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著…小野不由美『残穢』

 『鬼談百景』のすぐ後に読むのがおすすめの一冊。

 ※注意
 以下の文は、結末までは明かしませんが、ネタバレを含みます。


 創作にはお決まりの「この物語はフィクションです」といった一文。

 それが、この小説にはありません。

 この小説の語り手である小説家のプロフィールは「かつては、小学生から中学生向けの文庫レーベルにホラーのシリーズを持っていた」、「夫も同業者」、「私が通っていたのは浄土真宗系の大学」、「出身地は大分県に含まれる」。

 それはまさに著者のプロフィールそのもの。

 この小説には、仮名の人物たちの他に、平山夢明さんや福澤徹三さんといった実在の作家たちが登場し、物語に関わっていきます。 

 …実話なのか、それともフィクションなのか。

 読めば読むほど、ページを捲る度にだんだん現実との境目が判らなくなって…、自分も怪談の世界に迷い込んだような気分になっていきます。

 『残穢』は、語り手である小説家のもとに読者から怪談が寄せられ、それに似た怪談がかつて別の読者から送られてきたことに小説家が気づくところから物語が始まります。

 そこから、怪異の正体を探るべく、過去にそこで不幸な死を遂げた人が居なかったか、どんな建物がありどんな人たちがそこに居たのかといった土地のルーツを、今世紀、前世紀、高度成長期、戦後期、戦前、明治大正期まで遡っていきます。

 そして、「感染」という分かりやすい表現を用い、穢れに触れると穢れに感染する。たとえお祓いをしたとしても穢れが残ってしまうことがある。それが残穢である。人によっては感染しないこともあるが、穢れに触れた者や物が別の場所へ行ったり他人と関わると、その場所や他人もまた穢れに感染し、その穢れがやがて新たな怪異となる…という話が展開していきます。

 だから『残穢』を読むと、自分が今住んでいる場所のルーツを知りたくなり、同時に、知るのが怖くなってきます。

 これから読むという方は是非、『鬼談百景』を読んですぐ『残穢』を読んで下さい。

 読めばその理由が分かるから…。



 〈こういう方におすすめ〉
 全身が粟立つ恐怖体験をしてみたい方。

 〈読書所要時間の目安〉
 二時間前後。

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