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読みがえり

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読んだ本のレビュー(書評)をまとめています。雑多な書棚ですが、興味があればどうぞ!※注意🚨紹介している本を一度読んでから開くのをオススメします。限りなくネタバレに近いので笑笑
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#哲学

読書:『人間機械論』L.メトリ

読書:『人間機械論』L.メトリ

①紹介

18世紀フランスの医師ド・ラ・メトリによる『人間機械論』(杉捷夫訳、岩波文庫、1957年)を紹介します。比較解剖学に基づき、人間と動物の身体的差異を探る。その過程で人間の精神(=魂)が脳の働きによるものであることを発見した彼の著作(=本書)は当時の宗教界に衝撃を与えました。

②考察

● 「魂は運動の原動力、ないし脳髄の中の感じる力を持った物質的な一部分にすぎないのであり、これは、まご

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読書:『方法序説』R.デカルト

読書:『方法序説』R.デカルト

①紹介

フランスの哲学者ルネ・デカルトによる『方法序説』(谷川多佳子訳、岩波文庫、1997年)を紹介します。いくら物体の存在を疑っても、それを疑う自分自身の存在は疑いきれない。彼が導き出した方法的懐疑は近代合理主義の礎に位置付けられていますが、人間を自然の支配者たらしめてしまったその考えについて私たちは再び議論する必要があるでしょう。


②考察

● 「良識はこの世でもっとも公平に分け与えら

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読書:『ニコマコス倫理学』(下)アリストテレス

読書:『ニコマコス倫理学』(下)アリストテレス

①紹介

哲学者アリストテレスによる『ニコマコス倫理学』(下巻、高田三郎訳、岩波文庫、2009年)を紹介します。前回読んだ上巻の続きですね。古典の中の古典である本書で語られるのは「快楽」、「愛(フィリア)」、そして「幸福」について。どんな話が聞けるでしょうか。


②考察

● 「放埒なひとは、(略)後悔することのないひとである。彼の行動は自分の『選択』に忠実であるところからきているのだからであ

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読書:『ニコマコス倫理学』(上)アリストテレス

読書:『ニコマコス倫理学』(上)アリストテレス

①紹介

古代ギリシアの哲学者アリストテレスによる『ニコマコス倫理学』(上巻、高田三郎訳、岩波文庫、2009年)を紹介します。歴史上初めて「倫理学」を確立した彼の意識は常に「善」とは何かという問いに注がれていました。師プラトンのイデア論を批判し、幸福の意味を追い求めた弟子アリストテレスの哲学。その全容が明らかになります。

②考察

● 「幸福こそは究極的・自足的な或るものであり、われわれの行なう

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読書:『国家』(下)プラトン

読書:『国家』(下)プラトン

①紹介

哲学者プラトンによる『国家』(下巻、藤沢令夫訳、岩波文庫、2008年)を紹介します。前回読んだ上巻の続きですね。政治を行う哲学者に求められる善のイデアとは何か。彼は師ソクラテスの口を借りながら「太陽」「線分」「洞窟」の比喩によってそれを解説します。


②考察

● 「〈善〉の実相(イデア)こそは学ぶべき最大のものである」
➢ このイデアについてプラトンは上記の3つの比喩を用い説明して

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読書:『国家』(上)プラトン

読書:『国家』(上)プラトン

①紹介

哲学者プラトンによる『国家』(上巻、藤沢令夫訳、岩波文庫、2008年)を紹介します。前回読んだ『饗宴』に引き続き、彼の亡き師ソクラテスが主人公として登場。「正義」とは何か。師の口を借りてプラトンはそれを為政者に求められる資質とし、哲学を修めた者による政治の実現を説きましたが、それには疑問の余地があります。


②考察

● 「われわれが国家を建設するにあたって目標としているのは、(略)

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読書:『善の研究』西田幾多郎

読書:『善の研究』西田幾多郎

①紹介

哲学者の西田幾多郎による『善の研究』(岩波文庫、2012年)を紹介します。東洋と西洋。双方の哲学の影響を多分に受けつつ、それらを見事に日本思想に組み入れた西田の語る「善」とは何か。その根底に、通常の経験を超えた「純粋経験」を見出すことができるでしょう。


②考察

● 「自己の意識状態を直下に経験した時、未だ主もなく客もない、知識とその対象とが全く合一して居る。これが経験の最醇なる者

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読書:『饗宴』プラトン

読書:『饗宴』プラトン

①紹介

哲学者プラトンの『饗宴』(久保勉訳、岩波文庫、1965年)を紹介します。愛(エロス)とは何か?誰もが抱きそうな疑問から始まった曲者揃いの酒気帯びディスカッション!最後の話し手ソクラテスは何を語るのか。これより開宴です。

②考察

● 「愛すべきものとは真に美しく、きゃしゃで、完全で至福な者です」
➢ 有象無象の論客5人による戯言を聞き終え、口を開いたソクラテス。ここで彼は以前会った女性

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読書:『人生論ノート』三木清

読書:『人生論ノート』三木清

①紹介

哲学者の三木清による『人生論ノート』(新潮文庫、2011年)を紹介します。本書は23の章で構成されており、中には生きるうえでの困難や生きづらさを打ち砕いてくれる言葉が多々あるかもしれません。どこから読むかはあなた次第。最初に選んだものが、あなたの求めている答えでありますように。

②考察

● 「幸福について考えることはすでに一つの、恐らく最大の、不幸の兆しであるといわれるかも知れない」

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読書:『存在と時間』(下)M.ハイデッガー

読書:『存在と時間』(下)M.ハイデッガー

①紹介

哲学者ハイデッガーによる『存在と時間』(下巻、細谷貞雄訳、ちくま学芸文庫、1994年)を紹介します。上巻の続きですね。下巻のテーマは現存在(=人間)の終末としての死についてであり、これまた難解な内容ですが、誰かを弔ったことのある読者にとっては上巻より読みやすいのではないでしょうか。

②考察

● 「死とは、現存在が存在するやいなやみずから引き受けるあり方(存在の仕方)である」
➢ ハイ

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読書:『ソクラテスの弁明・クリトン』プラトン

読書:『ソクラテスの弁明・クリトン』プラトン

①紹介

古代ギリシアの哲学者プラトンによる『ソクラテスの弁明・クリトン』(久保勉訳、岩波文庫、1964年)を紹介します。神々を信じず、アテネの青年たちを腐敗させた罪で告発されたソクラテスの抵抗と最期。生涯一冊も書物を遺さなかった師が法廷で語ったことを弟子のプラトンが速記者の如くまとめたのが本書です。


②考察

● 「自ら知らざることを知れり」(『弁明』)
➢ かの有名な「無知の知」である。

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読書:『存在と時間』(上)M.ハイデッガー

読書:『存在と時間』(上)M.ハイデッガー

①紹介

ドイツの哲学者マルティン・ハイデッガーによる『存在と時間』(上巻、細谷貞雄訳、ちくま学芸文庫、1994年)を紹介します。内容があまりにも難解ですので読むのに根気がいるでしょう。「ある」とは一体どういうことなのか。その問いは精神的な緊張を伴う極めて壮大な旅の始まりに過ぎません。
 

②考察

● 「われわれ自身が各自それであり、そして問うということを自己の存在の可能性のひとつとしてそなえ

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読書:『新版 エルサレムのアイヒマン』H.アーレント

読書:『新版 エルサレムのアイヒマン』H.アーレント

①紹介

ドイツの政治哲学者ハンナ・アーレントによる『新版 エルサレムのアイヒマン-悪の陳腐さについての報告』(大久保和郎訳、みすず書房、2017年)を紹介します。ナチスの幹部であり、ユダヤ人絶滅の責任者アドルフ・アイヒマンが裁判で語ったこととは。「悪」とは何かという問いに真正面から向き合った衝撃の一冊です。

②考察

● 「概ね直接に死の道具を操った人間から離れれば離れるほど、責任の程度は増大

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読書:『ブッダのことば』中村元訳

読書:『ブッダのことば』中村元訳

①紹介

今日は『ブッダのことば-スッタニパータ』(中村元訳、岩波文庫、1984年)を紹介します。「スッタニパータ」はパーリ語で「経の集成」という意味。バラモンの家系に生まれたゴータマ・シッダールタ(後のブッダ)の残した言葉の数々が、高名な仏教学者・中村元の手により現代に復活します。

②考察

● 「生れによって賤しい人となるのではない。生れによってバラモンとなるのではない。行為によって賤しい人

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