希望に満ちた花が一斉に開くように

深夜に呼び出しを受け、神社で待ち合わせをした
神社には街灯がなく
携帯のこんな灯りさえ眩しい

4月になると満開の桜も
初冬、樹木そのものが影のように黒く
しっとりした佇まいが物悲しい

乱視で見る月はバナナのようで
3つの房が軸にぶら下がって光っている

それにしても待ち合わせが街灯のない神社
相引きじゃないんだから、と笑った
「マック、開いてなかったんかな」
今、言っても仕方ないし…と待っていた

友人の妹が危篤になったと聞いたのは、夏
都内から隠れるように帰省し、そのまま倒れた
まだ大学生
バイトをギリギリまで掛け持ちしていたという

退院後、友人のご家族は近所に知られたくないと
私に成人用の紙おむつを購入して欲しいと頼んだ
様々な友人にお願いしていると言う
理由に引っかかる部分はあるが、承諾した

「自宅まで持っていくよ」と連絡すると
ひと目につくからと、神社を指定された

友人は私の車に横付けして、しきりに謝る
そんなの、お互い様なのに 

友人は婚活をしており
その話も聞いてほしいと言うことで
境内の階段に座り、温かいお茶を両手に持ち
ぽつぽつ語る友人の話に耳を傾けた

真正面に見えるオリオン座
妹のこともあり、不安だという友人
「何もかもが上手くいかない」
私は答えることができなかった

影のように黒い樹木が、桜の花をつける頃

希望に満ちた花が一斉に開くように
友人や友人の妹へも 
希望が舞い込むよう、境内へ身体を傾け
私は神社の神さまにそっとお願いした