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あの元カノがついに結婚したのだが
「A子、結婚したみたいだな」
僕の元カノのA子が結婚したそうだ。友達からのLINEで知った。
「しかし感慨深いよな、A子が結婚なんて。近い存在だったから妙にリアルでさ」
A子は中学校の同級生であり、僕の人生でできた初めての彼女だった。
「そうだな」
一言返信し、スマホを閉じる。
元カノの結婚報告を耳にするなんてベタなシチュエーション、生きていればまあ1回はあるだろう。
子供の頃、もし自分がその状況になったら、どんな気持ちになるのか考えたりしたものだ。
悲しい気持ちになるのか、嬉しい気持ちになるのか、はたまた虚無感に襲われるのか。どうなるのだろうと。
その時は来た。
僕は、うんこをしていた。
男子トイレの個室で、めちゃくちゃうんこをしていた。
とんでもなく腹が痛くて、気持ちがどうこう考えている余裕は全然なかった。
僕はよく、noteにエッセイを投稿している。
なかでも恋愛に関するエッセイは割と好評で、過去付き合った女性との出来事などはたまに書いたりする。
『あの夜のこと』というタイトルのエッセイは「来世ではあなたと結婚したいです」という一文で終わるのだが、その「あなた」がA子なのだ。
中学時代に1年付き合って別れて、大学時代に成人式で再会して2年付き合って別れて、25歳までの3年間引きずって死ぬ思いをしながらも自分の気持ちにピリオドを打って、来世こそはと願った相手の結婚報告を、僕はうんこ中に耳にしたのだ。
ケツを拭き、パンツをあげてズボンを履く。
うんこを流し終えた僕は、トイレの天井を眺めてこう思った。
あっ、えーっ、あっ、あっ、えーっ。
あぁー、えっ、あーっ。
えっ、あっ、なるほどねぇー。
そっかそっか。
あっ、そっかぁ。
あっ、えっ、あーそっか。
そっか、なるほどねぇー。
えっ?
あぁ!
そっかそっか!
なるほどねぇー!
人生は映画やドラマや漫画ではない。だから時にこういうアンチ・ロマンチックも起こり得る。
当然ながらとっくに気持ちの整理はついていたので全く、全く持って動揺しなかったが、一つ自分の人生における大きな問題を清算できた気がした。
そのきっかけとなる結婚報告をうんこ中に聞けて、変にロマンチックにならずコメディっぽくなったのは、むしろありがたいことだったのかもしれない。
えー、A子さん、この度はご結婚おめでとうございます。末長くお幸せに。
来世でもその方と、ぜひ。
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