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詩集

44
私の紡いだ言葉たち。 全部のせ。
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#創作活動

【詩】ピアノの木

【詩】ピアノの木

白鍵と
黒鍵と
それらがずらりと並ぶ八十八の玉座

そして
沈んだ鍵(けん)の窪みから
人の姿に似た木が芽吹く

ピアノから生まれた木は
母なるピアノに還るべく
八十八の玉座を尋ねる

その軌跡を律とし
隠されたパターンを解き明かした時
かの扉が開くのだ

そして
浮かんだ鍵(けん)の頂から
人の姿に似た木が還っていく

私の耳に残った響きは
その生命の旅路
私の心に残った響きは
その生命の循環

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【詩】アドレナリン

【詩】アドレナリン

滾る衝動
行き場を失った紅い濁流が
出口を求めのたうち回る

動脈に蹄を食い込ませ
赤兎馬の如く
地響きのような鼓動

前途洋々駆け巡る
苛烈な神経系
逆立つ感性

灼ける渇きは直線的な軌道
境界が自我を失い
衝迫が徘徊する

昂り
呑まれ
求めよ

赤熱の臓物を抉ると
内なる声が雄叫びをあげ
高々と掲げる

成すべきこと
沸き立つ血潮
脈打つ理想

滾る衝動
出口を見つけた紅い濁流が
一目散に吹

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【詩】ダム

【詩】ダム

堰き止められなかったものが
言葉になってこぼれて
滝のように
勢いよく放水されていく

お日様の機嫌が良ければ
虹がかかるかもしれない
放物線は嬉しそう

その華やかさとは反対に
しずかで
ふかくて
おおきくて
言葉にできなかった
今は何者でもないものたちが

まだかまだかと
外の世界を待って
このダムの裏側で
たっぷりと
ためられていく

ぼくのすみか
だったばしょは
とうのむかしに
そいつらの

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