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著…ニール・ゲイマン 訳…金原瑞人、中村浩美『コララインとボタンの魔女』

 大人が読んでも怖い児童書。
 子どもが読むとトラウマになりそう。
 しかし、自分の身を守るための教訓となるダークファンタジーだと思います。

 ※注意
 以下のレビューには、結末までは明かしませんがネタバレがあります!






 この物語の主人公コララインの家には、奇妙なドアがあります。
 昼間は単なる古いドア。
 しかし、夜になると異世界に繋がる不気味なドアへと変貌します。

 ドアの向こうには暗い廊下があります。
 その廊下を歩いていった先には、「あなたを愛しているわ」と優しく甘い言葉で子どもを安心させて喰い殺す「ボタンの魔女」とその手下たちが棲んでいます。

 「ボタンの魔女」はまるで誘拐犯のよう。
 子どもに微笑みかけ、いかにも善意で親切をする振りをして、嘘をつき、子どもが逃げられないようにしつこくまとわりつく…。

 この物語の主人公コララインは聡明な上、お守りを持っていました。
 だから、この魔女が危険な存在だとすぐに見抜けたけれど、残念ながら少なくとも3人の子どもたちが既に魔女に殺され、魂まで奪われていました。

 この3人の幽霊がコララインの逃亡のきっかけをくれるのですが、魔女は、

 「まともな頭のもち主なら、幽霊のいうことなんて信じないわ。幽霊は大嘘つきなんだから」
(P127〜128から引用)

 とコララインに笑いかけるのです。

 わたしはこのセリフに鳥肌が立ちました。

 いかにもそれが真実であるかのように、スラスラと嘘を吐く魔女。
 もしコララインがこの嘘に騙されてしまったら、この物語は大きく変わっていたことでしょう…。

 世の中には「信じるべき人」と「信じてはいけない人」がいます。

 「信じるべき人」を選べたら、子どもは生き延びられる確率が高まります。
 …でも、もし「信じてはいけない人」を信じてしまったら…。
 後者を想像するとゾッとします…。

 この物語の場合、コララインにとって「信じるべき人」は幽霊たちであり、「信じてはいけない人」はボタンの魔女。

 この物語はとても恐ろしいのですが、信じる相手を間違ってはいけないという教訓になる物語なので、是非多くの方に読んで欲しいです。

 現代の現実世界にも、甘い言葉で人を騙そうとする「魔女」は沢山居るのですから。

 教訓はお守りになってくれるはず。

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