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27時間テレビの長い提供が観たい

モモちゃんとは日々話し合い、
そしてヘルパーさんには、
「布教」に近いお願いを続けている。

モモちゃんと私とヘルパーさんで、
ひと駅先のショッピングモールに行く。

最近のモモちゃんは
近くにおでかけするだけでも
すぐに疲れてしまうので、
あれこれ用事をつくって、
とにかく近距離でも、
こまめにおでかけして、体力を養うようにしている。
とはいっても、
酷暑すぎて「車椅子を押して公園」とかは無理。
やっぱり行き先は、
エアコンの効いたショッピングモールくらいしかない。

モモちゃんはおでかけをすると、
必ずトイレに行く。
そして必ず手を洗うとき、
水道の水を手ですくって飲む。

私の目には見慣れた光景だけど、
ヘルパーさんによっては、
「エッ」と思うようだ。
まあね、成人女子が、
トイレの水道の水を手ですくって飲むって、
あまり見ないよね。

ヘルパーさんが慌てて、
「モモちゃん、モモちゃん、
水筒のお水、飲もうか」と声をかけると、
モモちゃんはブゼンとして、
「いらない」と言った。
モモちゃんにとっては、
何十年も繰り返してきた「いつもの行動」であって、
とくに水が飲みたくなくても、
必ずしないと気が済まない。

私といえば、
「人に迷惑をかけたり、
体に害のあることでなければ、たいていOK」
くらいに思っているから、
「あー、いつもしているんで、これ、大丈夫です」
とヘルパーさんに説明した。

せっかく水筒のお水をすすめたのに、
モモちゃんにはキョヒられ、
お姉さん(私)には解説されてしまったヘルパーさんは、
ちょっとヘコんでいるように見えたので、
私はさらに説明した。

「モモちゃん、だいたい2歳から5歳くらいの
感覚してることが多いんです。
水道からお水が飲みたいよお、みたいな。
前は手を洗う前にすくっていたので、
さすがにアカンやろと思って、
洗った手で水をすくうように言いましたけど」

ヘルパーさんの感覚で、
モモちゃんを理解するのはまだまだ難しいんだろうな、
そう思いながらおでかけを続けた。

そういう私も、
モモちゃんのことが、まだまだ、かなりわからない。
ヘルパーさんにも
「なんだかんだ、
まだ一緒に暮らして1年半なんで、私も手探りで」
と言っている。

モモちゃんは毎週、
カレーやハヤシライスをつくってほしがる。

私「一昨日のカレー、まだ半分残ってるよ。
いたまないうちに、今晩くらい、
食べておいたほうがいいと思うけど、どうする?」
モモちゃん「いいと思います!」
そんなふうに
会話がうまくいくこともあるけど、
うまくいかず、
両方がキレることも多々ある。

こないだは、
キレるまではいかなかったけど、
モモちゃんの言っていることが、
なかなか理解できなかった。

その日モモちゃんは
「27時間テレビを観る」と宣言していた。
私は「はいはい」と返事はしていたけれど、
実はそういう長時間の番組は、
ほぼ「つけているだけ」だと知っていたので、
モモちゃんにとっては、
毎年恒例のお祭りみたいなものなのかな?
としか思っていなかった。
番組の内容はわかっていないし、
好きな出演者がいるわけでもなさそうだし。
コマーシャルが楽しいくらい?

ところが番組が終わるころになると、
モモちゃんが急にそわそわしはじめた。
もうすぐ寝る時間なので、
聴きたい曲があったら、
今、聴いておこうよ、
とダイニングで話していたのだけど、
そわそわが止まらない。
27時間テレビは、
モモちゃんの部屋で、つけっぱなしだった。

モモちゃんは急に立ち上がって、
ダイニングのテレビをつけた。

「27時間テレビを観る!」
「27時間テレビを観る!」

いったいどうしたのかと思っていたら、
モモちゃんはテレビ画面にくぎ付けになった。

「提供を観るの!」
「提供を観るの!」

「長い提供を観るの!」
「長い提供を観るの!」

テレビ画面には、
映画のエンドロールのように、
画面の下から上へと
スポンサーの名前が上がっていった。
アナウンサーが、
一つひとつ名称を読み上げていた。

「提供かあ…」
私はまだまだモモちゃんについて、
わかっていないと痛感した。

モモちゃんの
「コマーシャル好き」は子どものころから。
でもそういえば、
「○○の提供でお送りしました」
というアナウンスそのものも、
大好きだった。
27時間テレビなら、
いっぱいアナウンスされるもんね!
それ、待っていたんだよね。

モモちゃんワールドは深いわ~

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