見出し画像

『怪の産声』刊行記念!宿ヒルの好きなやつ発表~!

『呪録 怪の産声』が刊行されました!

こちら、2022~23年の竹書房さんの「怪談マンスリーコンテスト」で、最恐賞もしくは複数回佳作に選ばれたメンバーが招集され、受賞作+15ページ分の書下ろし作品を収録したアンソロジーです。
現時点の最新の受賞者陣ということで、帯には「怪談新世代」なんて惹句が書かれたりしています。

威勢の良い帯

執筆陣のひとりで先日、刊行記念イベントでもご一緒した雨森れに先生が、執筆者ごとのオススメ作品を紹介していてその中で宿ヒルも褒めてもらって嬉しかったので、販促になるなら宿ヒルもやろうかな!と思い立ちました!
収録順で、まずは5名を紹介!
好きな怪談発表宿ヒルが好きな怪談を発表します!

①夕暮怪雨さん
収録された4短編に共通するのは、「法則性は分かる気がするが、真意は掴み切れない“理外の存在”に触れてしまった人」のお話であること。制御できず、対処する以上はできない相手に直面する気味悪さと居心地悪さがイヤ~な後味を残します。

オススメ回「まぁだだよ」
開かずの間譚。これが起きてるのが自分の実家の団欒の場なのがイヤすぎる。血族の呪いか、「予測可能回避不可能」な怪異が重くのしかかる。
親子二代の「業」なのか……という忌まわしい「産声」も凄い。

②井上回転さん
「触れてしまったら終わり」な怪談が得意な方と思いました。怪異が磁場を持っているかのように、禍々しいものに吸い付けられる、あるいは人の心持を変えてしまうような。全作に共通する、残酷で鋭い終わり方の切れ味も良い……。

オススメ回「代替」
奥行きがある良い話。「これって、ずーっと続いてたヤバいことが、たまたまおばあちゃんがこうなったから明るみに出たってだけの話よね?」と想像を駆り立てられる。結末も……そういうことよね?語り口の形式とゾッとする結末(なんて端的で嫌なラスト3行!)がぴったり合っている「廊下の先」も好き。

③雨森れにさん
しっとりした、海の匂いと抒情を感じる話が得意な方。歴代のマンスリー受賞作「御頭憑き」「魅了」もそんな話でした。今回で言えば「貝手形」が、そんな磯と魚の匂いが濃密に漂う、底知れない意志に立ちすくむしかないえげつない一作でした。その意味でちょっとイレギュラーなのですが、

オススメ回「ビー玉」
結末に至って、「あ、もうそこから怪異に吞み込まれてたんだ」と分かってゾッとするタイプの話で、これが最初でも最後でもないんだろうな……という後味の悪さも感じるのが非常に厭ですね。

④緒音百さん
どの話も、〆で体験者がちょっと暢気みたいな態度なのがヤなんですよ。「あ、この人取り込まれてまだ帰ってきてなさそうだな」というのが分かって。どこから始まっていた怪異なのかというのが終わりまで分からないものが多くて、軽やかなのに不気味です。

オススメ回「Pのクラス」
刊行記念イベントで、出演陣から一番人気だったんじゃないかという一作。集団ヒステリーのグルーヴ感とちょっと青春の匂い、急に出てくるイヤな人と最後に明かされるイヤな情報。「え、じゃあ全員揃ってたらどうなってたの?」という不吉な予感が残る後味。良き良き。

⑤緒方さそりさん
なんとも人を食ったような「理じゃない理」の話……主観に阻害されるといいますか、筋が通っていると登場人物が納得してしまっている「ズレ」が独特の奇妙な余韻を残す話が多く、味わい深いです。

オススメ回「古井戸フレンド」
不気味さの中に切なさも感じる良い話なのですが、これ一番気持ち悪いのって智子ちゃんのお母さんだと思うんですよ。なんでこの人、こんなに冷静なの……?そもそもこれ、自殺じゃなかったんじゃないの……?疑えばキリがない、底の見えない古井戸のような話。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?