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すきを贈りたい小説たち

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記事一覧

華さんの犬

「犬ならいいよ。彼氏は駄目だけど」  と華さんが言ったその日から、俺は彼女の犬ということ…

ジュージ
3年前
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凍えるほどにあなたをください

【カクヨムの『同題異話SR』という自主企画のために、指定されたタイトルに沿って書かれた作品…

ジュージ
2年前
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【小説】日曜日の散歩

石畳の道をふらふらと歩く。両側には石造りの家が並び、家から家へロープが渡されていて、そこ…

あだち
2年前
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【小説】雨が降らなければ

曇り空から雨粒が落ちる前に、目的地にたどり着ければと思っていたけれど、あいにく、途中から…

あだち
2年前
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指を拾う

 わたしが住んでいる築四十年の木造アパートの近くには、わりと大きな川が流れている。その辺…

ジュージ
2年前
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小説|君に贈る火星の

 天文学者の父親と同じく少女は宇宙を愛しています。一三八億年の歴史を想う賢い少女は、他の…

希望に満ちた花が一斉に開くように

深夜に呼び出しを受け、神社で待ち合わせをした 神社には街灯がなく 携帯のこんな灯りさえ眩しい 4月になると満開の桜も 初冬、樹木そのものが影のように黒く しっとりした佇まいが物悲しい 乱視で見る月はバナナのようで 3つの房が軸にぶら下がって光っている それにしても待ち合わせが街灯のない神社 相引きじゃないんだから、と笑った 「マック、開いてなかったんかな」 今、言っても仕方ないし…と待っていた 友人の妹が危篤になったと聞いたのは、夏 都内から隠れるように帰省し、そのま

【小説】夢の中の馬(1303字)

夢の中でおれは馬だった。白馬の王子だったらかっこいいが、正直言って馬は御免こうむりたい。…

守屋聡史
2年前
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掌編小説 | 永い息継ぎ

 雨の日のランチタイムは、やはり売上が芳しくない。PC画面に浮かぶ本部への報告シートに並ん…

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大人になれない僕たちは 第1話 冷めないコーヒーはない

「おいおい、ケガしたんだって」  番組収録で滑って転んだ芸人が骨折し、現場は、早朝からそ…

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夜空の下には僕達しかいなかった

部活はテニス部。都内の男子高に通い、部活をして帰る。 それだけで腹がへる。1日4食から5食。…

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短編小説 「現実の街」

「おれ、悪魔をつくる方法なら知ってますよ」 横川はそう言って、デミタスカップからエスプレ…

西平麻依
2年前
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ショートショート『ヨシダは死にました』

「ヨシダはいねぇのか、ヨシダを出せコラ!」 「ヨシダは、死にました。」 「…………!!!!…

野やぎ
3年前
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アイオカさん

何を捨てているんだろう。 何で捨てるふりしてるんだろう。 何で、こっちに気づかないんだろう。 そういう人なのだ。アイオカさんは。 コーヒーマシーンから出来上がりを知らせる音がして、コンビニの外に出た。 信号待ちをしていると、アイオカさんもコンビニから出てきて私の後ろで立ち止まった。コーヒーが熱い。持ち手を替えたいのに、どうしてか我慢する。右手が熱い。熱すぎる。 信号が青に変わる。人々に巻かれるように、アイオカさんは左に曲がっていく。私は右に曲がっていく。やっとコーヒーを持ち