宿屋ヒルベルトのコワイヤ!

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宿屋ヒルベルトのコワイヤ!

実話、創作、真偽問わず、怖くて変でイヤ~な話を集めていくページです。よろしくね! ※公開している怖い話の朗読などの二次利用は商用・非商用問わずオールOK、コメント等でご一報くださいませ。 竹書房さま刊『恐怖箱 呪霊不動産』(加藤一先生編)に怪談載せていただきました!買ってね!

最近の記事

『怪の産声』刊行記念!宿ヒルの好きなやつ発表~!

『呪録 怪の産声』が刊行されました! こちら、2022~23年の竹書房さんの「怪談マンスリーコンテスト」で、最恐賞もしくは複数回佳作に選ばれたメンバーが招集され、受賞作+15ページ分の書下ろし作品を収録したアンソロジーです。 現時点の最新の受賞者陣ということで、帯には「怪談新世代」なんて惹句が書かれたりしています。 執筆陣のひとりで先日、刊行記念イベントでもご一緒した雨森れに先生が、執筆者ごとのオススメ作品を紹介していてその中で宿ヒルも褒めてもらって嬉しかったので、販促に

    • 【実話怪談】オーダーメード

       園絵さんが、小学校の四年から五年に上がる春休みのことだそうだ。  午前三時を回った深夜、園絵さんはふと目を覚ました。  そして、なぜか「電話が来る」という確信めいた予感を抱いて、母親が一緒に眠る寝室を抜け出して居間に行くと、そこではかったように固定電話が鳴った。  園絵さんが出ると、優しそうな男性の声が名乗りもせずこう尋ねてきた。 『お届けする人形ですが、男の子と女の子どちらがいいですか?』  園絵さんはそこで、自分が人形を注文していたことを”思い出し”、女の子がいい

      • 【実話怪談】かりそめの家

        『ちょっと様子を見てきてよ』  電話で田舎の母から頼まれ、柊介さんは久しくたずねていない叔父――母の弟の武治さんの自宅を訪れた。  二年前に妻子をいっぺんに亡くして以来、武治さんは経営していた設計事務所を畳み、家に籠りきりになっていた。柊介さんのお母さんは心配して月に一度は電話していたようだが、それもこの二か月ほど音信不通だったらしい。  普通の死に方ではなかった。彼の奥さんは夫の暴力から逃れるため、ふたりの息子を連れて家を出て行き、その車がガードレールに突っ込んだのだ。

        • 【実話怪談】雪だるま家族

           十年ほど前、あの関東一円が大雪に見舞われた二月のことだ。  その夜、木下さんは濡れた靴の冷たさに顔をしかめ、やっとの思いで家路についた。足が埋まるほどの積雪は、木下さんが今の家に引っ越してからは初めてだったそうだ。彼の家は建売で、袋小路をコの字に囲んで各辺に二軒ずつ、六軒の住宅が並ぶ分譲地だった。  帰ってきた自宅の塀の上に、小さな雪だるまが三つ並んでいるのを木下さんは見つけた。顔も手もない、大小の雪玉を重ねただけの素朴なものだ。高さ十センチほどのものが二つと、その真ん中

        『怪の産声』刊行記念!宿ヒルの好きなやつ発表~!

          【実話怪談】花ことば

          「八浦くんって朝は強い方? ちょっとしたバイトを頼めないかな」 大学二年の四月だった。みんな酔いも回って場の緩みきった新歓コンパの二次会で、隣になった先輩の叶絵さんからそんな風に誘われた。 「知り合いが育ててる花の鉢植えを、二週間ばかり預かってほしいのよ」 なんでも、その人が長期出張で家を空けることになり、叶絵さんが世話を引き受けたものの、今度は彼女も急遽、鹿児島の実家に帰らねばならなくなったらしい。知り合いというのはお金持ちで、一万円の日当を出すと言っているという。二

          【実話怪談】花ことば

          【実話怪談】最高の名前

          青葉さんと春花さんは一卵性双生児だ。 ふたりは仲良しで服やメイクの趣味も合うようで、本当によく似ている。 生まれた時は名前も「青葉」と「双葉」で似ていたのだそうだが、10歳の時に元「双葉」=春花さんが改名したのだという。 名付け親は母方の大伯父にあたる敏文さんという人で、本業は健康食品の会社の社長だったらしいが姓名判断に凝っていた。自身も二回も改名しているほどだという。 「どちらも、漢字にしてもひらがなにしても最高の画数になる名前にした」 敏文さんは青葉さんたちが小さい頃

          【実話怪談】最高の名前

          【実話怪談】500円ババア

          渡井さんが小学生の頃、町に「500円ババア」と呼ばれているおばあさんが居た。 通学路上にある古い大きな家にひとりで暮らしていたそうで、学校の下校時刻になると玄関先に籐椅子を出して、ボロボロの巾着袋を握って座っていた。 そして、通りかかった子供たちに声をかけて、歯が一本も見えない口でニコニコ笑いながら、巾着から出した500円玉をくれるという、その名の通り景気の良いおばあさんだった。 小学生にとって500円は大金だ。みんな、毎日誘い合って500円ババアの家に行って、近所のスーパー

          【実話怪談】500円ババア

          【実話怪談】人相写真

          愛美さんが小学3年生の頃というので、15年前のことになる。 少女時代は活発で、学校が終わると、家の近い同級生たちと連れ立って近所の大きな公園でドロケイなどして遊んでいたという。 その日は、4歳になる愛美さんの妹も一緒だった。公園を駆け回っていると、知らないおじさんに声をかけられた。 「写真を撮らせてもらえないかな?」 年恰好は四十そこそこくらい、スーツにネクタイを締めた長身の男性で、大きな一眼レフカメラを抱えるように持っていた。 おじさんは愛美さんたちを集めると、提げて

          【実話怪談】人相写真

          【実話怪談】凶相の家

          不動産管理会社の営業をしている烏森さんは占いに凝っていて、クライアントとの話のタネに時折、披露することがあってなかなか好評だという。 得意なのは手相占いなのだが、懇意の家主さんから「家の運気なんかは見られないの?」と訊かれたことをきっかけにいわゆる家相学も勉強するようになったらしい。 「これが面白くてさ。占いってある程度は統計だから、意外に理屈が通ってるもんなんだよ」 例えば「鬼門」の考え方。北東に水回りを置かない方が良いというのだが烏森さんに言わせれば、 「家の北側は夏には

          【実話怪談】凶相の家

          【実話怪談】皆殺し年賀状

          「結婚しました。」思わぬ年賀状が、佳苗さんの元に届いた。 差出人の杏子さんは地元の同級生だ。小学生の頃には親しかったが、中学に上がってからは何となく遊ぶグループが分かれてしまって卒業以来、疎遠になっていた「元友達」。東京の、今の佳苗さんの住所を誰から聞いたのか知らないが、わざわざ結婚を知らせてくれたのは意外だった。丸っこい手書きの文字で、大学時代から付き合っていた「正文さん」という相手と結婚した旨と、披露宴は親族だけで行なったので招待できず申し訳なかったという侘びがつらつらと

          【実話怪談】皆殺し年賀状

          【実話怪談】「コンサト の おあんない」

          若尾さんが住むアパートの近所には町内会の掲示板があり、お祭りや近所の小学校の運動会といった催しの案内が貼られていた。 ある火曜日の帰り道。ふと掲示板に目を止めると、変な貼り紙があった。 『コンサト の おあんない』 A4のコピー用紙に、ふにゃふにゃした文字で手書きしてあった。『祝ふくの歌! 間ちがいのないえんそう! おたのしみにして下ださいね!』と続き、開催日時が書きこまれた下に『式じょう』と矢印が引っ張られた地図のコピーが貼られている。「コンサト」は土曜の正午から始まる

          【実話怪談】「コンサト の おあんない」

          【実話怪談】誤配の部屋

          千葉県のI市に住むSくんのマンションには時折、同じ人宛の郵便物が誤配達されてくるという。 同じ建物内の別の部屋宛だったり、似た名前のマンションの同じ部屋番号の人宛のものが誤配されるのなら理解できるのだが、町名も丁目番地も建物名もまったく違うらしい。 部屋番号も、宛先は一〇四号室だが、Sくんが住んでいるのは三〇五号室だ。 宛名もSくんの本名とはかすりもしない女性の名前で、どういう理屈で彼の郵便受けに届けられるのかまったく分からない。 通販カタログや資格講座のパンフレット、大学の

          【実話怪談】誤配の部屋

          【実話怪談】ばんどんさんの廊下

          佑奈さんには、もう十五年近くにわたって見続けている夢があるという。 知らない女の子と一緒に、薄暗く長い廊下をひたすらに歩いていく夢。 女の子の背丈は小学校の高学年くらい、青い吊りスカートにおかっぱ頭という、佑奈さんの表現を借りれば「『ちびまる子ちゃん』のキャラみたいな」時代がかった格好をしているらしい。 佑奈さんを先導するように前を歩きながら、女の子は時折、振り返ってこう言うのだそうだ。 『早くばんどんさんが見つかると良いねえ』 『ばんどんさんはどこに隠れてるのかなあ』

          【実話怪談】ばんどんさんの廊下

          【実話怪談】名前をつけたくなる家

          北関東某県の、かつてはドライブコースとしてそこそこ人気があったという峠道沿いにその廃墟は建っているそうだ。 六棟で営業していたコテージ型のラブホテル跡で、どういう訳か一棟だけ取り壊されずに残っているのだという。ベッドが置かれた八畳ほどのワンルームに風呂とトイレがついているだけの、コテージというより小屋と呼んだ方が良いような小さな建物だ。 その廃墟の壁に、「妙にリアリティのある女性の絵」があるという。 壁に太いマジックのようなもので描かれた顔だけの落書きなのだが、これが理想

          【実話怪談】名前をつけたくなる家

          【ご報告・ゆる募】おすすめの怪談本教えて!&怪談マンスリーコンテスト様で賞をいただきました!

          ヘッダーはフォトギャラリーで「お祝い」で検索して一番に出てきた画像。お寿司はいいね。心を潤してくれる。 この8月、急に怖い話熱が盛り上がり、友達と怪談持ち寄りパーティを開催したのを機に立ち上げたこのnoteも、ありがたいことにもうすぐ2000PVを越えまして、優しい方からコメントを頂戴したりフォロー頂いたりしております。怪談を提供してくれた人以外には、別名義のお仕事でお世話になってる方とかリアル友達にも別に教えてないので、誰にとってもまったく謎のアカウントにも関わらず可愛が

          【ご報告・ゆる募】おすすめの怪談本教えて!&怪談マンスリーコンテスト様で賞をいただきました!

          【実話怪談】想い出のボールペン

          河村さんには中学生の頃、大切にしているボールペンがあったという。 それは従姉の美咲さんから入学記念に贈られたものだった。中坊には不似合いな数万円もするブランド品で、母親が恐縮していたことを覚えている。 「もう大人なんだから、こういうものも持ってないとね」と言って頭を撫でられ、照れくさいような誇らしいような気分になったものだ。 美咲さんは隣町に住んでいて、よく河村さんの家に遊びに来ていた。宿題を教えてくれたり映画に連れて行ってもらったり……大好きなお姉さんだった。 彼女も同じ

          【実話怪談】想い出のボールペン