヘルパーさんがトラブると、 モモちゃんのケアもたいへんだけど、 ヘルパーさんへのフォローも必要になる。 福祉サービス専門のヘルパーさんでも、 モモちゃんの支援を、 ハードワークと思う人は結構いるみたい。 キョヒるし。 わめくし。 叩くし。 わけわからないこと言うし。 ましてや一般のヘルパーさんの場合、 モモちゃんとぶつかると、 ヘルパーさんのダメージのほうが 大きくなってしまうこともある。 スーパーでお買い物していたら、 ヘルパーさんから電話がかかってきて

          ヒグマだと思ってください

          苦痛のほとんどは、本人にもわからない

          モモちゃん「大福もちの黒い服、いる?」 私「いるよ」 モモちゃん「アイスキャンディー行こうね」 私「いいよ、行きましょう」 今日も私とモモちゃんは、 トンチンカンな会話を繰り返している。 猛暑だから…じゃなくて、 春夏秋冬、こんな感じ。 キゲンさえ悪くなければ、 こんなトンチンカンも楽しい。 でも、 それは家族の会話だから。 モモちゃんは以前から 「お泊りに行く」と言っていた。 私も本格的に ショートステイという名の「お泊り」について 準備してきた。 でも、 デイサービ

          苦痛のほとんどは、本人にもわからない

          キズつけないで、上手にダマして

          何とかスムーズに おでかけできるようになってきたモモちゃん。 でも、 とにかく暑いため、 帰るころには気が立っている。 「おにぎり、つくってちょうだい!」 うちに戻って、 私もヘルパーさんもクタクタなとき、 モモちゃんから即座にリクエストが入る。 おなかがすくタイミングなので、 休憩するヒマもなく、 おにぎりをつくる準備を始める。 モモちゃんは いつも必ず3つ食べたがるので、 ヘルパーさんに小さめのを3つ頼んだ。 そしたら、 1つ目を食べ終わってすぐ 「おにぎり、いらない

          キズつけないで、上手にダマして

          27時間テレビの長い提供が観たい

          モモちゃんとは日々話し合い、 そしてヘルパーさんには、 「布教」に近いお願いを続けている。 モモちゃんと私とヘルパーさんで、 ひと駅先のショッピングモールに行く。 最近のモモちゃんは 近くにおでかけするだけでも すぐに疲れてしまうので、 あれこれ用事をつくって、 とにかく近距離でも、 こまめにおでかけして、体力を養うようにしている。 とはいっても、 酷暑すぎて「車椅子を押して公園」とかは無理。 やっぱり行き先は、 エアコンの効いたショッピングモールくらいしかない。 モモ

          27時間テレビの長い提供が観たい

          しあわせは、小さくていい

          寝る時間まであと1時間…とか焦りつつ、 キッチンで洗いものをしていると、 モモちゃんの部屋から、 声が聞こえてくる。 「お姉ちゃんはオシゴトをします」 「お姉ちゃんがオシゴトをして、CDを買います。 ゲハハハハハハハ!!!」 その言い方、ねえ、 私がモモちゃんに 働かされているみたいだから!! モモちゃんは自分ではお買い物ができないし、 経済観念もないので、 私にモノをねだる。 「この間、CDを買ったので、お金がありません。 お姉ちゃんがオシゴトをして、 お金をもらっ