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詩集

43
私の紡いだ言葉たち。 全部のせ。
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#記憶

【詩】ピアノの木

【詩】ピアノの木

白鍵と
黒鍵と
それらがずらりと並ぶ八十八の玉座

そして
沈んだ鍵(けん)の窪みから
人の姿に似た木が芽吹く

ピアノから生まれた木は
母なるピアノに還るべく
八十八の玉座を尋ねる

その軌跡を律とし
隠されたパターンを解き明かした時
かの扉が開くのだ

そして
浮かんだ鍵(けん)の頂から
人の姿に似た木が還っていく

私の耳に残った響きは
その生命の旅路
私の心に残った響きは
その生命の循環

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【発露】居残り授業

【発露】居残り授業

詩を考えれば考えるほど
小学生の頃の
あの授業に引き戻される

よくあるテーマ
ただの授業の1コマ
それが私にとっては
生涯に渡って今も横たわっている大問題

私の授業は終わっていない

あれは50分経ったことを知らせただけのチャイム

いつも
いつまでも
小学生の私がいる

同じ疑問に今も首を傾げている

呆けるまで居座り続けるだろう

ここに帰ってくるたびに思い出す

書かねばと

理解された

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【詩】砂遊び

【詩】砂遊び

僕の手は
ちいさいから
足元の砂を
掬っては
家やら
山やら
団子やら
作っては
はしゃぎ
作っては
こわし
作っては
ひけらかし

黄昏がうんと
背伸びをする

みるみるうちに僕の姿は
大人と呼ばれる形になっ

次第におおきくなっていく手は
たくさん掴めるようになったから

ついめいっぱい広げるものだから
掬いたくないものまで握りしめ

山も森も川も町も人も営みも
節操なく根こそぎ掴み取

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