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エッセイを集めたマガジンです。
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2016年11月の記事一覧

【エッセイ】ゆずの唄とあのころの私

【エッセイ】ゆずの唄とあのころの私

自分の好きなものについて語る、というのは、本当に難しいと思う。どんなに言葉を重ねても、正しく「どうして好きか」を言い表すのは、ひどく困難だ。書き連ねた言葉から、零れ落ちていってしまうものがたくさんあって、結果、上手く言えない自分にがっかりしてしまったりする。それでも今日は心の底からがんばって、かつ慎重に「わたしの好きな歌」について語りたい。

中学三年生のとき、ラジオ「ミュージックスクエア」をなが

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【エッセイ】祖父と東京大空襲

【エッセイ】祖父と東京大空襲

映画「この世界の片隅に」を先日夫と見てきたのだけど、戦時中の話なので、思わず祖父母の生きてきた時代を重ねて鑑賞してしまった。祖母は結構ちゃきちゃきとしたところもあるので、映画の主人公のおっとりしたすずとは性格は違うけれど、映画に映された昭和の時代、戦争の時代の匂いをかいで、若い頃の祖母を思った。

「この世界の片隅に」は夫と見たいねと封切られた頃から言っていたのだけど、石川に上映館がなかったので、

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【エッセイ】こんな格好で働いてます

【エッセイ】こんな格好で働いてます

みなさんは、仕事のとき、どんな服装をしているだろうか。私の職場には制服がないので、もっぱら私服で一日の仕事をしているのだが、今日はそれにまつわる話を書こうと思う。

いまの職場に来る前、三か月ほどあるお店で働かせてもらったことがあった。そこも、服装自由(ただしお店の雰囲気に合うコーデで)というものだったのだけど、働いて初日に、お店のトップの人が視察に来ていて言われた。

「かがんだとき、背中が見え

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【エッセイ】冬はとり野菜みそで!

【エッセイ】冬はとり野菜みそで!

高校時代の同級生で、今は東京に住んでいる友人から、電話がかかってきた。

「雪が降って寒いよー!今年もとり野菜みそ送って!ノーマルとピリ辛と両方ほしいなあ」

「了解!どのくらい送る?」

「おまかせでいいよー!」

という会話をしたのが昨日の朝のことで、さっそくその日の夕方、仕事帰りにスーパーで彼女のために、ノーマルのとり野菜みそと、ピリ辛のとり野菜みそを3袋ずつ仕入れる私。今日の朝、レターパッ

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【エッセイ】少しずつ学びたい

【エッセイ】少しずつ学びたい

自分がものを書くとき、こういう文章を書けたらいいなあと憧れるのは、たいていもう鬼籍に入られた方か、年配の女性作家の方が多くなってきた。先週本屋で新潮文庫を数冊仕入れたが、そのラインナップは「杉浦日向子/お江戸でござる」「白州正子/私の百人一首」「塩野七生/イタリアからの手紙」といった顔ぶれだ。

清冽な岩清水のような、味わいぶかい清酒のような、心の奥底まですうっと染みていく文章を書ける方々ばかりだ

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【エッセイ】港町の味

【エッセイ】港町の味

輪島という能登半島の港町に育ったせいか、魚を食べるのが好きだ。お刺身はとりわけ大好物だけれども、最近は煮魚もしみじみ美味しいと感じる。夫が無類の肉好きのため、一週間の三分の二は、食卓のメインは肉料理となってしまうが、週に二回ほど、私の好みで魚を買い求めては、調理している。

煮魚や焼き魚を出したときの反応があまりかんばしくない夫だが、そんな彼も喜ぶ魚料理が、アクアパッツァである。季節も冬近くなり、

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