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根気より呑気でたのしむ外国語

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英語をはじめ、外国語のもつ “おかしさ”、“たのしさ”、“おもしろさ” について、のんびり気楽に書き留めていく。雑考。
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#おうち時間を工夫で楽しく

#98. どう考えても矛盾している英単語

#98. どう考えても矛盾している英単語

2020 年を振り返る人、2021 年の抱負を熱く語る人。後ろを見たり、前を向いたり、一月は忙しい時期だ。

ところで一月の January は、ローマ神話で物事の始まりを司る神「ヤヌス」(Janus) にちなんでその名がついた。

ヤヌスは前と後ろに顔が二つあり、一方で過去、他方で未来を見つめているとも言われている。



二つの面を持つことで知られるヤヌスだが、その名が由来となっている言葉は

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#80. モノだっていつか歩き出す

#80. モノだっていつか歩き出す

意思を持たないモノがひとりでに動き出すような奇跡は、現実世界じゃまだ起きないが、言葉の上ではこういうミラクルがしょっちゅう起こる。

英語の世界では、モノが勝手に動き出すのだ。



すこし大げさな言葉を使ったが、英語では、無機質なモノを表していたはずの名詞が、形も変えず、勝手に「動詞化」することがある。

たとえば、ヒトの「目」を表す eye は、そのままの形で「~を見る,凝視する」という意味

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#76. 感動のある毎日に、退屈はない

#76. 感動のある毎日に、退屈はない

目の前で見たことや聞いたことに対し、「感動」をしなくなってきたら、それは人間的に腐ってきた証拠かもしれない。

幼いころは、身の回りで起きることすべて、新しく、感動的だったはずである。

いまでも時々 SNS のタイムラインに流れてくる、「生まれて初めて雨を見た女の子の動画」を観ていると、いろいろと思うことがある。

満面の笑みで手を前に伸ばし、体全体で雨を感じようとする様子がこの上なく可愛い。

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#73. 舐めてかかろう

#73. 舐めてかかろう

仕事していたら、近くに座るアメリカ人の同僚ふたりがいきなりアメを舐めはじめた。

(シャーベットペロ:税込み 32 円)

となりの席と後ろの席から、ゲラゲラした笑い声とともにやたら甘い香りが漂ってくると思ったら、こんな駄菓子をペロペロしながらふたりが雑談に興じている。

このふたり、絶対大学時代も周りを気にせず図書館でベラベラしゃべっていたようなタイプだな。(偏見)

特別な場合をのぞいて基本は

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#72. 光と闇の融けあう時間

#72. 光と闇の融けあう時間

すっかり日が伸び、夕暮れどきが後ろにずれ込んできている。

「夕暮れ」を意味する英語 twilight の成り立ちは twi- + light で、文字通りには "two lights"(二つの光)という意味である。

日が落ちる前の灼熱の赤と、刻々と近づく闇夜の黒が、融けあう時間ということだろう。

同じ時間帯を表す中国語の「黄昏」も、これと似た発想からできた言葉だ。

「黄」という漢字が「明る

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#71. 英語教育について話す人、についての話

#71. 英語教育について話す人、についての話

実はここ数年の悩みなのだが、自己紹介で「英語が専門です」と話すと、相手と別れるまでの間に必ずと言っていいほど、「日本人が英語を話せないのは ...... 」とか「日本の英語教育は ...... 」という話をふっかけられてしまう。

「あ~英語がご専門なんですか。いまは日本の英語教育も変わってきてるみたいですよね。昔は『訳して読む』形式の授業だったのが ...... 」

あ、いやちょっと待ってくだ

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#70. 「オムレツ」はむかし「オレムツ」だった

#70. 「オムレツ」はむかし「オレムツ」だった

毎日言葉に関わっていると「コミュニケーション」という日本語をよく耳にするのだが、これをよくよく聴いてみると、「コミニュケーション」と言っている人が多いのに気づく。

元となった英単語である communication のつづりを見れば、「コミュニ」の方が正しいのだが、どうも「コミニュ」派の方が優勢であるようにすら感じる。

これと同じことは「シミュレーション」にも言える。simulation のカ

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#69. イックネームはありますか?

#69. イックネームはありますか?

名前は忘れてしまったのだが、むかし「笑っていいとも!」にケータイの誤変換を紹介するコーナーがあり、

「いま髪とかしてるから待ってて!」と打とうとしたのに「いま神と化してるから待ってて!」と変換されたという話に、兄と一緒に爆笑したのを覚えている。

本来なら「かみ/とかしてる」という風に分解されるべきところを、ケータイの変換機能が「かみ/と/かしている」と誤って分析した結果起きた事件だろう。

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#68. 礼儀正しいパイナップル

#68. 礼儀正しいパイナップル

以前 Twitter でこのような文が話題になった。ご存じの方も多いだろう。

見たことのない人も、いま読んでみて、驚いたのではないだろうか。

たしかにこの文章が言うとおり、人間は単語の最初の文字と最後の文字さえあっていれば、中の順番がめちゃくちゃであっても、問題なくそこにあるべき適切な単語を認識することができるらしい。

なお上の画像には「ケブンッリジだがいく」(ケンブリッジ大学) とあるので

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#67. 言いあやまりんよ、永遠に

#67. 言いあやまりんよ、永遠に

好むと好まざるにかかわらず、生きているかぎりぼくらは必ず、なんらかの言葉を言い誤る。

母語であろうが外国語だろうが、言い間違いをせず一生を終える人などそういない。人間は永遠に言い誤るのだ。

むかし、日本語を勉強しているスペイン人の子と知り合って、しばらくしてから忘年会のお酒の席で再会した。

「最近日本語の勉強どう?」と聞いたら「かなりいい感じだよ」と清々しい顔。まえはよく「漢字が苦手」と嘆い

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#64. 賢いのって、かわいいんだよ

#64. 賢いのって、かわいいんだよ

高校生くらいで覚える単語に、「鋭い」という意味の acute があるが、これとよく似た、日本人ならだれでも知っている英単語 cute は、実はこの acute から派生したものだ。

もともと acute は 14 世紀後半ごろから英語として使われていたものだが、17 世紀に入って英語が北米に渡ると、アメリカで次第に頭の a- が発音されなくなり、ついには消えてしまった。

こうして 18 世紀に

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#63. あなたの名前に女性の響きが?

#63. あなたの名前に女性の響きが?

名前が母音の -a で終わる人は、ヨーロッパでよく女性と間違われるらしい。

大学時代に受けていた講義で、「アキラ」という名前の初老の(すみません)先生が苦労話を話してくれた。

欧米の人たちと電話でやりとりなどしていると、名前を Akira と名乗ったとたん「女性ですか?」と聞かれるそうだ。

「いやあなた、わたしの声を聞いておわかりのとおり、明らかにわたしは男ですよ」といつも先生は返すらしいが

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#62. たけのこ問題、バラ問題

#62. たけのこ問題、バラ問題

道ばたのバラに目を奪われた。

ぼくの目線よりすこし高い場所に、君臨するように咲き誇る花。人間が活動をしなくなってから明らかにその純度を増した空の青さと相まって、そこに奇跡のコントラストを生み出していた。

成人してから「自分も大人になったのかもな」と感じる機会は、いつもふとした瞬間だった。

甲子園球児がみんな年下になったとき、緑茶が美味しく感じられたとき、初恋の人から結婚の報せを聞いたとき .

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#61. レモンしかなきゃそれでもいい

#61. レモンしかなきゃそれでもいい

英単語 lemonade は、日本語において 2 つの読み方を持っている。

前回の記事で、「アイロン|アイアン」、「セカンド|セコンド」、「ステッキ|スティック」などの、「英語では同じ単語なのに、カタカナ表記が違う日本語」をいくつか紹介した。

どのような経緯でそうなったかは知らないが、英語の iron, second, label, machine, stick, strike はいずれも、日

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